Yumikoのサバイバル・クッキングレシピ

アイルランド在住の料理家・松井ゆみ子さんから届く、いま作りたい&作ってもらいたいレシピと日々のエッセイ。

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essay

土曜のランチ

 拙著がオフィシャルに出版され「届きました」や「半分読んだー」などなどメールがわんさか。ひさかたぶりの”声”も多く、返信も長くなりがちで、先週はずっとパソコンの画面に向かっておりました。なので今回のブログはレシピなしでごかんべんください。そのかわりというのもナンですが、毎週土曜日の昼食風景をご披露いたします。
 土曜日はオーガニックファームに焼き菓子を納品し、オーダーしていた野菜をピックアップする日。金曜日は丸1日、焼き菓子作りに追われるので、土曜日はその開放感もあり、採れたての新鮮野菜と、アンの作る自然酵母パンの、シンプルだけれど最高のごちそうを楽しみます。
 ここに引っ越してきて、お皿に並ぶ食材に、それぞれ「だれそれさんの」と生産者の名前がつくことに気がつきました。
 たとえばこの日。ジェリー・バーンズのビーフ、エイダンのサラダリーフとズッキーニ、アンのパン。すてきでしょう? ときには、ジョニーのサバや、ジェイソンのポロック(スケソウダラ)、ヤスミンのレタスと卵なども。新たに加わったのはエルカのアップルジュース。エルカからも卵をいただいた。サイダー(シードル)作りのためにおすそわけしたリンゴのお返しで。
 日曜日にマーケットがある週は、ここにイーアンの野菜や最近やみつきになっているコーリーンのチリジャムなども肩を並べます。生産者が異なると同じ野菜でも味がちがうので、エイダンとイーアンのじゃがいもの食べ比べなど楽しみも倍増。
 ポロックは身がくずれやすいので、まだ調理になれませんが、大きなタラよりも味が繊細で新たなお気に入りの魚になりました。ジェイソンが自分で釣って、きれいにさばいてきてくれるので大助かり。耳よりな情報も。
「タラは大食いで、腹をさばくと中からヨーグルトのパックとか出てくるんだぜー。その点ポロックはお上品でね、食べるものを選ぶから内臓美人」
 フィッシュ&チップスといえば、たいていはCod(大きいタラ)を使いますが、最近ポロックを使うレストランを発見。値段が安いこともあるのでしょうけど、理由はそれだけではなさそうです。
 上記の人たちのほとんどは、拙著新刊の登場人物ですので、合わせてお楽しみくださいね。おっとエルカはここで初登場。去年までクリフォニー・カントリーマーケットのメンバーでした。今はお客さんとしてやってきます。彼女のだんなさんは趣味でリンゴの発泡酒サイダー(シードル)を作ると紹介されたのが去年の秋の終わり。残念なことに、庭のリンゴのほとんどは使い切ってしまっていて「来年は必ず」と約束していたのです。すでにやってきた「来年」。今年は大豊作だったので、助けて〜〜とリンゴもぎに来てもらいました。
 次に、わが食卓を飾るのは手作りサイダー。週末にエルカのファミリー総出で収穫したリンゴがお酒になって帰ってくるのです。
 まさしく、わらしべ長者の気分!

エイダンのサラダリーフ(エディブル・フラワー入り)とズッキーニのソテー、ジェリー・バーンのビーフステーキ。味付けは赤ワインと醤油。たまねぎもエイダンのだった。じっくりソテーして、さらにフライパンのわきに寄せてビーフの肉汁をたっぷりすわせます。マッシュルームはアイルランド産でオーガニックですがスーパーで買ったもの。シーズンオフでもありますし。
アンの自然酵母パン生地で作ったフォカッチ。じゃがいもがのってるのはご愛嬌ですが、彼女の育てた作物です。まだ小さいのでトッピングにしたのだそう。

<編集部より>
松井ゆみ子さんの新刊「アイリッシュネスへの扉」、9月1日に発売となりました。
通販でのお求めはヒマールのオンラインストアにて、ぜひどうぞ!
お読みになっての感想など、こちらのブログのコメント欄にぜひお寄せください。



ついに出版!「アイリッシュネスへの扉」

 早々にご予約くださった方々は、すでにお手元に届いていると思います。まだ刷り上がってもいない時点でご購入くださって、恐縮しております。

 アイルランドに到着するのはいつかしら??
 ヒマールの辻川純子編集長が、速攻で発送してくださって。ポストカードのときと同様、北アイルランド在住の「O’Bento」本の編集者シボーンあてです。日本とアイルランド共和国間の郵便事情はまだ改善しておらず、イギリス圏の北アイルランドへの郵便はずっと早く届くので。待ち遠しい〜〜
 でも、多少のタイムラグがあってよかったのかも。本は、出版されると同時に著者のものではなく、読者のものになるのだと誰かが言ってましたけれど、ほんとうにそのとおりなんです。できあがった拙著を見て「え? 誰が書いたの?」という感じで、実感がわかない。
 友人が「本を作るって、出産みたいなものよね」って言ってくださったのですが、産んだ途端に成人して家から出て行っちゃう感じ。なんだかネガティヴに聞こえることを書いちゃいましたけれど、強調します。拙著はみなさんのものになりました。お楽しみいただけたら嬉しいです!!!
 で、タイムラグ。忘れた頃に届く拙著に「わー、できた〜〜」って、無邪気に喜べたらいいなと思って。

 そして、なんと。5年がかりで制作していたレシピ本「O’Bento」も、今印刷にとりかかっています。2冊同時刊行は人生初。狙ってできるものではありません! なんせ日本とアイルランド2カ所で、ばらばらに取りかかっていた作業ですから。
 たくさんの方々に読んでいただくための努力をしつつ、次の本にとりかかれる喜びを密かにかみしめてもいます。

 ツイッターに、拙著新刊が出ると思わなかったってコメントがあり、ちょっとショックでした。17年かかっちゃいましたけど、出す気は満々でしたので(笑)。

 ご感想、ご意見、どうぞ遠慮なくお寄せください。お手やわらかに〜

通販でのお求めはこちら



ごあいさつ

 ヒマールのサイトで”発表”! されましたように、拙著「アイリッシュネスへの扉」が9月1日に発売されます!!

ヒマールのオンラインストアにて、特典付きのご予約販売開始されました!

 エッセイ本を出すのは、なんと17年ぶり。レシピ本を2013年に出していますが、それだってもう8年前。書籍の制作は時間がかかるので、そんなに次々と作れるものではないですし、そもそも本を作る機会に恵まれたこと自体が幸運なことなので、じっくりと取り組みたいといつも思います。
 今回の新作は、ヒマールのじゅんこ編集長と「作りましょう!」のGoサインが出てから2年足らずで完成したので、あれ? 今までの拙著のなかではかなりのハイスピードかも。
 前にも書いたような気がしますが、今までの拙著はプランに何年か要し、出版社にプレゼンテーションし、運良く企画会議に出してもらって、そこからいくつもの難関(編集会議、営業会議、会社トップの決断)を数ヶ月かけてくぐり抜け「出しましょう」の嬉しい快諾をいただいてから原稿を書き始め(レシピ本のときは料理撮影。これがまたわたしひとり作業なので、調理、スタイリング、撮影をちまちまこなすのに1年半を要した気が。買い出しがいちばんたいへんでしたが・笑)そのあとにデザインワークが始まり……と軽く1年がかりの作業です。楽しいんですよ! すべて。チームでの作業が始まると特に新鮮で。
 校正を何度も繰り返して「これで完了、印刷屋さんに回すのみ」を迎えるのは、嬉しくもあり、ある意味いちばん不安なとき。は、わたしだけかしら? 出かける前に、家中の鍵を閉めたにもかかわらず、見落としがある気がしたりしませんか? あれと同じ。
 じゅんこ編集長に「お疲れさまでした! これにて終了」と言われたとき、嬉しさよりも寂しさの方が大きかった。
「自分の本を見るのは、エキサイティングよね!」と誰にも言われるのですが、「え? この本誰が書いたの?」という幽体離脱のような気分。
 こういう一種の虚脱感を打開する手はひとつだけ。次の本に取りかかる!
 いつもスタートは、出せるかどうかもわからない「本」をひとりでプランして、作業を始めます。たいてい、これが「たたき台」になってくれるので、まずは作り始めないと。あ、何か「やってみたい」と思っていることがあったら、夢想も大事ですけど、着手するのが早道です。きっぱり!
 ひとりで構築するうちに上達もするし、誰かが気づいてくれる機会が増えるし、可能性が広がるのはそこから。
 今までの拙著は写真が多く、読者の方から「3時間で読み終えちゃいました」と、それは「面白かった」のかわりに言ってくださった言葉だったのですが、次にいつ出せるかわからない本なので「ゆっくり読んで!」と答えた気がします。が、今回はずっと憧れていた”文字ばっかりの本”。写真も少しは入れていますが、基本”読み物”です。自分で書いたものでも、校正時に数日要しましたから、秋の夜長にゆっくりお読みくださいね!
 やっと書けた「硬派」な本です。が、わたしのテイストですから爆笑エピソードもお楽しみいただけると思います。

 前置きが長いのは、クールじゃないので切り上げます~

 次回のブログでは再びレシピをご紹介いたしますね。
 夏野菜の使い方がテーマです。旬のズッキーニの焼き菓子も!

夏の庭。裏庭ですが、まるで空き地を借りて洗濯物干しているようにしか見えませんよね〜。左の木はりんごです。今年は豊作になりそう。こんな庭を眺めながら書いた新作です。


グースベリー

 毎年、初夏の楽しみのひとつがグースベリー。日本ではなじみの薄い食材ですが、アイルランドでもごく短い間しか市場に出回らないので、ここ数年はずっと買いそびれていました。他国から輸入されるので、いちごやブルーベリーはもちろん、野生のブラックベリーでさえ通年手に入るようになり「旬を迎えたこの季節にしか食べられない」のは、ルバーブとグースベリーだけなのでは?と感じています。
 そんな希少なグースベリーが旬を迎えました。おまけに田舎暮らしのおかげで収穫のお手伝いをする機会にも恵まれたので、その顛末含め、どんな風に食べるのか?などをお伝えいたしますね。

 おなじみエイダンのオーガニックファームで知り合いになったご夫婦は、マナーハウスでゲストハウスを経営。ロックダウンでセミ・リタイア状態なのだそうで、広大な敷地内の果樹園にあるフルーツを「無駄にしたくないから」と、エイダンのファームに”寄付”しています。去年の秋は、わたしにも「お菓子にしてね」と段ボール箱いくつものりんごをくださって。今度はグースベリー。摘むのに手がかかるので、マークとわたしが二つ返事でお手伝いに駆けつけた次第。お屋敷を見てみたかったのも大きな理由でした。
 ワイルドなウッドランドの中に建つ美しいマナーハウスに感嘆。泊まってみたかったな〜。

 庭というより森、の奥にある果樹園に向かうと、たわわに実をつけたグースベリーの低木が数本。となりには同じ種属のレッドカラントが何本か並び、そろそろ色づき始めていたので「次はこれ」と狙いを定める自分は、まるで鳥みたいですね。
 ずっと以前、パリでランチしたときに、サラダの上にちらしてあったレッドカラントにいたく感動して以来、真似したいのですけれど、これもまたあまり流通しない食材のひとつなので、思わず「お!」と目が止まったのでした。
 グースベリーがあまり流通しないのは、摘むのが厄介なせいかも。枝にはたくさんの鋭いトゲがあり、気をつけないと腕が傷だらけになります。つい袖をまくって作業していたマークはやられてました。長袖着てきた意味ないじゃん。
 鳥たちのコーラスを聞きながら手元に集中して、ちまちま摘み続けること数時間、10kgほどを収穫しました。全部わたしがいただいたわけではなく、エイダンのファームショップで小売りするのが目的で。しかし。
 意外に売れなかったのです!
 ファームで酵母パンを売るアンとわたしが残ったグースベリーを引き取り、手分けしてジャムと焼き菓子にして販売する予定。みなさん、それをお待ちなのかも。
 グースベリーの使い方ですが、ポピュラーなのはジャム。同じ時期に花を咲かせるエルダーフラワー(ニワトコ)と一緒に煮るのだそう。これは最近知りました。酸味が強く、甘みも香りもほとんどない果実なので、エルダーフラワーのほのかな香りづけと、たっぷりめの砂糖が必須。
 りんごやルバーブと同じく、タルトの具材にすることも多いです。わたしは「フール」を作ってみたかったので、果実の形を残したコンポートに。
 摘みに行ったときにもらったアドヴァイスが「煮立たせないで、静かにゆっくり煮ること」。果実が重ならないような大きいお鍋にグースベリーをぎっしり並べ、半身浴ほどの水と大さじ数杯のウォッカとハチミツを注いで煮てみました。エルダーフラワーの花は茎を少し残した状態で2本ほど。これは煮た後に取り出します。
 10分ほど煮て味見したら、思わずうっとり。エルダーフラワーの静かな力が大きく、こんどはコーディアルを作ろうと固く決意しました。
 「フール」は、なんのことはない、ベリーなどに生クリームをからませただけのデザートです。おばかさんと同意語のFoolの由来も謎ですが、生クリームに空気をまぜこむ”ホイップ” からきてるのでは?が自論です。

グースベリー
エルダーフラワー
グースベリーのフール。果実をフィーチャーしたかったので、”のっけ”たスタイルですが、ふつうはもっとぐずぐずに混ぜあわすようです。シンプルですが、旬の味を楽しむには最適。生クリームに砂糖はまぜないのが基本。でもグースベリーも甘さ控えめなので、上から少し、Agave(テキーラの原料)シロップをかけました。上品な甘さで最近のお気に入り。


アイルランドで小商い

 こちらでも始めました、小商い。

 地元で開催される「カントリー・マーケット」のメンバーになり、焼き菓子や海苔巻きを販売しています。月2回、朝11時から午後1時までの開催で、先週末に3回目の参加を終えたところ。初めて海苔巻きを持って行ったのですが、あっという間に完売しました。小さな規模のマーケットなので、たいした数ではないですけれど「地元でおスシが食べられるなんて!」と喜んでくれる人が何人もいるので励みになります。このあたりで海苔巻きを食べるには、車を30分近く飛ばしてスライゴータウンまで出向かなければなりません。もちろん日本人のお店ではないですし。
 わたしはそこの海苔巻き、おいしいと思うけれど、具材満載のすごい太巻きで、それだけでお腹がいっぱいになり、あれこれつまむ楽しみがなくなっちゃうんですよね。基本わたしは細巻きが好き。なのでわたしの作る海苔巻きもスリムです。具材は野菜オンリーのベジ・スシ。初回は、にんじんとアスパラ、もうひとつはアヴォカドとトマトに生バジルをからめたものにしました。
 衛生局の指示がきびしくなっていて、お米は食中毒の可能性が高い「ハイリスク食材」になっていて、扱いがすごく面倒。幸いマーケット会場まで徒歩距離で、移動に時間がかからないこともあり、販売時もアイスボックスに入れておくことで、ようやく海苔巻き販売が可能になった次第。
 カントリー・マーケットは、まだ女性が社会に出られなかった時代、専業主婦たちに働く場を提供するためにスタートしたもので、今も多くのメンバーはアマチュアの料理人たちです。
 拙著「ケルトの国のごちそうめぐり」に、ニューブリッジの隣県ネースにあるカントリーマーケットのことを書きましたが、以来ずっと、いつか参加したいと思っていて、ようやく実現しました。
 ここクリフォニーは、人口1,000人に満たない小さなヴィレッジで、マーケットもわたしを入れて6人のメンバーでまかなっています。もしかしたらアイルランドでいちばん小さなカントリーマーケットかもしれません。でも中身は充実。けっこういろんなカウンティのカントリーマーケットに行きましたけれど、多くは学校のバザーのような感じで、売られている焼き菓子やパンも、いかにもお母さんの手作り。もちろんおいしいし、家庭料理のよさいっぱいで、それはまた魅力。
 しかし、わがクリフォニー・マーケットは、オーガニック野菜のファーマー2名(それぞれ得意分野が異なるので、野菜の種類豊富)、地元で人気のジャムメーカー、自然酵母パンをつくるベーカー、そして健康焼き菓子と和食を作るわたし、花の苗や雑貨を売る女性の6人で、なかなか魅力ある内容だと思います。
 参加する以前は、ずっと買い物客で通っていましたから、実証ずみ。
 オーガニックファームのショップでも毎週末に焼き菓子販売を続けています。ここには当然ながら、ヘルシー志向の人が集まるので、最近はブログでも取り上げましたけれど ”ギルティ・フリー” スウィーツを中心にしています。
 そうだ、ブログにコメントをくださった ”つながる” さんのリクエストで作り始めた ”シュガー・フリー”ケーキがきっかけなんです!
 それまでは、控えめにはしていましたけど、お砂糖(ブラウンシュガー)やバターを使った伝統菓子を作っていました。新たな道を開いてくださった ”つながる” さんに、とても感謝しています。
 このあたりは、山あり海ありでエクセサイズが充分にできるせいか、太った人をあまり見かけませんけれど、アイルランドでは肥満が深刻化しているので、焼き菓子は作る側も ”ギルティ” を感じてしまいます。
 なので、”ギルティフリー” は、食べる方だけでなく、作る方にも必要なこと。

 ファームショップは毎週土曜日オープン、マーケットは月2ですが日曜日。両方開催される週末は、自宅の台所がすごいことに……。
 海苔巻きは作り置きができませんから、徹夜作業になり「今回こっきりにしよう」と思ったのですが、完売したら即「次は何を巻こうかな」と思い始める、ちゃっかりなわたし。

 そして実はもうひとつ、ヴィレッジでたった一軒の ”よろず屋” さんでも「何か作って売らない?」と声をかけてもらっており。

 すっかり長くなってしまったので、よろず屋さんの話はまた今度。

カントリーマーケット、初納品。庭のワイルドフラワーとケーキもろもろ。マークと彼の友人のお弁当作りと重なって、初回はちょびっとしか作れなかったのですが、このあとばん回しております。
ファームショップで販売したプラムケーキ。初めて使ったプラム、皮つきで大丈夫かなと少し心配だったのですけど、きれいな色に焼きあがって嬉しかった〜。


パンケーキ・チューズデー

 イースターは、クリスマスと同じくらい大切な祝祭日です。
 キリスト教が伝わる以前の習慣を踏襲していて、満月が関わり、毎年イースターのスケジュールが異なります。そのためか、日本ではなかなかイースターをとらえにくいようですね。
 冬の間、屋内ですごすことが多かった家畜が、ふたたび放牧されるようになるのがイースターのあたり。子牛や子羊も、寒さがすぎたこの時期に合わせて生まれるよう調整されていて、初夏を迎える頃の牧場には、ミニチュアサイズの牛や羊がいっぱい。うさぎたちも穴から出てきて、野原を飛び回ります。
 自然界が再生し、活気が戻ったことを祝う、喜びの日がイースター。わたしはクリスマスよりも、そんなイースターが大好き。冬の長い北国では特に、春の訪れはもうそれだけでお祝いに値します。畑のある人たちは、なおさら。
 さて、キリスト教においては、イースターの前40日間、レントとよばれる”がまんの日々”があり、肉食を禁じています。現代においては、そこまで厳しいものでなくなりましたけれど、クリスマスのごちそうの後のデトックスにもなるので、ヘルシーで質素な食事を心がける人は多いのじゃないかしら? 魚はまだまだ旬ですし。
 レントは常に水曜日から始まるのですが、その前日、パンケーキ・チューズデーとよばれるアイルランドでは誰もが大好きなしきたりがあります。今年は2月17日からレントが始まるので、パンケーキ・チューズデーは2月16日。
 そもそもは、レントの前、家の中にあるタンパク源(卵と乳製品)をすべて使い切るのが目的だったそう。そのために作るのがパンケーキなんです。なかなか合理的。
 ケルティックタイガーとよばれた好景気以前、パンケーキはレントの前に食べるものときっちり位置づけされていたそうです。ゲストハウスの朝食や、カフェのメニューにパンケーキが登場するようになったのは、ぐっと最近のこと。
 今やすっかりポピュラーな食べ物になっていますが、それでもレントの前に食べるパンケーキはまだまだ特別なもの。

 アイルランドのトラディショナルなパンケーキは、クレープよりやや厚めですが、日本のホットケーキに比べるとぐっと薄めです。
 大雑把なレシピで恐縮ですが、薄力粉カップ1に対して、卵1個、牛乳1カップ強(280ml)。お砂糖もベーキングパウダーも入れません。お砂糖は、焼きあがったものにグラニュー糖をぱらぱらっとかけます。その前にレモンの絞り汁をかけて。

 わたしは昭和の、ホットケーキで育った世代なので、ついついパンケーキが分厚くなっちゃうんですよねー。

 アイルランド式パンケーキは、下の写真をご参照ください。
 ニューブリッジにあったお気に入りの大衆食堂のパンケーキです。王道。
 毎年食べに行ってました。マークは毎回「おかわり」して。
 あ、これは伝統。「パンケーキ、何枚食べた?」は、日本でいうと元旦にお餅を何個食べた?と同じで、お決まりの確認事項です。
 そしてわたしは思い切り邪道(シェフのドニー、そんなこと言ってごめんなさい!)な、ピリ辛ミートソースを巻き込んだトルティーヤ風が超お気に入りでした。
 去年は引っ越しのばたばたで、食べたのかどうかも忘れてしまいましたから、今年はリキ入れて作るぞー。

これが王道、アイルランド流パンケーキ。ニューブリッジの”キシュテン”ドニー作。アイスクリームのっけは、マークが大人になったから許される特別バージョンです。本来は、レモンの絞り汁とグラニュー糖!


クリスマス雑感

 去年のクリスマス、まだ引っ越し途中だったマークとわたしは、スライゴーからニューブリッジの家に車で向かっていました。見事にがら〜んとしたモーターウエイはSF映画のよう。前日、クリスマスイブはマークの従姉妹がディナーに招待してくれて、伝統的なターキーとハム、オーブン焼きの野菜、じゃがいもetc、家族親族友人たちと、わいわい楽しい時間をすごし、わたしは数年ぶりにクリスマスディナーを作らないですんじゃった年でした。
 さて今年。あんな風に誰かと集うことはできないので、夫婦水入らず。いつもと同じです(笑)。
 引っ越し先の家の庭には、いろんな種類のヒイラギがあるので、少しいただいてリースに。ツリーも庭中にあるので、あえて家の中にすえる意味なし。
 今まで当たり前にしてきたことに「意味ある?」と自問する、いい機会を得たのが今年だったと感じています。ウィルスの影響だけでなく、今の家に引っ越してきたことが大きなきっかけでした。
「今年を振り返って」的なコメントをあちこちで耳にしますが、ちょっと意外に思うくらい「最悪な年だった」と言う声を聞きません。アイルランド人らしいポジティヴさか?とも思ったりしますが、それだけではないみたい。著名ミュージシャンが「ツアーがなかったので、曲づくりもできたし、家族とすごせた」って言っていたのが象徴的でした。

 身近でも、長年やりたかった趣味がやっと実現できた、とか、特に創作活動に適する機会だったのではないかと思います。
 世の中が忙しく動いているとき、そこに巻き込まれないようにしながらものを作るのは、容易いことではありません。

 アイルランドではクリスマス前、そんな時期に生まれた新しい歌がたくさん発表されました。
 この国の底力を感じる瞬間です。

 わたしもヒマールから出版するエッセイ本を書き上げました。
 来年、みなさんに読んでいただけることを願っています。

超不器用だけど、それなりにたのしい!庭の木の枝にスターアニスとシナモンをあしらってミニリースに。
こちらは「夏の思い出」がテーマ。庭に咲いてたブルーベル、ヒオウギ、あじさいのドライフラワーをあしらいました。下のほわほわはボグコットン。



“mission impossible” の成功と、お知らせ。

 まずはお知らせから。
 ヒマールさんとのコラボで、レシピ入りのポストカードを作りました。
 ブログでご紹介したレシピですが、写真を少し変えたりしています。
 繰り返して作っていただけるようなレシピを冷蔵庫に貼ったりできますし、おともだちにお送りしたり、活用していただけたら嬉しいです。
 ヒマールさんの製作なので、おしゃれに仕上がっています!
 アイルランドでは、ロックダウン中にカードやお花を送る人が増えたと聞きました。日本でもそうなるといいなと願っています。

 さらに。
 ヒマールのサイトでお気づきになられたかと思いますが、エッセイ本を作っています。アイルランドの最初のロックダウン直前から書き進めていたので、そろそろゴール(出版)を見定めてもいいかなという段になりました。
 本来なら今頃アイルランドで出版していたはずの「お弁当本」が、こういう時期なので見合わせることになっているのですが、エッセイ本はむしろ、こういう時だからこそ読んでもらいたいな、と思いながら書いています。
 アイルランド人のたくましさというか、めげなさ加減、素晴らしいユーモアのセンス(ここが重要!)をお伝えできたら嬉しいです。

 そして余談の「ミッション・インポッシブル」。
 ポストカードは、英語版も作りました。日本語版とはレシピが異なります。アイルランドで販売するのが目的でしたので。こちらももちろんヒマール製作の日本製!
 しかし。ウィルスの影響で、日本からアイルランドへの郵便(船便を除く)はストップしたままなのです。でも、幸いなことにイギリスへの郵便は再開していたので、北アイルランドに住む知人宅に発送してもらうことに。
 無事、到着して安堵するものの、こちらは再びロックダウンに突入。幹線道路にはあちこちにガーダ(警官)が検問を行っており、なかなかに面倒。
 知人は歯の治療で免疫力が低下しているため、感染要注意にあたるので、感染者の増えているカウンティ・ドニゴールを避け、隣県リートリムのガソリンスタンドで落ち合う算段を整えました。が、マークの仕事と重なり、知人とうまく時間が折り合わず、苦肉の策、ガソリンスタンドで預かってもらおう! そんなことしてくれるのかどうか? アイルランドのことだからしてくれそう。お礼にマドレーヌをたくさん焼いて、いざ出陣。
 知人からは「預かってくれた」とメールがあり、安心したものの、どういう状況で保管されているのかはナゾ。
 以前、パブで買ったTシャツが、家に帰ってみたらギネスの大きなシミがついていて、翌日交換してもらったことがあるのですが、Tシャツはギネスを注ぐカウンターの真下に……保管する場所、他にないの??
 そういう良くも悪くもイージーな国ですので、預かっていただいてるのに不安を覚えるのは失礼と思いつつも、小包見るまで心配でした。
 幸いすべては杞憂。そのガソリンスタンドは、荷物の受け取りと保管をサーヴィスのひとつにしていたのでした。おまけに手数料もとらない。お菓子焼いてってよかった。店員さんたち「そんな、いいのに〜」と遠慮しながらも喜んでくれて。焼き菓子、作れると重宝ですよ!

 その大騒ぎの英語版ポストカード、ほんの少しだけヒマールで販売しています!!

 ご贔屓のほどを。

臨場感あふれる荷姿!


再びロックダウンのアイルランドより(チョコ・クリスピーズ)

 初ロックダウンの3月に逆戻りしています。大きな違いは、一度体験済みなので、人々に多少ゆとりが見えることと、学校を開けていること。といっても今はハロウィンをはさんだ休暇中なのですけど。

 3月のロックダウンがゆっくり解かれる夏、市井の人々の緊張も大きく緩み、近所の海岸には人があふれ「いいのか?」と思っていた矢先。ウィルスが「懲りないやつら」とあざ笑っている図が浮かんで悔しい。
 この状況が、すぐに終わると期待するからイライラするのだと思うのです。しばらく続くと観念すれば、心構えも対処方法も変わるでしょう?

 田舎で蟄居生活なので、ロックダウン前も後も、わたしの暮らしに変化はなく、ラッキーというしかありません。
 出かける先も、農場と青空マーケットなので、認められた範囲ですし、何よりソーシャルディスタンスとれまくり。

 今回のロックダウンが始まる前日のラジオ番組で、買い物客に「何を買い置きするの?」とインタビューしていたのですが、ある男性が「パジャマとスリッパ!これっきゃないでしょう、あはははは」と答えていて、超ウケまくりました。いいな〜アイリッシュのこの姿勢!

 こういうときは、買い出ししなくても作れる簡単おやつを。
 拙著「アイルランドのおいしい毎日」でも紹介したのですけど、久しぶりに作ってみてあらためて、こりゃイケる、と思ったので、再度ご紹介します、“チョコ・クリスピーズ”。
 こどものおやつですし、わたしが習ったのも当時こどもだったマークの姪っ子。でも「お!」と気づいたのは、これってグルテン・フリーなんですよね。

【材料】
クッキング・チョコレート 150g
シリアルのライスクリスピーズ 60g

 2ダースほど作れるはずです。
 もっとおいしく、と普通のチョコレートを使うとうまくいかないので、必ずクッキングチョコレートを使ってください。
 湯煎でボウルにいれたチョコをとかし、ライスクリスピーズをまぜます。湯煎のまま作業する方がうまくいきますって思うのは、寒くてどんどん固まっちゃう国にいるからかしら??
 ボウルの底の方からライスクリスピーズをかきまぜると、しゃかしゃかって音がかき氷に似ていて。最後にかき氷食べたのはいつだろう?もう夏の日本は無理っ!な体質になっているので、ずいぶん長いこと近寄っていないし。余談でした。
 オーブン用天板などにオーブンペーパーを敷き、スプーンでチョコをまぜたクリスピーズをすくって置いていきます(一口大。あまり大きいと食べにくいので)。
 わたしのレシピは、チョコをかなり薄くコーティングしているので、サクサク感を楽しんでいただけると思います。ふつうはもっと、がっちりチョコ。
 タッパやガラス瓶に入れれば翌日まではぜんぜんオッケーですが、それを過ぎるとちょっとサクサク感が減っちゃいます。食べきりサイズで作ってくださいね。



エッセイ「鯖」by Yumiko

 アイルランドでポピュラーな魚のひとつがサバ。今日は新鮮なのを見つけて爆買いしました。今、旬を迎えています。
 モーターウエイで魚を買う話は以前しましたけど、同じ幹線道路沿いに、今度は北部ドニゴールの魚売りヴァンが登場!ここから車で1時間ちょっとの距離にあるキリベグスという国内のメイン漁港からの直送です。
 いつもはスライゴータウンに近い場所で販売していて、今日わたしが見つけた(正しくはマークが発見して下見してくれた)場所は初めてのロケーションなのだそう。品揃えは素晴らしく、牡蠣、ホタテからアンコウまで様々。
 わたしの前のお客さんは、アンコウを煮込みにすると言ってたくさん買って行きました。今夜はごちそうね!と声をかけると、ありがとーと笑みを残して去って行きました。魚をちゃんと料理するアイリッシュを見ると嬉しくなるというか、安心します。老婆心。
 次はわたしの番。すごく迷ったけど、とても新鮮なサバを見ちゃったら買わずにいられません。爆買い。7尾と頼んだら、お店の気さくな兄ちゃんが「でかいから6尾でいいと思うよ。食べ過ぎさせたくないからねー」の配慮が気に入りました。ずっと昔、新橋にある老舗中華料理屋さんで、あれこれ注文したら、中国人オーナーが「そんなに食べられないと思うから」って調整してくれて、いたく感心したことがありました。儲けたかったら黙って料理を出してると思うの。でも、残したらもったいないの気持ちが感じられて、その店がさらに好きになったのでした。この魚屋さんも同じ。

 新鮮なサバは軽く小麦粉をはたいて、オリーブオイルでソテーするのがいちばんだと思っています。いいフライパンがあれば、小麦粉を省いてもオッケー。4尾はソテーにして、残り2尾はつみれ汁に。アイルランドに来なかったら、こんな面倒なことは一生しなかったと思う。面倒というと語弊がありますけれど、ちょっと手間がかかる。まだスキルがないせいかな。
 骨を避けてナイフですき身にします。フードプロセッサーを使うと身が細かくなりすぎて、わたしは好きじゃないの。ナイフでたたきにするくらいが、いい食感のつみれになると思います。
 ざっくりしたサバのすき身に、お味噌(麦味噌とか、玄米麹味噌とか、ちょっとエグいタイプ)とチャイブか小ねぎのみじん切りを混ぜ込み、沸騰した湯(昆布を入れて、沸騰する前に出すとさらにおいしくなります)の中に、スプーンですくって落としこんでいきます。サバつみれが浮いてくるまで約5分で完成。最後に醤油を入れて味をととのえたら、素晴らしいつみれ汁に。
 麺を加えるときは、塩少々と砂糖小さじ1(日本ではみりん大さじ1〜2)を足すといい感じのだし汁になります。麺は、そうめんとか細麺うどんが相性ばっちり。もちろんお蕎麦もグー。トッピングに、さらに小ねぎをてんこ盛りしてください。ほうれん草も!

追記。同じつみれをフライパンで焼いてみたら、素晴らしいサバ・バーグになりました。冷めるとちょっと魚臭くなるので、あつあつがおススメです。お弁当とかに入れるのなら、カレー粉などのスパイスを加えるといいかも。

サバのつみれ蕎麦 in アイルランド。



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