わたしの“ニュー・ノーマル”は、コロナに関係なく始まっています。
スライゴーに引っ越して、食生活は劇的にレベルアップしました。毎週末、すぐ近くのオーガニックファームで野菜の箱買いをします。こんなにサラダを食べる日々は人生で初めて。様々な葉の味を楽しめて、ちっとも飽きないのです。いいオリーブオイルとレモン、はちみつのシンプルなドレッシングで、わしわしといただきます。毎回、食用の花々が混ぜてあるのも楽しくて。チャイブの花は、ちゃんとチャイブの味がするので、いい薬味になります。お刺身のツマになるな〜。
東京生まれのわたしは、野菜のことをちゃんと理解していないので、すごく勉強になります。収穫したてのにんにくなんて初めてだし。
ダブリンより少し遅れて、この界隈のレストランでもテイクアウエイ(お持ち帰り)を始めたのは、ゆるやかにロックダウン解除に向かい出した5月末だったでしょうか。いちばん近くのパブは徒歩5分。レストランも併設しているので、生ビールとおつまみのお持ち帰りができ、おうちで生ギネス、初めて堪能いたしました。楽しすぎ。おつまみのチップスも、ハラペーニョ入りのクリームコロッケも絶品。
この数ヶ月、外食や買い食いが封印されていたので、家でのおさんどんに逃げ道がなく、料理好きなわたしでも少々煮詰まっていたし「地元の経済に貢献」と理由をつけて、何度かお世話になりました。
過去含めて、お持ち帰りナンバーワンは、シーフードレストランのロブスター!
シーフード・プラッターには、他にもカニの爪、手長海老、スモークサーモンがぎゅう詰め。食べ終えた後も、カラを煮込んでスープストックを作り、翌日リゾットにしました。
このお店は、去年わたしのアイルランドでの初料理デモ(デビューです!)をさせてもらっていて、応援の気持ちもあって奮発したのですけど、おいしすぎるので、すぐさま再トライ。次はスパイシーな味付けのサバの揚げ焼きとチップス。ダブリンベイ手長海老とカニの爪は、こちらの注文ミスで2倍のポーションが入ってて驚愕しましたけど、翌日サラダにし、カラでスープストックを作り、数日分の食事に。お店の向かいが小さな漁港で、食材はすべて地元調達です。
そういうのが素晴らしいと思う。
ロックダウンで困るのって、多くは町の人たちなのでは?
このあたりでは、感染者も出なかったし、ソーシャルディスタンス(WHOで決められている1メートルより長い2メートルなのは、おしゃべりな国民性を重視したのじゃないかな。マーク見てると1メートルじゃ飛沫がかかります・苦笑)が容易く保たれるので、畑仕事などはみな、ふつうに行っていました。
スライゴーのはずれの農地は小さなところが多く、家族だけで作業するのが基本。異国から働き手を動員しないと成り立たない大型農場が、人手不足で収穫に支障がでて問題視されていましたけど、そもそもこういう小さな国で農業を大規模化する発想が合わないのではないかしら。アイルランドの農業の素晴らしい点は、量より質で、有機栽培に積極的に取り組んでいる農家が目立つところ。丁寧に作っている野菜は、純粋においしいのです。
家にいる時間、家族といる時間の増えたロックダウン中、誰しもが「家での食事」をある意味“強いられ”た結果、正しい食生活を見直すきっかけになったと耳にすることが増えています。料理が楽しくなったという声もよく聞きます。
わたしが通うようになったオーガニックファームも、ロックダウン中に顧客が激増したそう。素晴らしい。
ロックダウンのもたらしたプラス面のひとつは、活性化した“地産地消”。
アイルランドでは定着しているコンセプトですけれど、“地産”の“地”のエリアがさらに狭まったのではないかしら。
経済が好調のときは“フードマイレージ”(食材が食卓に届くまでの距離)が長くなりがちでしたけれど、国が閉ざされ、県境を越せなくなると、近場で調達せざるを得ません。いいことだと思う。手に入らないものは、口に入れようと考えなければいいんです。
ロックダウンの必要性はあったのか?って声は、なきにしもあらずなのですが、わたしは大賛成。ここで将来を考えない人は一生考えないし、未来の意味だけでなく、今必要なことも考えずにおざなりにしていると思う。
続きはまた。