Yumikoのサバイバル・クッキングレシピ

アイルランド在住の料理家・松井ゆみ子さんから届く、いま作りたい&作ってもらいたいレシピと日々のエッセイ。

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essay

グースベリー

 毎年、初夏の楽しみのひとつがグースベリー。日本ではなじみの薄い食材ですが、アイルランドでもごく短い間しか市場に出回らないので、ここ数年はずっと買いそびれていました。他国から輸入されるので、いちごやブルーベリーはもちろん、野生のブラックベリーでさえ通年手に入るようになり「旬を迎えたこの季節にしか食べられない」のは、ルバーブとグースベリーだけなのでは?と感じています。
 そんな希少なグースベリーが旬を迎えました。おまけに田舎暮らしのおかげで収穫のお手伝いをする機会にも恵まれたので、その顛末含め、どんな風に食べるのか?などをお伝えいたしますね。

 おなじみエイダンのオーガニックファームで知り合いになったご夫婦は、マナーハウスでゲストハウスを経営。ロックダウンでセミ・リタイア状態なのだそうで、広大な敷地内の果樹園にあるフルーツを「無駄にしたくないから」と、エイダンのファームに”寄付”しています。去年の秋は、わたしにも「お菓子にしてね」と段ボール箱いくつものりんごをくださって。今度はグースベリー。摘むのに手がかかるので、マークとわたしが二つ返事でお手伝いに駆けつけた次第。お屋敷を見てみたかったのも大きな理由でした。
 ワイルドなウッドランドの中に建つ美しいマナーハウスに感嘆。泊まってみたかったな〜。

 庭というより森、の奥にある果樹園に向かうと、たわわに実をつけたグースベリーの低木が数本。となりには同じ種属のレッドカラントが何本か並び、そろそろ色づき始めていたので「次はこれ」と狙いを定める自分は、まるで鳥みたいですね。
 ずっと以前、パリでランチしたときに、サラダの上にちらしてあったレッドカラントにいたく感動して以来、真似したいのですけれど、これもまたあまり流通しない食材のひとつなので、思わず「お!」と目が止まったのでした。
 グースベリーがあまり流通しないのは、摘むのが厄介なせいかも。枝にはたくさんの鋭いトゲがあり、気をつけないと腕が傷だらけになります。つい袖をまくって作業していたマークはやられてました。長袖着てきた意味ないじゃん。
 鳥たちのコーラスを聞きながら手元に集中して、ちまちま摘み続けること数時間、10kgほどを収穫しました。全部わたしがいただいたわけではなく、エイダンのファームショップで小売りするのが目的で。しかし。
 意外に売れなかったのです!
 ファームで酵母パンを売るアンとわたしが残ったグースベリーを引き取り、手分けしてジャムと焼き菓子にして販売する予定。みなさん、それをお待ちなのかも。
 グースベリーの使い方ですが、ポピュラーなのはジャム。同じ時期に花を咲かせるエルダーフラワー(ニワトコ)と一緒に煮るのだそう。これは最近知りました。酸味が強く、甘みも香りもほとんどない果実なので、エルダーフラワーのほのかな香りづけと、たっぷりめの砂糖が必須。
 りんごやルバーブと同じく、タルトの具材にすることも多いです。わたしは「フール」を作ってみたかったので、果実の形を残したコンポートに。
 摘みに行ったときにもらったアドヴァイスが「煮立たせないで、静かにゆっくり煮ること」。果実が重ならないような大きいお鍋にグースベリーをぎっしり並べ、半身浴ほどの水と大さじ数杯のウォッカとハチミツを注いで煮てみました。エルダーフラワーの花は茎を少し残した状態で2本ほど。これは煮た後に取り出します。
 10分ほど煮て味見したら、思わずうっとり。エルダーフラワーの静かな力が大きく、こんどはコーディアルを作ろうと固く決意しました。
 「フール」は、なんのことはない、ベリーなどに生クリームをからませただけのデザートです。おばかさんと同意語のFoolの由来も謎ですが、生クリームに空気をまぜこむ”ホイップ” からきてるのでは?が自論です。

グースベリー
エルダーフラワー
グースベリーのフール。果実をフィーチャーしたかったので、”のっけ”たスタイルですが、ふつうはもっとぐずぐずに混ぜあわすようです。シンプルですが、旬の味を楽しむには最適。生クリームに砂糖はまぜないのが基本。でもグースベリーも甘さ控えめなので、上から少し、Agave(テキーラの原料)シロップをかけました。上品な甘さで最近のお気に入り。


アイルランドで小商い

 こちらでも始めました、小商い。

 地元で開催される「カントリー・マーケット」のメンバーになり、焼き菓子や海苔巻きを販売しています。月2回、朝11時から午後1時までの開催で、先週末に3回目の参加を終えたところ。初めて海苔巻きを持って行ったのですが、あっという間に完売しました。小さな規模のマーケットなので、たいした数ではないですけれど「地元でおスシが食べられるなんて!」と喜んでくれる人が何人もいるので励みになります。このあたりで海苔巻きを食べるには、車を30分近く飛ばしてスライゴータウンまで出向かなければなりません。もちろん日本人のお店ではないですし。
 わたしはそこの海苔巻き、おいしいと思うけれど、具材満載のすごい太巻きで、それだけでお腹がいっぱいになり、あれこれつまむ楽しみがなくなっちゃうんですよね。基本わたしは細巻きが好き。なのでわたしの作る海苔巻きもスリムです。具材は野菜オンリーのベジ・スシ。初回は、にんじんとアスパラ、もうひとつはアヴォカドとトマトに生バジルをからめたものにしました。
 衛生局の指示がきびしくなっていて、お米は食中毒の可能性が高い「ハイリスク食材」になっていて、扱いがすごく面倒。幸いマーケット会場まで徒歩距離で、移動に時間がかからないこともあり、販売時もアイスボックスに入れておくことで、ようやく海苔巻き販売が可能になった次第。
 カントリー・マーケットは、まだ女性が社会に出られなかった時代、専業主婦たちに働く場を提供するためにスタートしたもので、今も多くのメンバーはアマチュアの料理人たちです。
 拙著「ケルトの国のごちそうめぐり」に、ニューブリッジの隣県ネースにあるカントリーマーケットのことを書きましたが、以来ずっと、いつか参加したいと思っていて、ようやく実現しました。
 ここクリフォニーは、人口1,000人に満たない小さなヴィレッジで、マーケットもわたしを入れて6人のメンバーでまかなっています。もしかしたらアイルランドでいちばん小さなカントリーマーケットかもしれません。でも中身は充実。けっこういろんなカウンティのカントリーマーケットに行きましたけれど、多くは学校のバザーのような感じで、売られている焼き菓子やパンも、いかにもお母さんの手作り。もちろんおいしいし、家庭料理のよさいっぱいで、それはまた魅力。
 しかし、わがクリフォニー・マーケットは、オーガニック野菜のファーマー2名(それぞれ得意分野が異なるので、野菜の種類豊富)、地元で人気のジャムメーカー、自然酵母パンをつくるベーカー、そして健康焼き菓子と和食を作るわたし、花の苗や雑貨を売る女性の6人で、なかなか魅力ある内容だと思います。
 参加する以前は、ずっと買い物客で通っていましたから、実証ずみ。
 オーガニックファームのショップでも毎週末に焼き菓子販売を続けています。ここには当然ながら、ヘルシー志向の人が集まるので、最近はブログでも取り上げましたけれど ”ギルティ・フリー” スウィーツを中心にしています。
 そうだ、ブログにコメントをくださった ”つながる” さんのリクエストで作り始めた ”シュガー・フリー”ケーキがきっかけなんです!
 それまでは、控えめにはしていましたけど、お砂糖(ブラウンシュガー)やバターを使った伝統菓子を作っていました。新たな道を開いてくださった ”つながる” さんに、とても感謝しています。
 このあたりは、山あり海ありでエクセサイズが充分にできるせいか、太った人をあまり見かけませんけれど、アイルランドでは肥満が深刻化しているので、焼き菓子は作る側も ”ギルティ” を感じてしまいます。
 なので、”ギルティフリー” は、食べる方だけでなく、作る方にも必要なこと。

 ファームショップは毎週土曜日オープン、マーケットは月2ですが日曜日。両方開催される週末は、自宅の台所がすごいことに……。
 海苔巻きは作り置きができませんから、徹夜作業になり「今回こっきりにしよう」と思ったのですが、完売したら即「次は何を巻こうかな」と思い始める、ちゃっかりなわたし。

 そして実はもうひとつ、ヴィレッジでたった一軒の ”よろず屋” さんでも「何か作って売らない?」と声をかけてもらっており。

 すっかり長くなってしまったので、よろず屋さんの話はまた今度。

カントリーマーケット、初納品。庭のワイルドフラワーとケーキもろもろ。マークと彼の友人のお弁当作りと重なって、初回はちょびっとしか作れなかったのですが、このあとばん回しております。
ファームショップで販売したプラムケーキ。初めて使ったプラム、皮つきで大丈夫かなと少し心配だったのですけど、きれいな色に焼きあがって嬉しかった〜。


パンケーキ・チューズデー

 イースターは、クリスマスと同じくらい大切な祝祭日です。
 キリスト教が伝わる以前の習慣を踏襲していて、満月が関わり、毎年イースターのスケジュールが異なります。そのためか、日本ではなかなかイースターをとらえにくいようですね。
 冬の間、屋内ですごすことが多かった家畜が、ふたたび放牧されるようになるのがイースターのあたり。子牛や子羊も、寒さがすぎたこの時期に合わせて生まれるよう調整されていて、初夏を迎える頃の牧場には、ミニチュアサイズの牛や羊がいっぱい。うさぎたちも穴から出てきて、野原を飛び回ります。
 自然界が再生し、活気が戻ったことを祝う、喜びの日がイースター。わたしはクリスマスよりも、そんなイースターが大好き。冬の長い北国では特に、春の訪れはもうそれだけでお祝いに値します。畑のある人たちは、なおさら。
 さて、キリスト教においては、イースターの前40日間、レントとよばれる”がまんの日々”があり、肉食を禁じています。現代においては、そこまで厳しいものでなくなりましたけれど、クリスマスのごちそうの後のデトックスにもなるので、ヘルシーで質素な食事を心がける人は多いのじゃないかしら? 魚はまだまだ旬ですし。
 レントは常に水曜日から始まるのですが、その前日、パンケーキ・チューズデーとよばれるアイルランドでは誰もが大好きなしきたりがあります。今年は2月17日からレントが始まるので、パンケーキ・チューズデーは2月16日。
 そもそもは、レントの前、家の中にあるタンパク源(卵と乳製品)をすべて使い切るのが目的だったそう。そのために作るのがパンケーキなんです。なかなか合理的。
 ケルティックタイガーとよばれた好景気以前、パンケーキはレントの前に食べるものときっちり位置づけされていたそうです。ゲストハウスの朝食や、カフェのメニューにパンケーキが登場するようになったのは、ぐっと最近のこと。
 今やすっかりポピュラーな食べ物になっていますが、それでもレントの前に食べるパンケーキはまだまだ特別なもの。

 アイルランドのトラディショナルなパンケーキは、クレープよりやや厚めですが、日本のホットケーキに比べるとぐっと薄めです。
 大雑把なレシピで恐縮ですが、薄力粉カップ1に対して、卵1個、牛乳1カップ強(280ml)。お砂糖もベーキングパウダーも入れません。お砂糖は、焼きあがったものにグラニュー糖をぱらぱらっとかけます。その前にレモンの絞り汁をかけて。

 わたしは昭和の、ホットケーキで育った世代なので、ついついパンケーキが分厚くなっちゃうんですよねー。

 アイルランド式パンケーキは、下の写真をご参照ください。
 ニューブリッジにあったお気に入りの大衆食堂のパンケーキです。王道。
 毎年食べに行ってました。マークは毎回「おかわり」して。
 あ、これは伝統。「パンケーキ、何枚食べた?」は、日本でいうと元旦にお餅を何個食べた?と同じで、お決まりの確認事項です。
 そしてわたしは思い切り邪道(シェフのドニー、そんなこと言ってごめんなさい!)な、ピリ辛ミートソースを巻き込んだトルティーヤ風が超お気に入りでした。
 去年は引っ越しのばたばたで、食べたのかどうかも忘れてしまいましたから、今年はリキ入れて作るぞー。

これが王道、アイルランド流パンケーキ。ニューブリッジの”キシュテン”ドニー作。アイスクリームのっけは、マークが大人になったから許される特別バージョンです。本来は、レモンの絞り汁とグラニュー糖!


クリスマス雑感

 去年のクリスマス、まだ引っ越し途中だったマークとわたしは、スライゴーからニューブリッジの家に車で向かっていました。見事にがら〜んとしたモーターウエイはSF映画のよう。前日、クリスマスイブはマークの従姉妹がディナーに招待してくれて、伝統的なターキーとハム、オーブン焼きの野菜、じゃがいもetc、家族親族友人たちと、わいわい楽しい時間をすごし、わたしは数年ぶりにクリスマスディナーを作らないですんじゃった年でした。
 さて今年。あんな風に誰かと集うことはできないので、夫婦水入らず。いつもと同じです(笑)。
 引っ越し先の家の庭には、いろんな種類のヒイラギがあるので、少しいただいてリースに。ツリーも庭中にあるので、あえて家の中にすえる意味なし。
 今まで当たり前にしてきたことに「意味ある?」と自問する、いい機会を得たのが今年だったと感じています。ウィルスの影響だけでなく、今の家に引っ越してきたことが大きなきっかけでした。
「今年を振り返って」的なコメントをあちこちで耳にしますが、ちょっと意外に思うくらい「最悪な年だった」と言う声を聞きません。アイルランド人らしいポジティヴさか?とも思ったりしますが、それだけではないみたい。著名ミュージシャンが「ツアーがなかったので、曲づくりもできたし、家族とすごせた」って言っていたのが象徴的でした。

 身近でも、長年やりたかった趣味がやっと実現できた、とか、特に創作活動に適する機会だったのではないかと思います。
 世の中が忙しく動いているとき、そこに巻き込まれないようにしながらものを作るのは、容易いことではありません。

 アイルランドではクリスマス前、そんな時期に生まれた新しい歌がたくさん発表されました。
 この国の底力を感じる瞬間です。

 わたしもヒマールから出版するエッセイ本を書き上げました。
 来年、みなさんに読んでいただけることを願っています。

超不器用だけど、それなりにたのしい!庭の木の枝にスターアニスとシナモンをあしらってミニリースに。
こちらは「夏の思い出」がテーマ。庭に咲いてたブルーベル、ヒオウギ、あじさいのドライフラワーをあしらいました。下のほわほわはボグコットン。



“mission impossible” の成功と、お知らせ。

 まずはお知らせから。
 ヒマールさんとのコラボで、レシピ入りのポストカードを作りました。
 ブログでご紹介したレシピですが、写真を少し変えたりしています。
 繰り返して作っていただけるようなレシピを冷蔵庫に貼ったりできますし、おともだちにお送りしたり、活用していただけたら嬉しいです。
 ヒマールさんの製作なので、おしゃれに仕上がっています!
 アイルランドでは、ロックダウン中にカードやお花を送る人が増えたと聞きました。日本でもそうなるといいなと願っています。

 さらに。
 ヒマールのサイトでお気づきになられたかと思いますが、エッセイ本を作っています。アイルランドの最初のロックダウン直前から書き進めていたので、そろそろゴール(出版)を見定めてもいいかなという段になりました。
 本来なら今頃アイルランドで出版していたはずの「お弁当本」が、こういう時期なので見合わせることになっているのですが、エッセイ本はむしろ、こういう時だからこそ読んでもらいたいな、と思いながら書いています。
 アイルランド人のたくましさというか、めげなさ加減、素晴らしいユーモアのセンス(ここが重要!)をお伝えできたら嬉しいです。

 そして余談の「ミッション・インポッシブル」。
 ポストカードは、英語版も作りました。日本語版とはレシピが異なります。アイルランドで販売するのが目的でしたので。こちらももちろんヒマール製作の日本製!
 しかし。ウィルスの影響で、日本からアイルランドへの郵便(船便を除く)はストップしたままなのです。でも、幸いなことにイギリスへの郵便は再開していたので、北アイルランドに住む知人宅に発送してもらうことに。
 無事、到着して安堵するものの、こちらは再びロックダウンに突入。幹線道路にはあちこちにガーダ(警官)が検問を行っており、なかなかに面倒。
 知人は歯の治療で免疫力が低下しているため、感染要注意にあたるので、感染者の増えているカウンティ・ドニゴールを避け、隣県リートリムのガソリンスタンドで落ち合う算段を整えました。が、マークの仕事と重なり、知人とうまく時間が折り合わず、苦肉の策、ガソリンスタンドで預かってもらおう! そんなことしてくれるのかどうか? アイルランドのことだからしてくれそう。お礼にマドレーヌをたくさん焼いて、いざ出陣。
 知人からは「預かってくれた」とメールがあり、安心したものの、どういう状況で保管されているのかはナゾ。
 以前、パブで買ったTシャツが、家に帰ってみたらギネスの大きなシミがついていて、翌日交換してもらったことがあるのですが、Tシャツはギネスを注ぐカウンターの真下に……保管する場所、他にないの??
 そういう良くも悪くもイージーな国ですので、預かっていただいてるのに不安を覚えるのは失礼と思いつつも、小包見るまで心配でした。
 幸いすべては杞憂。そのガソリンスタンドは、荷物の受け取りと保管をサーヴィスのひとつにしていたのでした。おまけに手数料もとらない。お菓子焼いてってよかった。店員さんたち「そんな、いいのに〜」と遠慮しながらも喜んでくれて。焼き菓子、作れると重宝ですよ!

 その大騒ぎの英語版ポストカード、ほんの少しだけヒマールで販売しています!!

 ご贔屓のほどを。

臨場感あふれる荷姿!


再びロックダウンのアイルランドより(チョコ・クリスピーズ)

 初ロックダウンの3月に逆戻りしています。大きな違いは、一度体験済みなので、人々に多少ゆとりが見えることと、学校を開けていること。といっても今はハロウィンをはさんだ休暇中なのですけど。

 3月のロックダウンがゆっくり解かれる夏、市井の人々の緊張も大きく緩み、近所の海岸には人があふれ「いいのか?」と思っていた矢先。ウィルスが「懲りないやつら」とあざ笑っている図が浮かんで悔しい。
 この状況が、すぐに終わると期待するからイライラするのだと思うのです。しばらく続くと観念すれば、心構えも対処方法も変わるでしょう?

 田舎で蟄居生活なので、ロックダウン前も後も、わたしの暮らしに変化はなく、ラッキーというしかありません。
 出かける先も、農場と青空マーケットなので、認められた範囲ですし、何よりソーシャルディスタンスとれまくり。

 今回のロックダウンが始まる前日のラジオ番組で、買い物客に「何を買い置きするの?」とインタビューしていたのですが、ある男性が「パジャマとスリッパ!これっきゃないでしょう、あはははは」と答えていて、超ウケまくりました。いいな〜アイリッシュのこの姿勢!

 こういうときは、買い出ししなくても作れる簡単おやつを。
 拙著「アイルランドのおいしい毎日」でも紹介したのですけど、久しぶりに作ってみてあらためて、こりゃイケる、と思ったので、再度ご紹介します、“チョコ・クリスピーズ”。
 こどものおやつですし、わたしが習ったのも当時こどもだったマークの姪っ子。でも「お!」と気づいたのは、これってグルテン・フリーなんですよね。

【材料】
クッキング・チョコレート 150g
シリアルのライスクリスピーズ 60g

 2ダースほど作れるはずです。
 もっとおいしく、と普通のチョコレートを使うとうまくいかないので、必ずクッキングチョコレートを使ってください。
 湯煎でボウルにいれたチョコをとかし、ライスクリスピーズをまぜます。湯煎のまま作業する方がうまくいきますって思うのは、寒くてどんどん固まっちゃう国にいるからかしら??
 ボウルの底の方からライスクリスピーズをかきまぜると、しゃかしゃかって音がかき氷に似ていて。最後にかき氷食べたのはいつだろう?もう夏の日本は無理っ!な体質になっているので、ずいぶん長いこと近寄っていないし。余談でした。
 オーブン用天板などにオーブンペーパーを敷き、スプーンでチョコをまぜたクリスピーズをすくって置いていきます(一口大。あまり大きいと食べにくいので)。
 わたしのレシピは、チョコをかなり薄くコーティングしているので、サクサク感を楽しんでいただけると思います。ふつうはもっと、がっちりチョコ。
 タッパやガラス瓶に入れれば翌日まではぜんぜんオッケーですが、それを過ぎるとちょっとサクサク感が減っちゃいます。食べきりサイズで作ってくださいね。



エッセイ「鯖」by Yumiko

 アイルランドでポピュラーな魚のひとつがサバ。今日は新鮮なのを見つけて爆買いしました。今、旬を迎えています。
 モーターウエイで魚を買う話は以前しましたけど、同じ幹線道路沿いに、今度は北部ドニゴールの魚売りヴァンが登場!ここから車で1時間ちょっとの距離にあるキリベグスという国内のメイン漁港からの直送です。
 いつもはスライゴータウンに近い場所で販売していて、今日わたしが見つけた(正しくはマークが発見して下見してくれた)場所は初めてのロケーションなのだそう。品揃えは素晴らしく、牡蠣、ホタテからアンコウまで様々。
 わたしの前のお客さんは、アンコウを煮込みにすると言ってたくさん買って行きました。今夜はごちそうね!と声をかけると、ありがとーと笑みを残して去って行きました。魚をちゃんと料理するアイリッシュを見ると嬉しくなるというか、安心します。老婆心。
 次はわたしの番。すごく迷ったけど、とても新鮮なサバを見ちゃったら買わずにいられません。爆買い。7尾と頼んだら、お店の気さくな兄ちゃんが「でかいから6尾でいいと思うよ。食べ過ぎさせたくないからねー」の配慮が気に入りました。ずっと昔、新橋にある老舗中華料理屋さんで、あれこれ注文したら、中国人オーナーが「そんなに食べられないと思うから」って調整してくれて、いたく感心したことがありました。儲けたかったら黙って料理を出してると思うの。でも、残したらもったいないの気持ちが感じられて、その店がさらに好きになったのでした。この魚屋さんも同じ。

 新鮮なサバは軽く小麦粉をはたいて、オリーブオイルでソテーするのがいちばんだと思っています。いいフライパンがあれば、小麦粉を省いてもオッケー。4尾はソテーにして、残り2尾はつみれ汁に。アイルランドに来なかったら、こんな面倒なことは一生しなかったと思う。面倒というと語弊がありますけれど、ちょっと手間がかかる。まだスキルがないせいかな。
 骨を避けてナイフですき身にします。フードプロセッサーを使うと身が細かくなりすぎて、わたしは好きじゃないの。ナイフでたたきにするくらいが、いい食感のつみれになると思います。
 ざっくりしたサバのすき身に、お味噌(麦味噌とか、玄米麹味噌とか、ちょっとエグいタイプ)とチャイブか小ねぎのみじん切りを混ぜ込み、沸騰した湯(昆布を入れて、沸騰する前に出すとさらにおいしくなります)の中に、スプーンですくって落としこんでいきます。サバつみれが浮いてくるまで約5分で完成。最後に醤油を入れて味をととのえたら、素晴らしいつみれ汁に。
 麺を加えるときは、塩少々と砂糖小さじ1(日本ではみりん大さじ1〜2)を足すといい感じのだし汁になります。麺は、そうめんとか細麺うどんが相性ばっちり。もちろんお蕎麦もグー。トッピングに、さらに小ねぎをてんこ盛りしてください。ほうれん草も!

追記。同じつみれをフライパンで焼いてみたら、素晴らしいサバ・バーグになりました。冷めるとちょっと魚臭くなるので、あつあつがおススメです。お弁当とかに入れるのなら、カレー粉などのスパイスを加えるといいかも。

サバのつみれ蕎麦 in アイルランド。


エッセイ「モーターウエイで魚を買う」by Yumiko

 夫マークがスライゴーの町から車で家に向かっている途中、路肩で魚を売っているヴァンを発見。新鮮そうだったからと買ってきたのが、キッパー、燻製サバ2尾、生鮭のでっかい切り身が2切れ。おまけにタラの切り身(半身ですっ)が、どど〜ん!ひょ〜。
 まず鮭を茹でて冷凍庫へ。タラはクリーム煮にしようと湯引きしたときに気づいた。うそっ、うろこがついてるじゃん!
 そうなんです。アイルランドの魚屋さん、なぜかうろこをちゃんととらない。皮は食べるときにはがすことが前提だからだと思うけど、調理するときにだって邪魔なんですけど。湯引きした後は皮をびーっとはがすのも難しく、いじくり回したタラは思い切り煮崩れ、かなり悲惨な仕上がりに。
 しかし、初めて口にした魚屋さんの燻製サバはくせになるおいしさ。スーパーで売られているパック入りのものしか使ったことがなかったので、ソフトな燻製サバは焼き直すのだろうと思っていたら、マークが「そのまま食べられるよ」と教えてくれ、半信半疑で味見してみたら確かに調理済みの味と食感。のちに知ったのは、キッパーとよばれる燻製ニシンは燻煙方法が異なるので、調理しないといけないんですって。牛乳で茹でるのが伝統的な方法。キッパーも切り身のものしか食べたことがなかったのですが、丸ごとのものは見た目がほとんどホッケの開き。これは焼くしかないなと思ってフライパンで油を引かずに焼いてみたら、思った通り和食でした(笑)。炊きたてごはんを用意すべきだったな。これは次回。

ほっけの干物に見えません?これが燻製ニシン、キッパー。伝統食材です。でもおカシラつきのは初めてです。
燻製サバ、まるごとです。獲れたてのサバを使うからか、庭で燻煙して食卓に運んだかのような新鮮さ。じゃがいもも付け合わせ野菜もエイダンのファームのもの。魚の向きが逆ですが、この国にはルールなし。これもおカシラつきでいたけど、顔がコワイので削除しました!

 魚屋さんは隣県メイヨーから出張してくるのだそう。お店を構えているわけではなく、漁船から水揚げされた魚を直売する方式で、彼は船に乗らず車での販売担当。いつもは、作家イエイツの眠る教会のすぐ近くにあるカントリーマーケットに出店しているそうですが、青空市場は再開したけれど屋内マーケットはまだで、すぐ近くの路上で販売しているところだったのですって。
 そのマーケットはファームのエイダンも出店していて、クラフトも含めて40店舗も並ぶのだとか。小さいマーケットと思っていたので、びっくり。

 サバはメイヨーとスライゴーの県境のキララ湾で獲れたものなんだそうで、ほぼ地元産。キララって、雲母みたいで不思議ですよね(笑)。
 2度目のマークのお買いものは、少しセーブしますって言ってたのに、またまた巨大な燻製タラ(の一種)が含まれていたし、3度目の正直はムール貝にほたて、まるごとのカレイ(煮つけにしました)、マス2切れ、生鮭はわたしが「1切れだけ要るんだけど」と頼んだのがアダに。魚屋さんが「負けとくよ!」ってさらに2切れ加えてくれてました。
 こちらもだいぶ学習したので、残りそうになると、から炒りしてふりかけにする手を覚えました。山椒の粉といりごまをふりいれて。楽しい。

 毎週土曜日は、そんなわけで魚と野菜の調理やら下ごしらえで、すごく忙しいんですけれど、充実のひととき。

おうちでムール貝を食べるしあわせ。イエイツゆかりのリサデル・ハウス近くで収穫されたもの。最近はきれいに下処理されていて助かります。初めて買ったときは、貝殻をきれいにしないと調理できなかった。海藻が殻からはみ出て、ひっぱると中の貝ががんばっちゃって綱引き状態に。あ、それは今もときどきありますが。


エッセイ「野菜の買い出し」by Yumiko

 毎週土曜日はとても忙しい。近くのオーガニックファームへ注文しておいた野菜を取りに行く日で、まずは冷蔵庫に残っている野菜の整理から。だいぶ上手に使いきれるようになったので、次の野菜を入れるスペースを楽に確保できていますが、最初の数週間は「え、もう次が来る?」とプレッシャーでした。15ユーロの箱買いは、食べごろの野菜をファームの方で選んで詰めるので、当日まで何がくるかわからないのですが、それもやっと楽しみにできるように。7月のはじめまではサラダリーフがたくさん。おいしいので、さらに追加して買ったところに、なんとマークの兄さんたちが家庭菜園で収穫したレタスを次々に持ってきてくれたときは少々パニック。食べきれるのか??根っこつきなので多少日持ちしましたけど、ぱりぱりの食感が薄れたら惜しいので、毎日サラダ。でも味も食感もいいので飽きないんですよね。

 ファームは自由に散策できるので、作物の成長ぶりを見て「来週はトマトがくるかな?」とか予測できるようにもなってきています。

ファームは素晴らしいロケーションの中に。この山はスライゴーのシンボル、ベンブルベンに連なる連峰のひとつです。

 敷地内には、こじんまりしたファームショップがあって、手作りのサワードウ・ブレッドやアップルパイ、チャツネなども売っており、野菜を買い足すこともでき、なによりファームの主エイダンとのお喋りが楽しみ。

 今年は夏が前倒し、今になって雨が多く気温も上がらず、じゃがいもが育ちきらないなんて聞くと、われわれは今日明日の天気しか頭になく、長いタームで天候が土の中にどう影響するかなんて、まったく知らないでいることに愕然とします。

 土の上では、ウィルス騒ぎで世界中がジタバタしていますけれど、畑で作業する人たちはいつだって、コントロール不能な状況をいかにベストな方向に持っていくか、努力し続けているんですよね。毎年、事情は異なるし、正解はあってないようなもの。すごいな。

 大学生の息子が、ロックダウンで休講になっている間、畑仕事を手伝いに来ているそう。専攻はまったく異なるのに、あるいはそれだから?畑仕事が楽しいと率先して働いているのですって。そういえばニューブリッジのなかよしだったオーガニックファームでも、大学生の息子が「いい気分転換になるし」と言って、父親の手伝いに来ていたっけ。

 こういう若者に出会うと、アイルランドの将来はまだまだ明るいなと思うのです。

 土曜日の忙しさは野菜だけでなく、マークが偶然見つけた路肩の魚屋さんで“男買い”(大人買いでなく、台所の状況を知らないまま、うっかり大量に生鮮食品を買ってきちゃう男性。え!?差別用語じゃないですよね??わたしのオリジナルですが…)嬉しいけど、借家の冷蔵庫はとても小ぶりで、野菜と魚が押し合いへし合い。せっかく新鮮なんだから、早く調理しなきゃと焦る焦る。

 長くなるので、魚の話はまた次回。これがまた、おいしいんだ〜

busy kitchen
食べられるブーケ。これ、全部エディブルなんですよ〜サラダに入れたり、メインディッシュのお皿にあしらったり、食卓が華やぎます。


エッセイ「新たな日常」by Yumiko

 わたしの“ニュー・ノーマル”は、コロナに関係なく始まっています。
 スライゴーに引っ越して、食生活は劇的にレベルアップしました。毎週末、すぐ近くのオーガニックファームで野菜の箱買いをします。こんなにサラダを食べる日々は人生で初めて。様々な葉の味を楽しめて、ちっとも飽きないのです。いいオリーブオイルとレモン、はちみつのシンプルなドレッシングで、わしわしといただきます。毎回、食用の花々が混ぜてあるのも楽しくて。チャイブの花は、ちゃんとチャイブの味がするので、いい薬味になります。お刺身のツマになるな〜。
 東京生まれのわたしは、野菜のことをちゃんと理解していないので、すごく勉強になります。収穫したてのにんにくなんて初めてだし。

 ダブリンより少し遅れて、この界隈のレストランでもテイクアウエイ(お持ち帰り)を始めたのは、ゆるやかにロックダウン解除に向かい出した5月末だったでしょうか。いちばん近くのパブは徒歩5分。レストランも併設しているので、生ビールとおつまみのお持ち帰りができ、おうちで生ギネス、初めて堪能いたしました。楽しすぎ。おつまみのチップスも、ハラペーニョ入りのクリームコロッケも絶品。
 この数ヶ月、外食や買い食いが封印されていたので、家でのおさんどんに逃げ道がなく、料理好きなわたしでも少々煮詰まっていたし「地元の経済に貢献」と理由をつけて、何度かお世話になりました。

おうちギネスと、おつまみのハラペーニョ入りクロケット。スムージー用のキャップを無理やりのせられたギネス、プラスティックのラップはエコじゃなくてすみません。

 過去含めて、お持ち帰りナンバーワンは、シーフードレストランのロブスター!
 シーフード・プラッターには、他にもカニの爪、手長海老、スモークサーモンがぎゅう詰め。食べ終えた後も、カラを煮込んでスープストックを作り、翌日リゾットにしました。
 このお店は、去年わたしのアイルランドでの初料理デモ(デビューです!)をさせてもらっていて、応援の気持ちもあって奮発したのですけど、おいしすぎるので、すぐさま再トライ。次はスパイシーな味付けのサバの揚げ焼きとチップス。ダブリンベイ手長海老とカニの爪は、こちらの注文ミスで2倍のポーションが入ってて驚愕しましたけど、翌日サラダにし、カラでスープストックを作り、数日分の食事に。お店の向かいが小さな漁港で、食材はすべて地元調達です。
 そういうのが素晴らしいと思う。

すごさが伝わりにくくて残念。冷めないうちにいただきたかったので、お皿に盛り付ける余裕なし。上方に鎮座というか、折りたたまっているのがロブスターさま。みそ部分が超おいしかった。

おうちでシーフード。しあわせ。手長海老もよく育ってて、ロブスター顔負けでした。

 ロックダウンで困るのって、多くは町の人たちなのでは?
 このあたりでは、感染者も出なかったし、ソーシャルディスタンス(WHOで決められている1メートルより長い2メートルなのは、おしゃべりな国民性を重視したのじゃないかな。マーク見てると1メートルじゃ飛沫がかかります・苦笑)が容易く保たれるので、畑仕事などはみな、ふつうに行っていました。
 スライゴーのはずれの農地は小さなところが多く、家族だけで作業するのが基本。異国から働き手を動員しないと成り立たない大型農場が、人手不足で収穫に支障がでて問題視されていましたけど、そもそもこういう小さな国で農業を大規模化する発想が合わないのではないかしら。アイルランドの農業の素晴らしい点は、量より質で、有機栽培に積極的に取り組んでいる農家が目立つところ。丁寧に作っている野菜は、純粋においしいのです。

 家にいる時間、家族といる時間の増えたロックダウン中、誰しもが「家での食事」をある意味“強いられ”た結果、正しい食生活を見直すきっかけになったと耳にすることが増えています。料理が楽しくなったという声もよく聞きます。
 わたしが通うようになったオーガニックファームも、ロックダウン中に顧客が激増したそう。素晴らしい。

 ロックダウンのもたらしたプラス面のひとつは、活性化した“地産地消”。
 アイルランドでは定着しているコンセプトですけれど、“地産”の“地”のエリアがさらに狭まったのではないかしら。
 経済が好調のときは“フードマイレージ”(食材が食卓に届くまでの距離)が長くなりがちでしたけれど、国が閉ざされ、県境を越せなくなると、近場で調達せざるを得ません。いいことだと思う。手に入らないものは、口に入れようと考えなければいいんです。

 ロックダウンの必要性はあったのか?って声は、なきにしもあらずなのですが、わたしは大賛成。ここで将来を考えない人は一生考えないし、未来の意味だけでなく、今必要なことも考えずにおざなりにしていると思う。

続きはまた。

やっちまいました、禁断のピザ!トッピングの素っ気なさはアイルランド流。サラダは有機野菜でたっぷり作りました、せめて。



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