Yumiko's

アイルランド在住・松井ゆみ子のblog「サバイバルクッキング」(2020年4月〜2022年3月)とフリーペーパー「アイルランドの風」(2022年3月〜)

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2022 / 11月

今注目を集めているミュージシャン特集

個人的なおすすめも含めて、気に入っていただけたら嬉しいなと思うミュージシャンをご紹介したいと思います。たぶんまだ日本ではあまり知られていない人たちばかり。
まずはヒマールご店主、辻川夫妻も大絶賛のこのグループから。
新譜がリリースされたばかり、ツアーも控えてブレイク直前、衝撃映像です!

北アイルランドとの境にあるダンドーク(Dundalk)出身のチャールズ(このヴィデオではメインヴォーカル)とアンドリューのヘンディ兄弟、ショーン・マッケーナのヴォーカリスト3人が中心。地元のサポートが熱く、すでに国営放送でも何度か取り上げられ、新作の発表とともにラジオでもこの曲ががんがん流れ始めたところ。わたしはつい最近、新作以前の作品を見つけてファンになったばかりなのですが、すっかり虜!
「Cod liver oil ( 肝油)とオレンジジュース」はスコットランドの歌です。

次は、最近ようやく名前と顔と声が一致したばかりの女性アーティスト。
音楽一家のなかで育ち、フィドルは3歳で始めたという多才な人でサクスフォンまでこなし、毎回印象が異なるので混乱していましたが全貌が見えたところです。スライゴーのテーマ・ソングともいえるこのチューンを。

共演しているBridin はヴィデオの舞台になっているスライゴー南部エニスクローン(Enniscrone)出身のハープ奏者。実家が葬儀屋さんで彼女もフルタイムで働いているそう。父親は有名かつユニークな人物です。

クレア・サンズ(Clare Sands)の多才さを知っていただきたいので、もう1曲。

ポエトリーリーディングは歌の原点、ミュージシャンとの共演もしばしば行われます。コナル・クリーダンはコーク出身の作家で、わたしが愛聴しているラジオ番組のプレゼンター、ジョン・クリーダンの兄弟。

さて次。2021年に新譜がリリースされ、まだロックダウンモードが続くなかでしばしばラジオから流れてきたこの歌を。

閉ざされた家のなかで聴くにはぴったりでしょう?
エイドリアン・クラウリーはマルタ島で生まれ、ゴールウエイとダブリンで育ったユニークなシンガー。90年代後半、ダブリンにあったシンガーズ・クラブといった感じのカフェで歌うエイドリアンを観ています。暗いな〜〜と思いましたけど、20年以上続ければ“スタイル”になるのですよね。今聴くとかっこいい。変わらないところも、かっこいい。
そのカフェには、まだ無名だったデミアン・デンプシーやパディ・ケイシー、マンディたちが歌いに来ていました。なつかしいなーー

John Francis Flynn の名前はよく耳にしていましたが Ye Vagabondsと親交があるのはラジオのインタビューで知りました。
「ロックダウン中のほうが会う機会が多かったかも。解けたらお互いツアーに出ちゃってちっとも会えない」と冗談まじりにコメント。
ではジョン・フランシス・フリンのオリジナル曲を。

彼の歌う伝統歌「Lovely Joan」もすごくいいのでチェックしてみてくださいね。
ヴィデオにもちょこっと登場しているフィドラーのウルタン・オブライエン(Ultan O’Brien)はジョン・フランシスのサポートの他に、やはり今注目されているシンガー&ミュージシャン(コンサーティーナ、ホイッスルetc)のオーエン・オキャナボーン(Eoghan O’Ceannabhain)とユニットを組んでいます。

オーエンの新曲ヴィデオはおなじみマイルスの作品。ウルタンは登場しませんが、キッチンでの演奏風景はとてもアイルランド的。

オーエンは、ジョン・フランシス、ウルタンとともにSkipper Alleyという7人編成のトラッドグループで活動していました。7年ほど前のこと。
個々にデビューするよりもグループで活動を始めたのはとても賢いと思います。Planxtyは大きなお手本になっていたよう。
フェスティバルなどにも招かれ、テレビ出演もし、充分に注目を集めたのち、今それがそれぞれの活動のフックになっています。

最後は幅広い活動で独自の立ち位置を見つけたコンサーティーナ奏者コーマック・ベグリー(Cormac Begley)と、おなじみになってきたYe Vagabondsのセッションを。コーマックはディングル出身、父親も叔父も有名なアコーディオン奏者です。今、父親ブレンダン・ベグリーとキャラヴァン(キャンピングカー)でふたり旅をしながら行く先々の土地で地元のミュージシャンとセッションするテレビドキュメンタリー番組が好調。うちもかかさず観ています。
コーマックは珍しいコンサーティーナをたくさん所持していて、低〜い音の出るベース・タイプは彼の専売特許のようになっています。彼の演奏を初めて観たのは代々木でした(笑)。
そのすぐあとにアイルランドでライブを観ることができ、ステージ上に並べた様々なコンサーティーナに驚きました。手のひらにのりそうなピッコロタイプも。

このヴィデオではベースタイプを使用。演奏には力が要るそう。共演者たちはそれを知っていて、いつもだんだん演奏を加速していくのが面白くて。

お楽しみいただけたかしら。
まだまだご紹介したいミュージシャン&映像がたくさんあるので、いずれまた書かせていただきたいと思っています。
フリーペーパー冬号も準備を進めていますので、お待ちくださいねーー!



今も音楽シーンを牽引するアンディ・アーヴァイン

ほぼ毎日ラジオを聞いていますが、アンディ・アーヴァインのスゥィートな歌声が流れない日は少ないです。リスナーだけでなく、プレゼンターもアンディのファンなのですよね。

まずは彼の詩集のタイトルで、彼自身のテーマソングともいえるこのチューンから。ドーナル・ラニーとアルタンのマレードが共演する豪華なヴァージョンでお届けします。

次はアンディが自書で「持ち歌のなかで、もっとも人気が高い」と明言している歌を。初めてレコードに収録したのは1972年、当時参加していたプランクシティ(Planxty)のアルバム。彼らとの貴重映像でお楽しみください。

Blacksmithは確かに「鍛冶屋」のことですが、日本ではたぶんあまり身近な存在ではなくなっていますよね?
アイルランドのブラックスミスは健在です。馬文化の国ですから馬の蹄鉄を作るブラックスミスの存在は欠かせませんし。
定住せずにキャラヴァンで旅しながら生活するトラベラーズとよばれる人たちがいて、彼らの多くがブラックスミスの仕事をすると聞きます。かつては馬車での移動でしたから、蹄鉄作りが必須だったのも理由のひとつ。そして彼らは伝統楽器のティンホイッスル、イーリアンパイプスの作り手でもありました。

次は、1950年代にアメリカで活躍したアイルランド人グループ The Clancy Brothers(以下クランシーズ)。今彼らの映像を見ると、あまりにステレオタイプなルックスで笑っちゃいますが(失礼)かのボブ・ディランもファンだったそう。ヴォーカリストのひとり、リーアム・クランシーのことを「最高のバラッドシンガー」とコメントしています。

クランシー兄弟はティパレリ出身でアメリカへ移住。ヴォーカリストのひとりトミー・メイカム(Tommy Makem)は北アイルランドのアーマ(Armagh)出身。

クランシーズがユニフォームにしているアランセーターが、彼らの成功のおかげでたくさん売れるようになったのですって。それまでは家族のために編むもので商品価値がでるとは考えていなかったよう。アイルランド人らしい。
クランシーズは1940年代に始まったアメリカのフォーク・リバイバルの流れのなかで登場しました。この流れは日本にも到達し、ピーター・ポール&マリーやジョーン・バエズ、ボブ・ディランなどの音楽とともに反戦をとなえるプロテストソングの在り方も伝わってきました。サイモン&ガーファンクルも然り。デビューまもないポール・サイモンはイギリスに渡り、現地の伝統歌を継承し「スカボロー・フェア」という新たな伝統歌を作り出しています。

アイルランドもアメリカ、イギリスのフォーク・リバイバルの影響を受けてはいますが、なにせテレビもラジオも普及していない時代。家でレコードを聴ける人も限られていたはずです。逆にそれが幸いし、この国ならではの音楽シーンが築かれたのかもしれません。
1960年代にショーン・オリアダが キョートリ・クーラン(Ceoltoiri Chualann)を結成し、庶民の家庭で受け継がれてきた音楽がステージでスポットライトを浴びる音楽へと変化。メンバーだったイーリアンパイプス奏者のパディ・モロニーが脱退して新たに結成したのが日本でもおなじみのチーフタンズ。伝統音楽にかつてなかった流れが生まれるなか、プランクシティはさらに衝撃的な存在として注目を浴びました。
ご紹介したプランクシティの映像は古いですけれど、演奏の斬新さと力強さは今でも「おお!」と感嘆。キョートリ・クーランはアカデミックな世界へ、チーフタンズは海外へ、プランクシティは国内で増えてきていた伝統音楽に疎い輩を刺激するために、それぞれ別の立ち位置でアイルランド音楽を高め広める役割を果たしました。

1970年代。プランクシティを離れてドーナル・ラニーは新たなグループ、ボシー・バンド(Bothy Band)を結成します。女性メンバーが参加しているのは大きな変化。60年代のグループには滅多に女性メンバーがいません。日本と同じで女性は家庭を守るものとされていて、ツアーに出るのが前提のバンドに参加するのには大きな抵抗があったのですね。70年代、女性が参加するグループが急に目立ち始めたのは“自由”の表れといっていいと思います。

アイルランドでしばしば「音楽を形にすると、この人になる」と思うことがあります。ここで記したのもそんな人たちです。
おまけに最近こんなヴィデオを見つけて思い切りやられました。圧巻。
彼は“こども”ではなく、小さなジェントルマンです。

次回は今もっとも注目のミュージシャン特集。

ひき続きお楽しみくださいませ!!



音楽生情報を現地アイルランドより

ラジオ番組が超充実している国なので、新旧とりまぜてすてきなチューンを毎日楽しんでいます。

ヒマールで詩集を出版した大御所アンディ・アーヴァインのスゥィートな歌声も頻繁に聞くことができますし、彼に影響を受けたという若手たちも続々登場。ロックダウン中に熟成したミュージシャンが、今解き放たれて見事に羽ばたいている印象です。
そんな音楽シーンをここでお伝えできたらいいなと思いつき、サバイバルキッチンからお届けすることにしました。ラジオ、台所に置いてあるので!

まずはヒマールご店主夫妻のお気に入りYe Vagabonds 。
アイルランドの離れ小島6島をめぐりながらライブ&映像収録したドキュメンタリーの一部です。場所はアラン諸島のひとつInis Meain(イニシュ・マーン)。

兄弟デュオYe Vagabonds (イー・ヴァガボンズ)は中部域Calow(カーロウ)出身。伝統音楽不毛な地と思っていたのは彼らの他にカーロウ出身ミュージシャンをまったく知らないからです。最近聞いた彼らのインタビューによれば、お母さんがドニゴールにある離れ小島Arranmore(アランモア)で育ったのだそう。ルーツは北にありました。
新曲はオリジナル曲で、今ラジオでたくさんオンエアされているところ。ぜひ日本でもお聴きいただきたいのでご紹介いたします。あえて人気テレビ番組でのスタジオライブを。

ロックダウン中に書かれた新曲は、最近亡くなったアランモアの古い友人に捧げたものだと聞きました。
番組司会者Tommy Tiernan(トミー・ティーナン)はコメディアン。音楽にも造詣が深く、フィドルの巨匠マーティン・ヘイズも何度かゲスト出演しています。
Vagabonds は、古いチューンを歌い継ぐと同時にオリジナル曲も生み出し、新たな伝統をつくっていくタイプ。アイルランドの伝統音楽は、スタイルを変えずに守り続けるのではなく、変化しながら踏襲されていく、懐の深いものなのです。

さて次は、名実ともにトップクラスのトラッド&フォークグループLankum(ランカム)。わたしも大ファン。まずはこの映像から。

バンドメンバーは4人、フルメンバーのVideoを。

ファーストアルバムからのシングル曲で、ラジオでしばしば耳にしていました。イアンとダラは兄弟で当初バンドは彼らの苗字LynchをもじってLynchedを名乗っていたのですが、デビューするにあたって“リンチ”は誤解を招くかもとLankumに改名しています。
フィドルのコーマックはスライゴーフィドル奏者の代表格Oisin Mac Diarmada(オシーン・マクディアマダ)の弟!と気づいたのはこのコラムを書いている途中のこと。他のメンバーはみなダブリン出身なので、スライゴーつながりがなんだか嬉しい。

いつもランダムにyoutubeを楽しんでいたのですが、ふと共通項に気づきました。上記したミュージシャンたちはみな同じレコード会社と契約を交わしています。偶然というか、必然。イギリスのRough Tread、インディペンデントレーベル最高峰といっていいのかな。ここがアイルランドのフォーク・シーンに貢献しているなんてちっとも知らなかった。
そしてもうひとつ。ご紹介した youtube 1つめと3つめの映像は同じ作家が撮影しています。ここしばらく、かなりたくさんの映像を観てきたのですが、ふと気づいたらすべてMyles O’Reillyの作品!彼自身もミュージシャンなので、ここでご紹介します。いい曲です。

マイルス・オライリーは、プロデューサーのドーナル・ディニーンと組んで “This ain’t no disco” というヴィデオ作品をシリーズで制作しています。わたしは見事、彼らの作品群に絡め取られていたわけで。

90年代後半にToday FMが開局し、ドーナル・ディニーンの番組は超クールで大ファンでした。デヴィッド・グレイやデヴィッド・キット、ディヴァイン・コメディら当時はまだ無名に近いミュージシャンを次々に紹介し、カルトなムーヴメントを確立したのちにテレビの新番組No Discoのパーソナリティに抜擢。これがまたテレビでは珍しい斬新な音楽番組で注目を集める最中、番組パーソナリティのひとりが事故死する悲劇が起き、立て直しを図るものの数年後に打ち切りに。やるせないエンドマークでしたが、今またドーナル・ディニーンのクリエイティヴィティに再会できたのは嬉しい驚きです。This ain’t no discoという名前には、打ち切られたNo Discoに対する思いがこめられていたのでした。

This ain’t no discoのシリーズで、Lankumのラディ・ピートとリサ・オニールのコラボレーション映像を。レコードレーベル仲間でもあり、ラディがリスペクトしているユニークなシンガー、リサが古い歌に新たな息吹を与える瞬間。

次回は、若手ミュージシャンたちに大きな影響を与え続けているアンディ・アーヴァインの歌声を!




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