Yumiko's

松井ゆみ子がアイルランドからお届けする「食」と「音楽」のこと

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2024 / 8月

フィドル合宿

地元スライゴーで開催されるサマースクールに参加してみたいと長年思っていたのですが、ようやく実現できました。
カウンティ・クレア、ミルタウンマルベイのウィリー・クランシーサマースクールを皮切りに、8月の大会フラー・キョールまでの数週間、アイルランド各地でサマースクールが開催されていきます。
スライゴーは南部タバカリーという小さな町で、ミルタウンマルベイからバトンタッチする形でスタートします。
地元といってもクリフォニーの我が家からタバカリーまでは車で小一時間。通えない距離ではないですけれど、1週間を存分に楽しみたかったので町中に宿をとり、万全の態勢で臨みました。
レッスンは月曜日から金曜日まで毎日3時間、土曜日はお昼までの2時間。お昼休みのあとにはレクチャーがあったり、練習セッションがあったり、名手たちのコンサートなどもりだくさん。町にあるパブすべて(今は4カ所)でレッスン後すぐにセッションが始まり、これは夜中まで続きます! いつもコンサートで見ているスライゴーミュージシャンたちが、ふつーに演奏していて目が離せません。
朝10時のレッスンから始まって、宿のベッドに入るのは夜中2時すぎ。タフな1週間でした・笑。

ここの伝統音楽のレッスンには基本、譜面を使いません。
五線紙の楽譜を用意してくれる場合もありますけれど、そこには微妙なリズムが刻みこめないので、使わない方が賢明なのです。
アイルランド式で、ドレミをギターのコードと同じABCに置き換えた譜面というか覚書のようなものを使うことが多いのですが、わたしはこれがまだ使いこなせず、聴いて覚える、を実践しています。それがね、めちゃくちゃ面白いのよ。集中して頭の中でメロディをなぞらえる。
脳内なのか、反射神経みたいなもので手の方が先なのか、やがてチューン(楽曲のことをこうよびます)が体内に染み込んできて弾けるようになる、そのプロセスが大好き。
今回の先生は隣県メーヨーのフィドラーDavid Doocey / デヴィッド・ドゥーシー。地味だけど(ごめんなさい!)素晴らしい演奏家です。アコースティック(音響)のいい教室で、彼の最初の演奏を間近で聞いた瞬間、このクラスでよかった!と心底思いました。もうね、ずーっと聴いていたい。
と言っても伝わりにくいでしょうから、ここで映像を。

アメリカ生まれですが、その痕跡ほぼなし。
アメリカでよく使われる「Awesome」とか言ったら別のクラスに移るつもりでしたけれど(最近はアイルランドでも耳にするけれど、”超かっこいい〜〜”みたいな軽い響きで嫌いなの・笑)、幸いDooceyは朴訥としたメーヨーらしい話し方をする人で好感度が増しました。
こんなゆったりとした包容力のある、温かいフィドル演奏、珍しいと思います。
タバカリーのサマースクールは、上級者にスライゴースタイルを習得してもらうのが大きな目標になっている印象で、ビギナークラスがありません。Improverとよばれるわがクラスがボトムで、ビギナーを少し抜け出して上を目指す人のくくりです。上のクラスはだいたいレベルが揃いますけど、ボトムクラスは見事にばらばら。それをまとめあげた先生の力量も素晴らしかった。もうね、Dooceyの大ファンです。
ここで映像もうひとつ。意外なミュージシャンとコンビを組んでいるので。

タバカリー滞在中、いちばん嬉しかったこと。
毎晩聴きに行ったセッションで、ある地元ミュージシャンから、わたしのおべんとう本(2021年にアイルランドで出版した『Yumiko’s kitchen “O’Bento”』)を買いたいと言われたとき。本を作ったことなんて話したことないのに、なぜ知ってる??と、まずびっくり。
彼のライブには何度も足を運んでいるので、そこそこ顔馴染みだったけれど、世間話をするのはいつもマークだったし。
なかよしのパブ・オーナーに進呈した拙著を自慢&宣伝してくれていたらしく、彼から聞いたのだそう。
すぐに「買わないでね!あげるから!」とミュージシャン氏に贈呈。だって彼の音楽にはたくさんのエネルギーをもらっているから。
お返しに近々のライブチケットをいただいちゃった。翻意じゃないのだけど。
後日、なかよしのパブ・オーナーに「拙著を宣伝してくれてありがとう」と言ったらば「みんな欲しがってるぜ!新刊作って日本で出版記念やろうぜ!」だって(爆笑)。
おかげさまで、おべんとう本の初版はほぼ完売です。

タバカリーの翌週は隣県リートリムのドラムシャンボー開催。同時にベルファストでもサマースクール&フェスティバル開催。
スクールメイトたちが「次はどっちに行くの?」と聞いてくるなか、わたしは自慢げに「ドニゴール」と答えたのでした。
翌々週。メーヨーのアキル島と同じ時期に開催されるドニゴールのフィドル・ウィーク。これはかなりの決断。大げさでなく。
きっついドニゴール訛り(言葉もフィドルの弾き方も!)を理解できるのか? ユニークなドニゴールチューンを万年ビギナーのわたしが学べるのか??
湧き上がる疑問に加えて、会場などの基本情報がまったく得られない謎のサマースクール。
行きましたとも。
そして。半月以上も経つ今もまだ、衝撃(いい意味の)が抜けません。
いつ消化できるのかわかりませんけれど、この体験は、あらためてゆっくり記述したいと思っています。

新たな扉を開けちゃった。

予告編として、わたしの大好きなドニゴールフィドラーのセッションシーンを。右側のフィドラー、マーティン・マッギンレー。スライゴーの誇るダーヴィッシュの創設者です。



アイルランドからの秋風と音楽の話

日本の猛暑ニュースを見るたびに、ここの涼しさを申しわけなく感じています。
今年はアイルランドも天候不順でことさらに雨が多く、うちの大家さんはまだ干し草づくりができずにいます。去年は夏前と晩夏の2回も収穫できたのに!
毎年楽しみにしている地元のトマトも、陽射しが足りないのか熟れる前に季節最後みたいな水分の少ないものになっていて残念。
グースベリーに至っては、いつも摘みに行かせてもらっている知人から、実が育たない〜と言われて今年は断念。庭のりんごはそこそこ育っているので、良しとしなきゃ。

今年は音楽満載の年にしようと思っていたのですが、期待以上に充実した日々をすごしていて、ここで少し”おすそわけ”ができたらいいなと思い、ひさしぶりにブログの更新をしました。お楽しみいただけたら嬉しいです。

キックオフは4月。オーエン・オキャノボーンから。

コンサートでの編成は、この映像で登場しているヴァイオリニスト以外の3人。オーエンをサポートするギターとチェロのコンビは、Ian Kinsella と Kaitlin Cullen -Verhanz。アメリカ出身ですが、苗字にはアイルランドの血筋らしき形跡。このコンビは現在、レジェンドグループ、デ・ダナンのメンバーとしても活動しています。
オーエンの歌、素晴らしいです。生で聴くのは初めてで、最初の一声でのけぞりました。
会場は隣県リートリムの町カリック・オン・シャノンにあるThe Dock。19世紀に建てられた元・裁判所を文化施設として活用しています。歴史を感じながら、現代で活躍する若いアーティストのステージを観るのはすてきな体験です。

オーエンのコンサートの興奮もまだ冷めやらぬ1週間後。1月のCD発売後から楽しみにしていた地元のイルンパイパー、レナード・バリーのコンサートへ。

彼の演奏はしばしばスライゴーのパブのセッションで聴いていましたけれど、コンサート会場で聴くのは初めて。あらためて素晴らしいパイパーだと実感しました。メンバーも地元でおなじみの顔ぶれですが、スライゴーのミュージシャンの質の高さに圧倒されました。
11月、レナードはギターのシェイミー・オダウド、フィドルのアンディ・モロウのトリオでリサ・オニールの出演するコンサート・イベントに参加します。絶対に観に行くんだ🎵

このあと5月、ロリー・ギャラハー・フェスティバルでギター弾きまくるシェイミー・オダウドを堪能。
そして6月。念願悲願だったYe Vagabondsのコンサートへ!(Ye Vagabonds、イー・ヴァガボンズですが、カタカナで書くとがっくりなので、英語で書きますっ)

2年前にスライゴーのライブを見逃して大後悔。今回のミニツアーではスライゴーが入っておらず、いちばん近い(車で約1時間)隣県メイヨーのキャッスルバーとロングフォードへ。この”ミニ旅”をくっつけるのは新鮮な楽しみになりました。ロングフォード。用事がなかったら、まず行きません・苦笑。
面白かったのは、出演者たちも「初めて来た」とコメントしてたこと。なのでステージのMCに少し苦労してましたけど、そこがまた微笑ましい。

今日日はCDを買うのはオンラインがメインになっていて厄介。
わたしはアマゾンを使ったことがありません。これは自慢。本は本屋さんで、CDはレコード屋さんで買う主義。
幸いスライゴーにはレコード専門店と本&アナログ盤を売るお店があるので主義を貫くことが可能ですが、それでも最近は流通が滞っていて買えないCDが増えています。残念。
次の手段はコンサート会場で買うこと。
Vagabonds のファーストアルバムは、オンライン上では売り切れになっていましたけれど、会場では買えたもん。そして、これがまたすごくいいアルバムだった。大いに得した気分。

余談。最初にキャッスルバー公演を観て、CD買う気まんまんでいたら、なんと終演後にメンバーが売りに現れた! その日は勇気がなくて購入断念。
1週間後のロングフォードはツアーほぼ最終日だったので、ここを逃したらもう買えないと意を決して本人から買いました。ヒマールに送る分も購入しているので、いずれみなさんも聴ける機会があると思います。

9月はいよいよLankumを観に!
大好きなJohn Francis Flynnのツアーも始まるし。
ずっと気になっていたDaoiri Farrell / デリー・ファレルや新星Niall McCabe / ナイアル・マッケイブも近場で観られそう。年末まで、コンサートの予定が続々。
突然発表になるミニツアーもあり、スケジュールを追いかけるのに忙しく、若いとき、『ぴあ』をくまなく見ながらコンサートに通っていた頃を思い出しました。今もおんなじじゃんね。

続編はまた後日!

猛暑、乗り切ってくださいね。
スライゴーの果ては、すでに「寒い」の範疇になっていますーー




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