Yumiko's

松井ゆみ子がアイルランドからお届けする「食」と「音楽」のこと

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baking

ミンスパイ始めました

 アイルランド人にとって、クリスマスは日本のお正月と同じで大きな年中行事です。パブが閉店するのは1年でこの日だけ(今年は超例外で閉めてることが多かったですけど)。以前はもう1日、イースター前の金曜日もパブは閉めなければならなかったのですが、こちらは去年からオープンが許されるようになったばかり。
 クリスマス前後のロックダウンは、国民の喜びと希望を失わせると配慮されたのか解除されました。でも、鎮静している状況ではないので、クリスマス後はまたロックダウンかも?と腹をくくりながらの奇妙な12月です。

 さて、通常ならば今頃は、クリスマスに向けて台所が忙しさを増すとき。
 うちはマークと2人暮らしなので、作り控えが必須。マークに「絶対食べたいのは何?」と確認するのですが、いつもトップリストはミンスパイ。オッケー、わたしも食べたいし。
 初めてミンスパイを食べたのは、マークの姉の家でクリスマスディナーをふるまってもらったとき。食後はお腹ぱんぱんだったのに、夜も更けてくる頃にはまた小腹がすいてきて……というときに登場したのがミンスパイ。オーブンから直行で、パイ型から直接サーブしてもらったような記憶が。かれこれ20数年前のことです。
 義兄は料理上手で、パイの中身ももちろんお手製。姉はパイ生地づくりが上手で、ふつうはショートクラスト・ペーストリーとよばれるビスケット生地を使うのですが、フランスにいたこともある姉のパイ生地はミルフィーユに近く、ほろほろさくさく、おまけにあつあつでおいしいのなんの。
 ミンスミートとよばれるパイの中身は、レーズンなどの干した果物、ナッツ、レモンやオレンジの皮としぼり汁、そしてたっぷりのお酒をしみこまた“餡”で、いつもわたしは“月餅”に似ているかなと思うのですよね〜。
 ミンスパイはイギリスの伝統菓子で、十字軍の遠征で中東の食べ物を元に作られたといわれています。もともとは羊肉が使われていたらしく、マークの友人も「うちのは牛ひき肉が入ってた」と言っていて、中東の羊肉を使ったパスティラのようなパイが、イギリスに渡ったのかな。
 わたしの中では月餅なんですよね〜(笑)。
 シルクロードの産物なのかもしれないと思うと、「食」ってロマンがいっぱい!

 ミンスパイの中身は日持ちするので、10月あたりに作るそう。わたしのレシピは拙著「家庭で作れるアイルランド料理」(河出書房新社)に紹介しているので、チェックしてみてください。アイリッシュの家族、友人知人にお褒めいただいております。ひとつ注釈!ミンスミート(パイの中身)12個分とありますが、作りやすい量ということで、拙著の分量だと36個作れます!

 今年は、差し上げたい人がたくさんいるので、早々に作り始めました。
 フードプロセッサーを使わないので、レーズンをちまちま刻むのが少々面倒ですけど、単純作業はきらいじゃないのでそれなりに充実。すでに6ダース焼いて、リムリックに住むマークの姉には郵送してみました。
 翌日届いて、すぐに写真とメールが送られてきて「郵便配達の人が、“まだこういうことする人がいるって、いいね〜”って感心してた」そう。さらに姉の記述に愕然。「こどもの頃、母の妹がケリーからニューブリッジにターキー郵送してきたのよ〜。包みにちょっと血が滲んでたりして」って、え?生の??他の郵便物に支障はなかったのだろうか??

 明日作る分は、隣県ドニゴールに住む兄に送る予定。
 ミンスパイはちっちゃいけど、食べ応え充分。ワインにもウィスキーにも合う大人のお菓子です。



キャロットケーキ/ carrot cake

不動の王道焼き菓子。国民みんなが好きにちがいない。

友人宅で作るのを手伝ったとき、にんじんの皮むきをひたすら続けた。こんなに使うんだ!が、まずびっくり。焼き上がりのしっとり、おいしいのにまたびっくり。量の多さにまたびっくりだったので、これは少数家族向きのバージョン。小麦粉1パックとか、書けませんもん。

「キャロットケーキ/ carrot cake」

これはミニパウンド型を使って焼いてみたもの。ふつうのパウンド型はお好きな厚みにカットしてどうぞ。

【材料】1/2パウンド型 1本分
にんじん 150g
小麦粉 130g
ベーキングパウダー 小さじ1
重層 小さじ1/2
三温糖 50g
シナモン 適量
卵 2個
オリーブオイル 100ml
ウォールナッツ 30g
レーズン 大さじ1

【作り方】
1.にんじんを粗くすりおろす。
2.小麦粉、ベーキングパウダー、重層、三温糖、シナモンとにんじんをまぜあわせる。
3.2に溶き卵、オリーブオイルを加えてさっくりまぜわせ、ウォールナッツ、レーズンも混ぜ入れた後、型に流し入れる。
4.190℃に予熱したオーブンで25分ほど焼く。

★アイシングがポピュラーなトッピングだけれど、わたしはヨーグルトに少しハチミツを加えたもので。ちょっとにんじんをトッピングにあしらうとかわいい。クリームチーズをのせたりすることもあり。トッピングはお好みで。小麦粉に全粒粉をまぜるのもいいですね。



ブラウンブレッド/ brown bread

アイルランドの伝統的な小麦全粒粉でつくるパン、ブラウンブレッドは、イーストを使わずに重曹と発酵した牛乳「バターミルク」で作る簡単かつ健康的なパンです。

バターミルクは、牛乳のうわずみ(バターのもとになるクリーム部分)のすぐ下のあたり。アイルランドでは、ブラウンブレッドを作るためのバターミルクが市販されていて、どこでも容易く買えますが、日本ではなかなかに困難。ですが、ヨーグルトで代用ができます。びっくりするほど簡単に作れますが、そこからが「伝統」の始まり。各家庭のお母さんたちが「うちの味」を作り上げて、こどもに伝承していくのです。

夫の実家ヌーナン家の味は、マークが引き継ぎました。わたしは嫁として継いでいくべきなのですけど、追求心が旺盛すぎて、いまだに自分のブラウンブレッドがつかみきれていません。あ、ふつうにというか、かなりおいしいです、念のため。でもいつも「ああしてみよう、こうしてみよう」が先に立って「これが、わたしの味」って決められないのよね〜。最近凝っているのは、近海でとれる海藻を乾燥させたものを混ぜ込むこと。

アイルランドに来始めて30年! ずいぶんたくさんのブラウンブレッドを食してきましたけれど、数年前にマークの親戚の作ってくれたものは「え、何この味??」と分析不可能なおいしさで、アイリッシュブレッドの奥の深さに愕然。ゆっくり検証して、後日確認してみたら糖蜜がキーポイントでした。

小麦粉もいろいろあるので、どれを使うかでスタイルが決まります。
小麦全粒粉といっても、粗挽きや古代小麦のスペルト、ブラン(ふすま)を加えるのか、オーツ(オートミール)を加えるのかで食感もぐっと異なってきますし。

正解はありません。そこがアイリッシュ。あなたは、どこを目指し、どこに着地するのか。あなた次第。この国のパンづくり(どの国も同じかもしれないけど)は哲学です。

ハードル上げちゃいましたけど、もとい。簡単にできるパンです。
ぜひトライしてみて、さらに “自分の味” に近づけてみてください!

「ブラウンブレッド/ brown bread」

ローフはブラウンブレッド、スライスは甘いバージョン。
ブラウンブレッドにアイリッシュチェダーのっけ。ワイルドガーリックがよく合います。
甘いバージョンをさらに進化させたもの。三温糖を小さじ2から1に減らし、オレンジマーマレード大さじ1を加えました。しっとり仕上がるみたい。ぜひお試しを。

【材料】1/2パウンド型 1本分
小麦全粒粉 160g
薄力粉 20g
重曹 小さじ1/2
三温糖 小さじ1(お好みで)
塩 (上質な海塩) 小さじ1/4
ヨーグルト 大さじ2
水 大さじ6
牛乳 大さじ2

【作り方】
1.オーブンを予熱180℃にする。
2.粉物をすべて混ぜ、次に水気もの(ヨーグルト、水、牛乳)をまぜあわえて加える。
3.型に流し込み、予熱したオーブンで30分焼く。
4.オーブンから取り出したあと、15分ほど置いて型から出す。

*オーブンによって、焼き時間は若干異なります(引っ越したての今の家のオーブンは、20分で焼けてしまうんです〜ほんとか??と心配で、余熱で10分置いておいたりしたのですが、どうもここは20分で焼けちゃうよう)。なので、オーブンから取り出したら一応、パンに竹串を刺してみて、すっと生地がついてこない状態だったら焼けてます。さらに型から出して、底をぽんぽんとたたいてみて、乾いた、いい音がしたらさらに安心。もしも心配だったら、オフにしたオーブンに5分ほど入れておくと安全です。あるいはスライスしてみてください。

★甘いバージョンは、上記の材料の小麦全粒粉160gと薄力粉20gを、薄力粉オンリーで180gにし、三温糖を小さじ2に。レーズンなどのドライフルーツを大さじ1〜2加えるのが異なるだけで、あとの材料もプロセスも同じです。ほんのり甘く、ブラウンブレッドとは一味ちがう仕上がりになるので、お試しください。

[Ingredients} Makes  1/2 pound tin 1
Wholemeal wheat flour  160g
Plain white flour 20g
Baking soda 1/2 teaspoon
Raw cane sugar 1 teaspoon (OP)
Natural  sea salt  1/4 teaspoon
Plain yoghurt  2 tablespoon
Water  6 tablespoon
Milk 2 tablespoon

1.Preheat oven to 180℃.
2.Mix flour, baking soda, sugar, salt. Then mix yogurt, water, milk, add to mixed flour. Combine well.
3.Put it into a tin, bake for 30min.
4.After taking out from the oven, leave for 15min then take the bread out from the tin.

★You can make sweet bread too. Just change the flour and amount of sugar.
Plain wheat(or Spelt) flour  180g
raw cane sugar 2 table spoon
dried fruit like raisins  1~2 table spoon
omit salt

Stay safe & keep healthy !!
Yumiko



チーズスコーン/cheese scones

カントリーマーケットなどでよく見かける、しょっぱい系のスコーンはいつも飛ぶように売れています。以前、なかよしの海藻料理研究家のワークショップを手伝ったときに作った彼女のレシピは、よく炒めたたまねぎとにんにくをたっぷり入れたタイプで、やわらかめの生地を平らにした後、型をぬかずに切り込みを入れておいて、焼いた後に切り分けるのが新鮮でした。そうすると焼かれる面が少ないので、しっとり仕上がるんですよね。

わたしのは、たまねぎを生のまま入れて、食感を残しています。チーズもすりおろさず、適当な大きさのみじん切り。5ミリほどの角切りと思っていただければ。粒マスタード入りもよく見かけます。お使いになるときは、牛乳の量を半分にして、後から様子を見て要るようなら足してください。生地がゆるくて扱いにくいときは、ちょっと薄力粉を足せば大丈夫。塩気は少なめにしています。チーズも、多くのレシピよりぐっと減らしていますが、まずはこれで作ってみてください。パルミジャーノをちょっと加えてもいいかも。

これも変幻自在なので、いろいろ遊んでくださいね!ワインのつまみにサイコーです〜

*小さな型を使っていますが、お持ちでなければ、ビンや缶などで代用できます。生地を取り出すのが若干面倒かもしれませんが、問題ないはずです!小さい方がおつまみに向くと思って!

「チーズスコーン/cheese scones」

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【材料】直径4cm 12個分
薄力粉 150g
全粒粉  50g
ベーキングパウダー 小さじ1
塩 小さじ1/4
バター 30g(かわりにオリーブオイル大さじ2でも)
たまねぎ(みじん切り) 大さじ山盛り2
チェダーチーズ 30g(みじん切り)
卵 1個+1個(スコーンの上に塗る分)
プレーンヨーグルト 大さじ2
牛乳 大さじ2

【作り方】
1.オーブンを予熱200℃に。
2.薄力粉、全粒粉、ベーキングパウダー、塩を大きなボウルでまぜる。
3.手でバター(またはオリーブオイル)を粉類とまぜあわせ、細かいそぼろ状態にする。粉がしっとりしてきたら、たまねぎとチーズを加えて、さっとまぜる。
4.溶き卵、ヨーグルト、牛乳を加えてスプーンなどでまぜあわせ、最後に手で生地にまとめる。
5.生地を平らな場所に移し、3cmほどの厚みに平たくのばす(綿棒でなく手で充分)。
6.型で抜きとり、ベーキングトレイにのせる。もうひとつの卵をとき、スコーンのてっぺんにぬり、オーブンに入れて12分焼く。

★ブラックペッパーやカイエンペッパー、マスタードシードなどを加えるのもおススメです。ローズマリーやタイムなどのハーブ(生、ドライどちらでも)も合います。
★バターのかわりにオリーブオイルで作るときは、塩を少々足してもいいかもしれません。

[Ingredients] Makes  12 small scones ( diameter 4cm)
Plain white flour (preferably spelt)  150g
Wholemeal flour (preferably spelt)  50g
Baking powder  1 teaspoon
Salt 1/4 teaspoon
Butter 30g (or Olive oil 2 tablespoon)
Onion (chopped )  2 heaped tablespoon
Cheddar cheese  30g (chopped small peaces)
Egg 1 + 1 for greasing
Yoghurt 2 tablespoon
Milk  2 tablespoon 

1.Preheat the oven 200℃.
2.Mix plain white flour, wholemeal flour, baking powder and salt in a big bowl.
3.Rub in the butter with your hand. Then add onion, cheese, mix well.
4.Add beaten 1 egg, yoghurt, milk and mix them by spoon. Finally use your hand to make a dough.
5.Flatten to the dough 3cm thick. Then stamp out round using a cutter.
6.Transfer to a baking tray. Beat the other egg and brush over the scones. Then bake for 12 min.

★You can add some spices like, black pepper, dried chili, mustard seeds etc. Fresh or dried herbs are nice too, like rosemary, thyme.

Stay safe & keep healthy !!
Yumiko



ロック・バンズ/Rock Buns

巣ごもり中(Cocooning)のアイルランドでは空前のベーキング・ブーム。小麦粉が品薄になるほどで、ビスケットにまぜるチョコチップは売り切れ続出。この国は肥満率が高くなっているので少々心配ではありますが、あまりガマンばかりじゃ気の毒なので大目に見ましょう。

バンズはお菓子の総称としてよく使われます。アイリッシュのともだちに手製のマドレーヌを持って行ったときに「posh(こじゃれた)な buns !」と言われたことも・笑

ロック・バンズはその対極にあるレトロなお菓子です。これもまた、料理本ではしばしば見かけるのに、店先で見ることの少ない一品。ロック・ケーキとかドロップ・スコーンとよばれることもあり、ビスケットよりはケーキ寄りと言えるかな。ちなみにドロップ・スコーンはフライパンで焼く小さめのパンケーキの形状の方が多い気がします。

アイルランドでもポピュラーですが、そもそもはイギリスのお菓子で、バンズのコンセプトは、小さくて丸い。固いかやわらかいかは二の次のようです。

失敗するほうがむずかしいお菓子。家中にバターのいい匂いが広がるので、巣ごもり中には最適。

「ロック・バンズ/Rock Buns」

【材料】8個分
薄力粉 100g
*買い物に大手をふって出かけられるようになったら、古代小麦のスペルトを探してみてください。ビスケットやタルト生地には最適です。グルテン分が少なく、どっしりした仕上がりに。
ベーキングパウダー 小さじ1/2
バター 40g
三温糖 40g
レーズン 大さじ1
溶き卵 1/2 個分(うずらの卵2個でもいい)
牛乳 大さじ1

【作り方】
1.オーブンを予熱200℃にする。
2.薄力粉とベーキングパウダー、バターを手でまぜて、そぼろ状態に。粉がしっとりしてきたらオッケー。
3.三温糖、レーズンを加え、卵、牛乳をまぜあわせて生地にまとめ、8等分する。
4.オーブントレイの上に(あれば)ベーキングシートをのせ、生地を丸めてならべ、上からちょいと押さえて形をととのえる。予熱したオーブンで10〜12分焼く。

ビスケットをグラス瓶に入れるのは危険。ついつい手が出て食べすぎちゃいます。好きなんだけどな〜この感じ!

[Ingredients] makes  8
Butter 40g
Plain white flour  (preferably spelt )  100g
Baking powder  1/2 teaspoon
Raw cane sugar  40g
Raisins 1 tablespoon
Beaten egg 1/2 or 2 quail eggs
Milk 1 tablespoon

1.Preheat oven to 200℃.
2.Rub butter into flour and baking powder in a bowl. When flour becomes a yellowish colour, it’s fully mixed.
3.Add sugar, raisins, beaten egg, milk, mix well. Form the dough, then make 8 small balls.
3.Put onto a baking tray. Lightly press down the top of the dough balls. Bake for 10~ 12 min.

Stay safe & keep healthy !!
Yumiko




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