Yumikoのサバイバル・クッキングレシピ

アイルランド在住の料理家・松井ゆみ子さんから届く、いま作りたい&作ってもらいたいレシピと日々のエッセイ。

この画面は、簡易表示です

2020 / 12月

クリスマス雑感

 去年のクリスマス、まだ引っ越し途中だったマークとわたしは、スライゴーからニューブリッジの家に車で向かっていました。見事にがら〜んとしたモーターウエイはSF映画のよう。前日、クリスマスイブはマークの従姉妹がディナーに招待してくれて、伝統的なターキーとハム、オーブン焼きの野菜、じゃがいもetc、家族親族友人たちと、わいわい楽しい時間をすごし、わたしは数年ぶりにクリスマスディナーを作らないですんじゃった年でした。
 さて今年。あんな風に誰かと集うことはできないので、夫婦水入らず。いつもと同じです(笑)。
 引っ越し先の家の庭には、いろんな種類のヒイラギがあるので、少しいただいてリースに。ツリーも庭中にあるので、あえて家の中にすえる意味なし。
 今まで当たり前にしてきたことに「意味ある?」と自問する、いい機会を得たのが今年だったと感じています。ウィルスの影響だけでなく、今の家に引っ越してきたことが大きなきっかけでした。
「今年を振り返って」的なコメントをあちこちで耳にしますが、ちょっと意外に思うくらい「最悪な年だった」と言う声を聞きません。アイルランド人らしいポジティヴさか?とも思ったりしますが、それだけではないみたい。著名ミュージシャンが「ツアーがなかったので、曲づくりもできたし、家族とすごせた」って言っていたのが象徴的でした。

 身近でも、長年やりたかった趣味がやっと実現できた、とか、特に創作活動に適する機会だったのではないかと思います。
 世の中が忙しく動いているとき、そこに巻き込まれないようにしながらものを作るのは、容易いことではありません。

 アイルランドではクリスマス前、そんな時期に生まれた新しい歌がたくさん発表されました。
 この国の底力を感じる瞬間です。

 わたしもヒマールから出版するエッセイ本を書き上げました。
 来年、みなさんに読んでいただけることを願っています。

超不器用だけど、それなりにたのしい!庭の木の枝にスターアニスとシナモンをあしらってミニリースに。
こちらは「夏の思い出」がテーマ。庭に咲いてたブルーベル、ヒオウギ、あじさいのドライフラワーをあしらいました。下のほわほわはボグコットン。



ミンスパイ始めました

 アイルランド人にとって、クリスマスは日本のお正月と同じで大きな年中行事です。パブが閉店するのは1年でこの日だけ(今年は超例外で閉めてることが多かったですけど)。以前はもう1日、イースター前の金曜日もパブは閉めなければならなかったのですが、こちらは去年からオープンが許されるようになったばかり。
 クリスマス前後のロックダウンは、国民の喜びと希望を失わせると配慮されたのか解除されました。でも、鎮静している状況ではないので、クリスマス後はまたロックダウンかも?と腹をくくりながらの奇妙な12月です。

 さて、通常ならば今頃は、クリスマスに向けて台所が忙しさを増すとき。
 うちはマークと2人暮らしなので、作り控えが必須。マークに「絶対食べたいのは何?」と確認するのですが、いつもトップリストはミンスパイ。オッケー、わたしも食べたいし。
 初めてミンスパイを食べたのは、マークの姉の家でクリスマスディナーをふるまってもらったとき。食後はお腹ぱんぱんだったのに、夜も更けてくる頃にはまた小腹がすいてきて……というときに登場したのがミンスパイ。オーブンから直行で、パイ型から直接サーブしてもらったような記憶が。かれこれ20数年前のことです。
 義兄は料理上手で、パイの中身ももちろんお手製。姉はパイ生地づくりが上手で、ふつうはショートクラスト・ペーストリーとよばれるビスケット生地を使うのですが、フランスにいたこともある姉のパイ生地はミルフィーユに近く、ほろほろさくさく、おまけにあつあつでおいしいのなんの。
 ミンスミートとよばれるパイの中身は、レーズンなどの干した果物、ナッツ、レモンやオレンジの皮としぼり汁、そしてたっぷりのお酒をしみこまた“餡”で、いつもわたしは“月餅”に似ているかなと思うのですよね〜。
 ミンスパイはイギリスの伝統菓子で、十字軍の遠征で中東の食べ物を元に作られたといわれています。もともとは羊肉が使われていたらしく、マークの友人も「うちのは牛ひき肉が入ってた」と言っていて、中東の羊肉を使ったパスティラのようなパイが、イギリスに渡ったのかな。
 わたしの中では月餅なんですよね〜(笑)。
 シルクロードの産物なのかもしれないと思うと、「食」ってロマンがいっぱい!

 ミンスパイの中身は日持ちするので、10月あたりに作るそう。わたしのレシピは拙著「家庭で作れるアイルランド料理」(河出書房新社)に紹介しているので、チェックしてみてください。アイリッシュの家族、友人知人にお褒めいただいております。ひとつ注釈!ミンスミート(パイの中身)12個分とありますが、作りやすい量ということで、拙著の分量だと36個作れます!

 今年は、差し上げたい人がたくさんいるので、早々に作り始めました。
 フードプロセッサーを使わないので、レーズンをちまちま刻むのが少々面倒ですけど、単純作業はきらいじゃないのでそれなりに充実。すでに6ダース焼いて、リムリックに住むマークの姉には郵送してみました。
 翌日届いて、すぐに写真とメールが送られてきて「郵便配達の人が、“まだこういうことする人がいるって、いいね〜”って感心してた」そう。さらに姉の記述に愕然。「こどもの頃、母の妹がケリーからニューブリッジにターキー郵送してきたのよ〜。包みにちょっと血が滲んでたりして」って、え?生の??他の郵便物に支障はなかったのだろうか??

 明日作る分は、隣県ドニゴールに住む兄に送る予定。
 ミンスパイはちっちゃいけど、食べ応え充分。ワインにもウィスキーにも合う大人のお菓子です。




top