音楽生情報を現地アイルランドより

ラジオ番組が超充実している国なので、新旧とりまぜてすてきなチューンを毎日楽しんでいます。

ヒマールで詩集を出版した大御所アンディ・アーヴァインのスゥィートな歌声も頻繁に聞くことができますし、彼に影響を受けたという若手たちも続々登場。ロックダウン中に熟成したミュージシャンが、今解き放たれて見事に羽ばたいている印象です。
そんな音楽シーンをここでお伝えできたらいいなと思いつき、サバイバルキッチンからお届けすることにしました。ラジオ、台所に置いてあるので!

まずはヒマールご店主夫妻のお気に入りYe Vagabonds 。
アイルランドの離れ小島6島をめぐりながらライブ&映像収録したドキュメンタリーの一部です。場所はアラン諸島のひとつInis Meain(イニシュ・マーン)。

兄弟デュオYe Vagabonds (イー・ヴァガボンズ)は中部域Calow(カーロウ)出身。伝統音楽不毛な地と思っていたのは彼らの他にカーロウ出身ミュージシャンをまったく知らないからです。最近聞いた彼らのインタビューによれば、お母さんがドニゴールにある離れ小島Arranmore(アランモア)で育ったのだそう。ルーツは北にありました。
新曲はオリジナル曲で、今ラジオでたくさんオンエアされているところ。ぜひ日本でもお聴きいただきたいのでご紹介いたします。あえて人気テレビ番組でのスタジオライブを。

ロックダウン中に書かれた新曲は、最近亡くなったアランモアの古い友人に捧げたものだと聞きました。
番組司会者Tommy Tiernan(トミー・ティーナン)はコメディアン。音楽にも造詣が深く、フィドルの巨匠マーティン・ヘイズも何度かゲスト出演しています。
Vagabonds は、古いチューンを歌い継ぐと同時にオリジナル曲も生み出し、新たな伝統をつくっていくタイプ。アイルランドの伝統音楽は、スタイルを変えずに守り続けるのではなく、変化しながら踏襲されていく、懐の深いものなのです。

さて次は、名実ともにトップクラスのトラッド&フォークグループLankum(ランカム)。わたしも大ファン。まずはこの映像から。

バンドメンバーは4人、フルメンバーのVideoを。

ファーストアルバムからのシングル曲で、ラジオでしばしば耳にしていました。イアンとダラは兄弟で当初バンドは彼らの苗字LynchをもじってLynchedを名乗っていたのですが、デビューするにあたって“リンチ”は誤解を招くかもとLankumに改名しています。
フィドルのコーマックはスライゴーフィドル奏者の代表格Oisin Mac Diarmada(オシーン・マクディアマダ)の弟!と気づいたのはこのコラムを書いている途中のこと。他のメンバーはみなダブリン出身なので、スライゴーつながりがなんだか嬉しい。

いつもランダムにyoutubeを楽しんでいたのですが、ふと共通項に気づきました。上記したミュージシャンたちはみな同じレコード会社と契約を交わしています。偶然というか、必然。イギリスのRough Tread、インディペンデントレーベル最高峰といっていいのかな。ここがアイルランドのフォーク・シーンに貢献しているなんてちっとも知らなかった。
そしてもうひとつ。ご紹介した youtube 1つめと3つめの映像は同じ作家が撮影しています。ここしばらく、かなりたくさんの映像を観てきたのですが、ふと気づいたらすべてMyles O’Reillyの作品!彼自身もミュージシャンなので、ここでご紹介します。いい曲です。

マイルス・オライリーは、プロデューサーのドーナル・ディニーンと組んで “This ain’t no disco” というヴィデオ作品をシリーズで制作しています。わたしは見事、彼らの作品群に絡め取られていたわけで。

90年代後半にToday FMが開局し、ドーナル・ディニーンの番組は超クールで大ファンでした。デヴィッド・グレイやデヴィッド・キット、ディヴァイン・コメディら当時はまだ無名に近いミュージシャンを次々に紹介し、カルトなムーヴメントを確立したのちにテレビの新番組No Discoのパーソナリティに抜擢。これがまたテレビでは珍しい斬新な音楽番組で注目を集める最中、番組パーソナリティのひとりが事故死する悲劇が起き、立て直しを図るものの数年後に打ち切りに。やるせないエンドマークでしたが、今またドーナル・ディニーンのクリエイティヴィティに再会できたのは嬉しい驚きです。This ain’t no discoという名前には、打ち切られたNo Discoに対する思いがこめられていたのでした。

This ain’t no discoのシリーズで、Lankumのラディ・ピートとリサ・オニールのコラボレーション映像を。レコードレーベル仲間でもあり、ラディがリスペクトしているユニークなシンガー、リサが古い歌に新たな息吹を与える瞬間。

次回は、若手ミュージシャンたちに大きな影響を与え続けているアンディ・アーヴァインの歌声を!




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