Yumiko's

松井ゆみ子がアイルランドからお届けする「食」と「音楽」のこと

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2023 / 8月

必聴アイルランドのラジオ番組

アイルランドの音楽事情を知るのならラジオがいちばん。
わたしの音楽情報源はほぼ全部ラジオといってもいいくらい。今や世界中どこでも聞けるようになったのも嬉しい限り。リクエストはアイリッシュゆかりの地アメリカやオーストラリアをはじめ、ときどき日本からも。
Pod castでいつでも聞かれますから、ぜひお試しください。
まずはほぼ欠かさずに愛聴している番組から。

Late Date(RTE radio1)
https://www.rte.ie/radio/radio1/late-date/

フォーク&ロック、ときどきトラッド、古いジャズなど様々ですがセンス抜群。聞き始めて5〜6年ほど愛聴し続けています。

メインのプレゼンターはCathal Murry(カハル・マリー)。週末はホットハウスフラワーズのFichana O’Braonain=O’Brenna(フィークナ・オブレナン)。フィークナのピンチ・ヒッターをつとめるRay Cuddihy(レイ・クディヒー)。
カハルのスウィート・ボイスもすてきですが、何よりも彼の好みが驚くほどわたしと一緒。’90年代に彼が行ったコンサートの話などを聞くと、同じ時代に同じ場所で同じ音楽を共有していた模様。当時の彼はまだ10代だったそうですが……。
ピンチヒッターのレイ・クディヒーが登場して2年ほどかな。今いちばん好きなプレゼンターです。ばりばりのコーク訛りも好感度を高めています。彼はスライゴーのミュージシャン、シェイミー・オダウドやリック・エッピンの大ファン。LankumやYe Vagabonds など、ヒマールでもおなじみのグループの曲がしばしばかかります。
アンディ・アーヴァインの歌もしょっちゅう。先日は彼が在籍していたSweeny’s Menの「Sally Brown」が流れたのですが “あれ?Lankumのコーラスアレンジに似ている!?”とびっくり。Lankumのというよりはリンチ兄弟のコーラスがSweeney’s Menに大きく影響を受けている印象で。
と思っていた矢先にレイがかけたのがLankumの新曲。こういうオタクさがたまらなく楽しい。

ではここでSweeney’s Menの「Sally Brown」を。

この曲はのちにアンディが参加したPlanxtyで歌い継がれています。
楽しそうなのでこちらも。

Sweeney’s Menは正直ちゃんと聴いたことがなかったのですが、この発見であらためてちゃんと聴いてみたいと思いました。
Planxty の土台はアンディが築いていたと言えそうです。

別の日にかかったのは、UKのパンクバンド“ハーフマン・ハーフビスケット”。’90年代はじめのダブリンで、わたしの友人たちが愛聴していたバンドです。マークから教わって、結婚式でも流しました・笑
貴重なアルバムは’85年にリリースされた「Back in the DHSS」
もしもどこかで見つけたら絶対にgetしてください!必聴盤です。

長くなるので本日はこれまで。



Ballyshannon Trad & Folk Festival 2023

アンディ・アーヴァインとドーナル・ラニーのステージを観てきました!
ものすごくよかったので興奮冷めきらぬうちにお伝えしたいと思います。
バリーシャノンはカウンティ・ドニゴールにある街で、アイルランドが誇るロック・ミュージシャンRory Gallagher (ロリー・ギャラハー/ギャラガーとよぶのは英国人と外国人)にまつわる場所。毎年6月に彼のトリビュートフェスティヴァルが開催されます。
今回わたしが行ったトラッド&フォークフェスティヴァルは、ロリー・フェスの後なので以前よりも若干規模が小さくなったと聞きましたけど、大げさでない分ローカル色が濃くて、そこが素晴らしかった。地元の夏祭りにすごい出演者が登場するような感じ。

ふたりのステージは1時間ほどでしたが、濃厚なラインアップで聴きたかった歌が凝縮。ヒマール刊行のアンディ詩集のおかげで予習も充分!
歌の内容がさらに伝わって、感動が倍増しました。

「The Plains of Kildare/キルデアの平原」は、マークとわたしにとって特に思い入れの多い歌です。だって“キルデアの平原”=Curragh(カラ)はマークの実家のすぐ近く。わたしもしばらく住んでいた思い出深い場所です。
歌の舞台になっているカラ競馬場には数え切れないほど行きました。
マークが競馬専門のジャーナリストになったきっかけでもありますし。

ヒマール刊「Never Tire of The Road/旅に倦むことなし」の82ページを参照してください(学校の授業みたい・笑)
カラではダービー始めクラシックレースが開催されますが、2頭立てのレースって??と不思議だったのですが、この歌の舞台は18世紀までさかのぼるそう。歌われている馬たちはサラブレッドではなくポニーと総称される少し小さめの馬です。ポニーレースは今も健在ですが、正規の競馬とは異なります。でも“草競馬”の様相で、この歌のシーンに近いかもしれません。
アンディが参加したPlanxty/プランクシティのイルンパイプス奏者リーアム・オフリンが乗馬の名手であったことは、日本ではあまり知られていないと思います。

絶対に聞きたかったのが「A Blacksmith Courted Me/鍛冶屋に口説かれた」。Planxtyを聴き込むようになってから大のお気に入りになった1曲です。ちなみに、この歌に出てくる“鍛冶屋”は定住をしないトラベラーのことと推測しています。かつては馬車で移動しながら暮らしていて、馬の蹄鉄を直したりするために必要に迫られて身につけた鍛冶屋の技術。それが生活の糧にもなっていったのだと思います。行く先々で鉄製のものを直して生計の足しにするのです。伝統音楽に欠かせないイルンパイプスの奏者にトラベラーのバックグラウンドを持つ人は少なくありません。ティンホイッスルもそうですが、鍛冶屋の技術が楽器も生み出すのです。
詩集の中でアンディが書いているように、最後のインスト部分がまた圧巻。ドーナルが以前どこかで「ブズーキは素晴らしい楽器だよ。パーカッションにもなるしね」と言っていて「え?弦楽器が打楽器に??」と不思議に思ったのですが、彼がステージで証明してくれました。そこからグルーブが生まれるのです。たったふたりなのにバンドサウンド。すごすぎ。

本のタイトルになっている「Never Tire of The Road」はアンコールに応える形で歌われました。

アンディはまだまだツアーが続きます。
またどこかで必ずコンサートを見よう!と固く誓ったマジックナイトでした。

1976年の演奏から「The Plains of Kildare/キルデアの平原」を。
ポール・ブレイディ、ドーナル・ラニーとの演奏です。



アイルランドの夏2023

ヨーロッパの熱波もアイルランドまでは届かず、涼しい日々が続いています。世界各地で暑さ対策が叫ばれる中、ここではフリースを着込み、夜は気温が10度くらいまで下がる日もありヒーターを入れることも。
6月には雨の降らない日が2週間も続き、ファーマーたちは水やりに苦労していました。今は雨が連日続いていますけれど、作物もファーマーたちにとっても恵みの雨。降りっぱなし、止みっぱなしが交互に続くのはアイルランドの天候らしくありません。快晴が続いたときに雷雨を何度か体験しました。ここでは滅多にないことなのです。なんだか東京の夏みたいだなと思いました。地球温暖化、わたしの感覚では進んでいると実感しています。
フリーペーパー「アイルランドの風」もご好評いただいたまま今年はお休み。ブログの更新も滅多にしなかったので、忘れられてしまいそう。なので、久々の便りです。

最近、新たなお気に入りの街ができました。ウエストポート。
カウンティ・メイヨーにある観光地のひとつですが、毎日通いたいくらい何を食べてもおいしいビストロや、絶滅危機を逃れた懐かしのパブなど、居心地のよさ満点。チーフテンズのメンバー、マット・モロイのパブは有名でいつも混んでいますが、月曜日の夜に地元のミュージシャンのトラッドセッションを聴くことができました。
かつては“年金暮らしの人たちが出かける保養地”と思っていて関心がなかった街なのですけれど。待てよ、自分がそういうトシになったから居心地いいのかしら??
それだけではありません!“住みたい街No.1”に挙げられたと聞くし。
アイルランド人は基本フレンドリーですが、ウエストポートの人たちはさらに上をいく印象です。ホスピタリティーという枠を超えた地のままの人懐こさといったらいいのかな。どこに行っても会話が生まれて飽きることがないのです。

マークがほぼ月1回、仕事で通うのに便乗したのが始まりで、今や毎回くっついて行っております。彼が仕事している間はひとりで街歩きできるのも嬉しい。ずいぶん長いこと、ひとり旅をしていないので新鮮この上なし。

朝食もできるカフェがたくさんあるのでホテルの朝食はパスしてきたのですが、今回はインクルーズだったので試してみることに。そしたらこれが大当たり。メニューにキッパー(ニシンの燻製)があるっ!ほうれん草のソテーがあるのも得点高し。アイリッシュブレックファストのラインアップに緑野菜がないのはいつも少し不満だったのです。マッシュルームはポートベローとよばれるカサの大きなものなのも嬉しい。焼きトマトもつけてもらって豪華な朝食になりました。キッパーも身がほろっと崩れる、いい感じの燻製加減。あーキリッと冷えた白ワインがあったなら!
キッパーにオレンジマーマレードが合うと聞いたのは誰からだったろう。カリカリのトーストにマーマレードを塗ってキッパーをのせて食べてみると、ミルクティーが合うようになります。

おいしいものを求めて、旅は続く。

これもまたアイリッシュブレックファスト。イギリス流といっていいのかもしれませんが。ソースはベシャメルみたいなミルクっぽいもの。マッシュルームにからめていただきました。魚は絶品!



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