Yumiko's

松井ゆみ子がアイルランドからお届けする「食」と「音楽」のこと

この画面は、簡易表示です

himaar

フィドル合宿

地元スライゴーで開催されるサマースクールに参加してみたいと長年思っていたのですが、ようやく実現できました。
カウンティ・クレア、ミルタウンマルベイのウィリー・クランシーサマースクールを皮切りに、8月の大会フラー・キョールまでの数週間、アイルランド各地でサマースクールが開催されていきます。
スライゴーは南部タバカリーという小さな町で、ミルタウンマルベイからバトンタッチする形でスタートします。
地元といってもクリフォニーの我が家からタバカリーまでは車で小一時間。通えない距離ではないですけれど、1週間を存分に楽しみたかったので町中に宿をとり、万全の態勢で臨みました。
レッスンは月曜日から金曜日まで毎日3時間、土曜日はお昼までの2時間。お昼休みのあとにはレクチャーがあったり、練習セッションがあったり、名手たちのコンサートなどもりだくさん。町にあるパブすべて(今は4カ所)でレッスン後すぐにセッションが始まり、これは夜中まで続きます! いつもコンサートで見ているスライゴーミュージシャンたちが、ふつーに演奏していて目が離せません。
朝10時のレッスンから始まって、宿のベッドに入るのは夜中2時すぎ。タフな1週間でした・笑。

ここの伝統音楽のレッスンには基本、譜面を使いません。
五線紙の楽譜を用意してくれる場合もありますけれど、そこには微妙なリズムが刻みこめないので、使わない方が賢明なのです。
アイルランド式で、ドレミをギターのコードと同じABCに置き換えた譜面というか覚書のようなものを使うことが多いのですが、わたしはこれがまだ使いこなせず、聴いて覚える、を実践しています。それがね、めちゃくちゃ面白いのよ。集中して頭の中でメロディをなぞらえる。
脳内なのか、反射神経みたいなもので手の方が先なのか、やがてチューン(楽曲のことをこうよびます)が体内に染み込んできて弾けるようになる、そのプロセスが大好き。
今回の先生は隣県メーヨーのフィドラーDavid Doocey / デヴィッド・ドゥーシー。地味だけど(ごめんなさい!)素晴らしい演奏家です。アコースティック(音響)のいい教室で、彼の最初の演奏を間近で聞いた瞬間、このクラスでよかった!と心底思いました。もうね、ずーっと聴いていたい。
と言っても伝わりにくいでしょうから、ここで映像を。

アメリカ生まれですが、その痕跡ほぼなし。
アメリカでよく使われる「Awesome」とか言ったら別のクラスに移るつもりでしたけれど(最近はアイルランドでも耳にするけれど、”超かっこいい〜〜”みたいな軽い響きで嫌いなの・笑)、幸いDooceyは朴訥としたメーヨーらしい話し方をする人で好感度が増しました。
こんなゆったりとした包容力のある、温かいフィドル演奏、珍しいと思います。
タバカリーのサマースクールは、上級者にスライゴースタイルを習得してもらうのが大きな目標になっている印象で、ビギナークラスがありません。Improverとよばれるわがクラスがボトムで、ビギナーを少し抜け出して上を目指す人のくくりです。上のクラスはだいたいレベルが揃いますけど、ボトムクラスは見事にばらばら。それをまとめあげた先生の力量も素晴らしかった。もうね、Dooceyの大ファンです。
ここで映像もうひとつ。意外なミュージシャンとコンビを組んでいるので。

タバカリー滞在中、いちばん嬉しかったこと。
毎晩聴きに行ったセッションで、ある地元ミュージシャンから、わたしのおべんとう本(2021年にアイルランドで出版した『Yumiko’s kitchen “O’Bento”』)を買いたいと言われたとき。本を作ったことなんて話したことないのに、なぜ知ってる??と、まずびっくり。
彼のライブには何度も足を運んでいるので、そこそこ顔馴染みだったけれど、世間話をするのはいつもマークだったし。
なかよしのパブ・オーナーに進呈した拙著を自慢&宣伝してくれていたらしく、彼から聞いたのだそう。
すぐに「買わないでね!あげるから!」とミュージシャン氏に贈呈。だって彼の音楽にはたくさんのエネルギーをもらっているから。
お返しに近々のライブチケットをいただいちゃった。翻意じゃないのだけど。
後日、なかよしのパブ・オーナーに「拙著を宣伝してくれてありがとう」と言ったらば「みんな欲しがってるぜ!新刊作って日本で出版記念やろうぜ!」だって(爆笑)。
おかげさまで、おべんとう本の初版はほぼ完売です。

タバカリーの翌週は隣県リートリムのドラムシャンボー開催。同時にベルファストでもサマースクール&フェスティバル開催。
スクールメイトたちが「次はどっちに行くの?」と聞いてくるなか、わたしは自慢げに「ドニゴール」と答えたのでした。
翌々週。メーヨーのアキル島と同じ時期に開催されるドニゴールのフィドル・ウィーク。これはかなりの決断。大げさでなく。
きっついドニゴール訛り(言葉もフィドルの弾き方も!)を理解できるのか? ユニークなドニゴールチューンを万年ビギナーのわたしが学べるのか??
湧き上がる疑問に加えて、会場などの基本情報がまったく得られない謎のサマースクール。
行きましたとも。
そして。半月以上も経つ今もまだ、衝撃(いい意味の)が抜けません。
いつ消化できるのかわかりませんけれど、この体験は、あらためてゆっくり記述したいと思っています。

新たな扉を開けちゃった。

予告編として、わたしの大好きなドニゴールフィドラーのセッションシーンを。右側のフィドラー、マーティン・マッギンレー。スライゴーの誇るダーヴィッシュの創設者です。



アイルランドからの秋風と音楽の話

日本の猛暑ニュースを見るたびに、ここの涼しさを申しわけなく感じています。
今年はアイルランドも天候不順でことさらに雨が多く、うちの大家さんはまだ干し草づくりができずにいます。去年は夏前と晩夏の2回も収穫できたのに!
毎年楽しみにしている地元のトマトも、陽射しが足りないのか熟れる前に季節最後みたいな水分の少ないものになっていて残念。
グースベリーに至っては、いつも摘みに行かせてもらっている知人から、実が育たない〜と言われて今年は断念。庭のりんごはそこそこ育っているので、良しとしなきゃ。

今年は音楽満載の年にしようと思っていたのですが、期待以上に充実した日々をすごしていて、ここで少し”おすそわけ”ができたらいいなと思い、ひさしぶりにブログの更新をしました。お楽しみいただけたら嬉しいです。

キックオフは4月。オーエン・オキャノボーンから。

コンサートでの編成は、この映像で登場しているヴァイオリニスト以外の3人。オーエンをサポートするギターとチェロのコンビは、Ian Kinsella と Kaitlin Cullen -Verhanz。アメリカ出身ですが、苗字にはアイルランドの血筋らしき形跡。このコンビは現在、レジェンドグループ、デ・ダナンのメンバーとしても活動しています。
オーエンの歌、素晴らしいです。生で聴くのは初めてで、最初の一声でのけぞりました。
会場は隣県リートリムの町カリック・オン・シャノンにあるThe Dock。19世紀に建てられた元・裁判所を文化施設として活用しています。歴史を感じながら、現代で活躍する若いアーティストのステージを観るのはすてきな体験です。

オーエンのコンサートの興奮もまだ冷めやらぬ1週間後。1月のCD発売後から楽しみにしていた地元のイルンパイパー、レナード・バリーのコンサートへ。

彼の演奏はしばしばスライゴーのパブのセッションで聴いていましたけれど、コンサート会場で聴くのは初めて。あらためて素晴らしいパイパーだと実感しました。メンバーも地元でおなじみの顔ぶれですが、スライゴーのミュージシャンの質の高さに圧倒されました。
11月、レナードはギターのシェイミー・オダウド、フィドルのアンディ・モロウのトリオでリサ・オニールの出演するコンサート・イベントに参加します。絶対に観に行くんだ🎵

このあと5月、ロリー・ギャラハー・フェスティバルでギター弾きまくるシェイミー・オダウドを堪能。
そして6月。念願悲願だったYe Vagabondsのコンサートへ!(Ye Vagabonds、イー・ヴァガボンズですが、カタカナで書くとがっくりなので、英語で書きますっ)

2年前にスライゴーのライブを見逃して大後悔。今回のミニツアーではスライゴーが入っておらず、いちばん近い(車で約1時間)隣県メイヨーのキャッスルバーとロングフォードへ。この”ミニ旅”をくっつけるのは新鮮な楽しみになりました。ロングフォード。用事がなかったら、まず行きません・苦笑。
面白かったのは、出演者たちも「初めて来た」とコメントしてたこと。なのでステージのMCに少し苦労してましたけど、そこがまた微笑ましい。

今日日はCDを買うのはオンラインがメインになっていて厄介。
わたしはアマゾンを使ったことがありません。これは自慢。本は本屋さんで、CDはレコード屋さんで買う主義。
幸いスライゴーにはレコード専門店と本&アナログ盤を売るお店があるので主義を貫くことが可能ですが、それでも最近は流通が滞っていて買えないCDが増えています。残念。
次の手段はコンサート会場で買うこと。
Vagabonds のファーストアルバムは、オンライン上では売り切れになっていましたけれど、会場では買えたもん。そして、これがまたすごくいいアルバムだった。大いに得した気分。

余談。最初にキャッスルバー公演を観て、CD買う気まんまんでいたら、なんと終演後にメンバーが売りに現れた! その日は勇気がなくて購入断念。
1週間後のロングフォードはツアーほぼ最終日だったので、ここを逃したらもう買えないと意を決して本人から買いました。ヒマールに送る分も購入しているので、いずれみなさんも聴ける機会があると思います。

9月はいよいよLankumを観に!
大好きなJohn Francis Flynnのツアーも始まるし。
ずっと気になっていたDaoiri Farrell / デリー・ファレルや新星Niall McCabe / ナイアル・マッケイブも近場で観られそう。年末まで、コンサートの予定が続々。
突然発表になるミニツアーもあり、スケジュールを追いかけるのに忙しく、若いとき、『ぴあ』をくまなく見ながらコンサートに通っていた頃を思い出しました。今もおんなじじゃんね。

続編はまた後日!

猛暑、乗り切ってくださいね。
スライゴーの果ては、すでに「寒い」の範疇になっていますーー



アナログレコードと蔵書

もっと早くにお知らせするつもりだったのですけれど、ヒマールご店主ご夫妻もご多忙でしたし(大きな言い訳!)わたしもイベントごとが多くて出かけまくっていました。
面白い話がたくさんあるので、それはまたあらためて。

去年の東京滞在中、西荻の実家にあったアナログ・レコードと本を引き取ってもらいました。すてきなお店ばかりなので、ぜひいらしてみてください。

・RANA-MUSICA   RECORD STORE
世田谷区代沢5-28-12 フジタビル2A
03-6450-9931

わたしの父親はレコード会社に勤めていました。定年退職後の再就職先もレコード会社で通算50年以上。なので家には、父が仕事で関わった作品に加えて趣味で集めたレコードなどなどが約3,000枚!
実家を手放すにあたって、このレコードたちをどうするかが最大の懸案事項でした。幸い、実家のように親しくさせていただいている隣家のお嬢さん、かなちゃんが、下北沢でレコード屋さんを営んでいるおともだちの、りょうちゃんを紹介してくれて、めでたく全て引き取ってもらいました。
売るのがむずかしいであろう作品もあったのに「破棄するのは忍びないですから」と、太っ腹かつ音楽に対しての温情あっての措置で、すごく感謝しています。
昨今のアナログ盤の再ブームがなかったら、無理だったかもしれません。
聴く方が増えたことにも感謝しつつ、家から旅立ち、再び愛聴してもらえることを願っています。

・Robbin’s nest

弘前にあるアイリッシュパブで、オーナーの翔一くんが収集しているアナログ盤を聴くことができますが、そこに我が家のコレクションも入れてもらいました。

・音羽館

西荻にある老舗の古書店です。ほとんど押しかける感じで本を持って行ったのですが、すでに書棚にアイルランド本があるのを発見(笑)。
ご店主さん、ティンホイッスルを習っていらしたそうで!
ふだんはあまり扱われない洋書まで引き受けていただきました。
品揃えがすごいので、ぜひいらしてみてくださいね。

・STORY’s 落合慎二さん

大崎シャノンズでイベントをさせていただいたときに、オーナーの福井ゆうこさんにご紹介いただき、書籍をたくさん引き取っていただきました。
売り物にはなりそうもないけれど、ご趣味と言ってくださったレコードもお持ちいただいて。
お会いしたのは、拙宅に下見に来てくださったときだけで「次回の東京滞在中にはぜひお店にうかがいますね」と約束していたのに、今年1月に急逝され、再会は叶わなくなってしまいました。
わたしの持っていた「ライ麦畑でつかまえて」(白水社刊)を「ぜひ」とリクエストいただいたとき、すでに誰もが持っている本なのに売れるのかな?と不思議だったのですが、愛読書なのだそうで、ご自分のためだったのかも。今頃、読んでいらっしゃるのだといいな。

千葉ライブハウスANGAのオーナー、なおみちゃんには家具と食器をたくさん引き取ってもらいました。もうオープンしたのかな?なおちゃんのおばんざいをふるまう居酒屋さんで、うちの食器に遭遇できるはずです。

 ”家仕舞い”の作業の大半は家財道具の処分。捨てる作業が主で、それってかなりエネルギーを要します。愛着のあるものたちをどなたかが引き取ってくださると、作業はぐっとポジティブなものに変化。
多くの友人知人たちに助けられました。この場を借りてお礼申しあげます。

ヒマールにも多くのCDや書籍を救ってもらいました。
「次に日本に行くときまでとっといて!」とお願いしているCDたちは、いずれなんらかの機会に、みなさんにお聴かせしたいと思っています。
もう手に入らないものも多いのです!

上記のお店、住所などはググれるので手抜きでほぼ割愛いたしました。陳謝。


  • カテゴリー:

遅ればせのお礼 from Ireland

2ヶ月の東京滞在から真冬のアイルランドに無事帰還いたしました。
4年半ぶりのニッポンは、なかなかに新鮮で観光客気分を味わいました。
不思議な感覚です。
11月に開催した大崎シャノンズと新橋Man in the Moonでのイベントは、おかげさまで満員御礼。ご来場くださった方々と、すてきな会場のパブふたつ、コラボしてくださったフィドルの小松大さん、ギターの長尾晃司さん、ほんとうにありがとうございました。
ヒマールのご店主、辻川ご夫妻は岩国からお手伝いに駆けつけてくださって、5年ぶり?に再会できました。イベント後にたっぷりおしゃべり♬
今回の滞在は、ごく個人的なミッションがあって自由時間はあまりとれないと覚悟していたのですが、思いがけずたくさんの友人たちと会う機会に恵まれて楽しい時間を過ごすことができました。
幸い“ミッション限りなくインポッシブル”も達成し、クリスマス直前のアイルランドに滑り込み。
夫マークもなんとか生き延びてくれていましたが、冷蔵庫は見事に空っぽ。食料の大買い出しからここでの日常が再開しました。
待ち構えていた新たなミッションのクリスマスディナーは下ごしらえの少ないローストビーフをチョイス。小さめの肉を注文したのですけど、いちばん小さいブロックが2キロ!二人暮らしなんですけどーー
おまけに大きな骨つきで焼き付けるのに四苦八苦。いちばん大きな厚手鍋にも収まらず、押し込みながら焼く始末。重いのでひっくり返すのも一苦労でした。オーブンでの焼き時間も、ほとんどのレシピは1キロの肉用なので結局当てずっぽう(苦笑)。それでもなんとかなるのがオーブン料理のいいところ。かなり野蛮な見た目のローストビーフでしたけれど、味は絶品。
元旦まで食べられそうと思う量でしたが、案外すぐに食べきっちゃえそう。それもオソロシイことですが!

今回の帰り道には初めて、アイルランド北西部にある小さなノック・エアポートを利用しました。スライゴーからは1時間の距離なので、ダブリンを利用するよりもずっと便利なのです。今年春にロンドン・ヒースロー行きが就航するようになり東京までのフライトがつながるように。ただ、1日1便しかないので万が一フライトがキャンセルになると、行きのチケットはすべておじゃん。誰もが「長距離便につなげるのはリスクが高すぎ」と言うので、ならば往路に。これがねー、サイコーでした。
ノックエアポートは地元メーヨーの神父さんの悲願で開設されたもの。
聖地ノック山とヨーロッパ各国の聖地をつなげたいという思いと、アイルランドのなかでも特に多くの移民を送り出したメーヨーにまた彼らが帰って来られるように玄関口を作りたいという、ふたつの理由があったのだそうです。実際、わたしが搭乗したフライトはクリスマスを控えて満席。隣の席はカナダ移民のメーヨー男性でした。
いいなと思ったのは、隣り合わせになった人たちがすぐにお喋りをはじめて機内ががやがや(笑)。以前はダブリン行きのフライトもこんな感じだったなーと思い出しました。今は外国人やビジネスで利用する人たちが増えたせいか機内は静かになった印象。
ノック行きは帰省列車のような高揚感にあふれ、そうだ、わたしもアイルランドに帰る移民だったと思い出しました(笑)。
隣の席と、さらにその隣の席のおばさんと3人で、機内で買ったドリンクで乾杯「Happy Xmas !!」
ダブリンを通過し、西へ向かう飛行機からずっと、眼下に広がるアイルランドの景色を眺められたのも初めての体験でした。

帰国の翌日から天気は大荒れ。海は白波がたって怖いくらいですし、強風は家を揺るがすかのよう。海鳴りと風の吠える音に「ああ、帰ってきた」と妙な安堵感を覚えたりして(笑)。
そんな中でもノックに着くフライトはキャンセルにならなかったようですが、遅れはあった様子。わたしはかなりラッキーでした。
クリスマスは若干おだやかさが戻りましたけれど、寒さも戻ってきました。とはいえ例年よりは暖かいですが、東京よりは寒いですっ。

ここのクリスマスは日本の元旦に似て、静かでおだやかな1日を家で家族と過ごします。東京の喧騒から離れたばかりなのでことさら、クリスマス休暇をしみじみと味わっております。
日本が元旦を迎える頃、アイルランドには普段の喧騒が戻ります。
来年はどんな風に生きようかな。
静かなときに、あれこれ夢想するのが大好き。

みなさまも、どうぞよいお年をお迎えくださいませ!!

大崎シャノンズにて。イベントをアレンジしてくださったフィドル奏者の小松大さんと。


続・イベント「アイリッシュネスへの扉」

前回に続き、11月に東京で開催のイベント、2日目(11/19)へのお誘いです。

2日目は、新橋Man in the Moonにて。
この日は写真をご覧いただきながら、今わたしが住んでいるクリフォニーヴィレッジの田舎暮らしを中心に、食文化寄りの話題をとりあげたいと思っています。

ご店主の山田さんはまだお会いしていないのですけれど、かつてコークの老舗パブで修業していらしたという強者。短いですけど対談させていただきます。超楽しみ!
行ったことあるんだもーん、その老舗パブ。盛り上がり必須。

今わたしが住んでいる小さなヴィレッジは、個性の強い人たちの集まりで、ひそかに「やかまし村の“大人たち”」とよんでいます(笑)。
「北の国から」にも十分に似てるし「プロヴァンスの12ヶ月」にも負けない。ここでは誰でも1冊、本が書けると思います。

拙著「アイリッシュネスの扉」を書いた家はイギリスの上流階級者の家でしたけれど、今住んでいる家は元農家(今も半ば現役ファーム)。正しい場所に行き着いた気がしています。そんな話も19日に。

2日間のこのイベントをいちばん楽しみにしているのは、実はわたしだったりして!?
おすそわけできれば幸いです!!

イベント2日目の詳細・ご予約はこちらで!
https://odeinc.jp/6869/



イベント「アイリッシュネスへの扉」

11月18日(土)と19日(日)の2日間、都内のアイリッシュパブ2カ所でイベントを開催することになりました。
フィドル奏者の小松大さんとのコラボレーションです。光栄!

なにせ4年ぶりの日本です。完全な浦島太郎状態。
その分、すっかりアイルランド地元民になっていますので、レアな話題をたくさんご披露できると思います。

1日目は大崎シャノンズにて。
拙著料理本「家庭で作れるアイルランド料理」を出版したあとにイベントをさせていただいたことがあり、再訪できるのは感無量です。
今回はお店の自慢料理を召し上がっていただいて、わたしはお料理にまつわる小話などをご紹介いたします。
この日のイベントのテーマは「音楽」。小松さんとのコラボですから!
セッション会を謳っていますけれど、楽器なしの参加も大歓迎。パブのセッション、聞いてくれる人がいないと始まりません。アイルランド流は、弾く人も聴く人も、それぞれが各々楽しむ大人の集まり。聴き手はおしゃべりに忙しいし、弾き手は聴き手ほぼ無視で演奏を楽しんでるし!それこそがアイルランド。垣根もなければ、流儀もなし。いいでしょう?笑

わたしは去年のクリスマスあたりから、地元パブの“スロー・セッション”に参加してフィドルを弾いています。早弾き厳禁。でもリズムには厳しいユニークな集まりで、仲間と一緒に演奏する楽しさを初めて味わっています。
そんな感じを東京で再現できたらいいなと思って、シャノンズでのイベントを企画しました。小松さんのリードがあって初めて成り立つセッションです。
わたしは万年ビギナーを自認していますが、アイルランドの伝統音楽は実践でしか学べません。セッションに参加しないと上達しない、と何度も言われてきましたけれど飛び込む勇気がなく。ようやく地元の仲間たちに引っ張り出されて一緒に演奏するように。楽しいのはもちろんですが、漠然と描いていた「アイルランド伝統音楽」が、ぐっと身近なものになってきています。
演奏する機会って、そんなに容易く見つからないでしょう?と思ったので、このイベントを活用してもらえたらいいなあと願っています。セッションでのチューン3つも、意味あって選びました。
一見“ベタ”な印象のチョイスですけれど、アイルランド伝統音楽の奥深さを少しでもお伝えできたら幸い。まだ勉強中の身ですが!

強調しておきますね!
楽器なしでも充分にお楽しみいただけるイベントです。

願わくば。「楽器、トライしたくなっちゃった」と思っていただけると嬉しいな。
長くなっちゃったので、2日目のイベントについては次回あらためて!

イベント(1日目)の詳細・ご予約はこちらで!
https://odeinc.jp/6864/



必聴アイルランドのラジオ番組

アイルランドの音楽事情を知るのならラジオがいちばん。
わたしの音楽情報源はほぼ全部ラジオといってもいいくらい。今や世界中どこでも聞けるようになったのも嬉しい限り。リクエストはアイリッシュゆかりの地アメリカやオーストラリアをはじめ、ときどき日本からも。
Pod castでいつでも聞かれますから、ぜひお試しください。
まずはほぼ欠かさずに愛聴している番組から。

Late Date(RTE radio1)
https://www.rte.ie/radio/radio1/late-date/

フォーク&ロック、ときどきトラッド、古いジャズなど様々ですがセンス抜群。聞き始めて5〜6年ほど愛聴し続けています。

メインのプレゼンターはCathal Murry(カハル・マリー)。週末はホットハウスフラワーズのFichana O’Braonain=O’Brenna(フィークナ・オブレナン)。フィークナのピンチ・ヒッターをつとめるRay Cuddihy(レイ・クディヒー)。
カハルのスウィート・ボイスもすてきですが、何よりも彼の好みが驚くほどわたしと一緒。’90年代に彼が行ったコンサートの話などを聞くと、同じ時代に同じ場所で同じ音楽を共有していた模様。当時の彼はまだ10代だったそうですが……。
ピンチヒッターのレイ・クディヒーが登場して2年ほどかな。今いちばん好きなプレゼンターです。ばりばりのコーク訛りも好感度を高めています。彼はスライゴーのミュージシャン、シェイミー・オダウドやリック・エッピンの大ファン。LankumやYe Vagabonds など、ヒマールでもおなじみのグループの曲がしばしばかかります。
アンディ・アーヴァインの歌もしょっちゅう。先日は彼が在籍していたSweeny’s Menの「Sally Brown」が流れたのですが “あれ?Lankumのコーラスアレンジに似ている!?”とびっくり。Lankumのというよりはリンチ兄弟のコーラスがSweeney’s Menに大きく影響を受けている印象で。
と思っていた矢先にレイがかけたのがLankumの新曲。こういうオタクさがたまらなく楽しい。

ではここでSweeney’s Menの「Sally Brown」を。

この曲はのちにアンディが参加したPlanxtyで歌い継がれています。
楽しそうなのでこちらも。

Sweeney’s Menは正直ちゃんと聴いたことがなかったのですが、この発見であらためてちゃんと聴いてみたいと思いました。
Planxty の土台はアンディが築いていたと言えそうです。

別の日にかかったのは、UKのパンクバンド“ハーフマン・ハーフビスケット”。’90年代はじめのダブリンで、わたしの友人たちが愛聴していたバンドです。マークから教わって、結婚式でも流しました・笑
貴重なアルバムは’85年にリリースされた「Back in the DHSS」
もしもどこかで見つけたら絶対にgetしてください!必聴盤です。

長くなるので本日はこれまで。



Ballyshannon Trad & Folk Festival 2023

アンディ・アーヴァインとドーナル・ラニーのステージを観てきました!
ものすごくよかったので興奮冷めきらぬうちにお伝えしたいと思います。
バリーシャノンはカウンティ・ドニゴールにある街で、アイルランドが誇るロック・ミュージシャンRory Gallagher (ロリー・ギャラハー/ギャラガーとよぶのは英国人と外国人)にまつわる場所。毎年6月に彼のトリビュートフェスティヴァルが開催されます。
今回わたしが行ったトラッド&フォークフェスティヴァルは、ロリー・フェスの後なので以前よりも若干規模が小さくなったと聞きましたけど、大げさでない分ローカル色が濃くて、そこが素晴らしかった。地元の夏祭りにすごい出演者が登場するような感じ。

ふたりのステージは1時間ほどでしたが、濃厚なラインアップで聴きたかった歌が凝縮。ヒマール刊行のアンディ詩集のおかげで予習も充分!
歌の内容がさらに伝わって、感動が倍増しました。

「The Plains of Kildare/キルデアの平原」は、マークとわたしにとって特に思い入れの多い歌です。だって“キルデアの平原”=Curragh(カラ)はマークの実家のすぐ近く。わたしもしばらく住んでいた思い出深い場所です。
歌の舞台になっているカラ競馬場には数え切れないほど行きました。
マークが競馬専門のジャーナリストになったきっかけでもありますし。

ヒマール刊「Never Tire of The Road/旅に倦むことなし」の82ページを参照してください(学校の授業みたい・笑)
カラではダービー始めクラシックレースが開催されますが、2頭立てのレースって??と不思議だったのですが、この歌の舞台は18世紀までさかのぼるそう。歌われている馬たちはサラブレッドではなくポニーと総称される少し小さめの馬です。ポニーレースは今も健在ですが、正規の競馬とは異なります。でも“草競馬”の様相で、この歌のシーンに近いかもしれません。
アンディが参加したPlanxty/プランクシティのイルンパイプス奏者リーアム・オフリンが乗馬の名手であったことは、日本ではあまり知られていないと思います。

絶対に聞きたかったのが「A Blacksmith Courted Me/鍛冶屋に口説かれた」。Planxtyを聴き込むようになってから大のお気に入りになった1曲です。ちなみに、この歌に出てくる“鍛冶屋”は定住をしないトラベラーのことと推測しています。かつては馬車で移動しながら暮らしていて、馬の蹄鉄を直したりするために必要に迫られて身につけた鍛冶屋の技術。それが生活の糧にもなっていったのだと思います。行く先々で鉄製のものを直して生計の足しにするのです。伝統音楽に欠かせないイルンパイプスの奏者にトラベラーのバックグラウンドを持つ人は少なくありません。ティンホイッスルもそうですが、鍛冶屋の技術が楽器も生み出すのです。
詩集の中でアンディが書いているように、最後のインスト部分がまた圧巻。ドーナルが以前どこかで「ブズーキは素晴らしい楽器だよ。パーカッションにもなるしね」と言っていて「え?弦楽器が打楽器に??」と不思議に思ったのですが、彼がステージで証明してくれました。そこからグルーブが生まれるのです。たったふたりなのにバンドサウンド。すごすぎ。

本のタイトルになっている「Never Tire of The Road」はアンコールに応える形で歌われました。

アンディはまだまだツアーが続きます。
またどこかで必ずコンサートを見よう!と固く誓ったマジックナイトでした。

1976年の演奏から「The Plains of Kildare/キルデアの平原」を。
ポール・ブレイディ、ドーナル・ラニーとの演奏です。



アイルランドの夏2023

ヨーロッパの熱波もアイルランドまでは届かず、涼しい日々が続いています。世界各地で暑さ対策が叫ばれる中、ここではフリースを着込み、夜は気温が10度くらいまで下がる日もありヒーターを入れることも。
6月には雨の降らない日が2週間も続き、ファーマーたちは水やりに苦労していました。今は雨が連日続いていますけれど、作物もファーマーたちにとっても恵みの雨。降りっぱなし、止みっぱなしが交互に続くのはアイルランドの天候らしくありません。快晴が続いたときに雷雨を何度か体験しました。ここでは滅多にないことなのです。なんだか東京の夏みたいだなと思いました。地球温暖化、わたしの感覚では進んでいると実感しています。
フリーペーパー「アイルランドの風」もご好評いただいたまま今年はお休み。ブログの更新も滅多にしなかったので、忘れられてしまいそう。なので、久々の便りです。

最近、新たなお気に入りの街ができました。ウエストポート。
カウンティ・メイヨーにある観光地のひとつですが、毎日通いたいくらい何を食べてもおいしいビストロや、絶滅危機を逃れた懐かしのパブなど、居心地のよさ満点。チーフテンズのメンバー、マット・モロイのパブは有名でいつも混んでいますが、月曜日の夜に地元のミュージシャンのトラッドセッションを聴くことができました。
かつては“年金暮らしの人たちが出かける保養地”と思っていて関心がなかった街なのですけれど。待てよ、自分がそういうトシになったから居心地いいのかしら??
それだけではありません!“住みたい街No.1”に挙げられたと聞くし。
アイルランド人は基本フレンドリーですが、ウエストポートの人たちはさらに上をいく印象です。ホスピタリティーという枠を超えた地のままの人懐こさといったらいいのかな。どこに行っても会話が生まれて飽きることがないのです。

マークがほぼ月1回、仕事で通うのに便乗したのが始まりで、今や毎回くっついて行っております。彼が仕事している間はひとりで街歩きできるのも嬉しい。ずいぶん長いこと、ひとり旅をしていないので新鮮この上なし。

朝食もできるカフェがたくさんあるのでホテルの朝食はパスしてきたのですが、今回はインクルーズだったので試してみることに。そしたらこれが大当たり。メニューにキッパー(ニシンの燻製)があるっ!ほうれん草のソテーがあるのも得点高し。アイリッシュブレックファストのラインアップに緑野菜がないのはいつも少し不満だったのです。マッシュルームはポートベローとよばれるカサの大きなものなのも嬉しい。焼きトマトもつけてもらって豪華な朝食になりました。キッパーも身がほろっと崩れる、いい感じの燻製加減。あーキリッと冷えた白ワインがあったなら!
キッパーにオレンジマーマレードが合うと聞いたのは誰からだったろう。カリカリのトーストにマーマレードを塗ってキッパーをのせて食べてみると、ミルクティーが合うようになります。

おいしいものを求めて、旅は続く。

これもまたアイリッシュブレックファスト。イギリス流といっていいのかもしれませんが。ソースはベシャメルみたいなミルクっぽいもの。マッシュルームにからめていただきました。魚は絶品!


デーツ&ウォールナッツ・ケーキ

ぐっと春めいてきた今日この頃。まだ寒さが戻る日もありますけれど、陽射しが力強くなり、子羊たちが放牧されているのを見かけました。
クリフォニーのカントリーマーケットもホリデータイムを終えて再開したばかり。2023年最初のマーケットは、今年初めて加わった祝日“セント・ブリジッドズデー”の連休と重なったこともあって大賑わいでした。
わたしの人気商品だった“ベジ・スシ(野菜入り海苔巻き)”は衛生局のルールがきびしくて、やむなく敗退。今もお客さんたちから「残念〜」と惜しむ声をいただいております。でも正直、仕込みがたいへんだったので少し肩の荷を降ろした気分もあり。しかしながら“ベジ・スシ”に代わるものがなかなか見つからず試行錯誤を続けています。
そんななかで思いがけずプチ・ヒットしているのが「デーツ&ウォールナッツ・ケーキ」。ずっと前にファーマーズマーケットのパン屋さんでアルバイトしていたときに初めて知ったクラシックな焼き菓子で、地味な体裁なのに不動の人気だったことを思い出し、試しに作ってみたら大当たり。といっても1回のマーケットで売るのは2〜3本ですが、開店早々に売り切れるのは嬉しいことです。
わたしの商品ラインアップは、このケーキの他にバナナケーキ、グルテンフリーのアーモンドケーキ、最近作り始めて好評な海藻入りパンetc 。
先輩ベイカーたちが、自然酵母パンをはじめブラウンブレッドやスコーン、アップルパイなどの人気定番を押さえているので、かちあわないように売れ筋を作るのは容易いことではないのです。でもそこがまた醍醐味でもあるのですが。異国人のわたしが作るのですからユニークなものを紹介したい、と欲があります。まだまだ模索中ですが。
この小さなヴィレッジでは食べ物に関してとても保守的な人たちが多く、あまり冒険できないのも事実。そんななかで海苔巻きが飛ぶように売れたのは奇跡に近かったのです。あるいは“寿司”がそんな保守的な人たちにも興味をそそらせる食べ物になっていたということなのかな。
満々の自信で出した“オニオン・タルト”が最後の最後まで売れ残って、えらく悲しい思いをしたことも。おいしいのに!!
「ユミコ、あれは無理よ。ここの人たちにはエイリアン」。
的確なアドヴァイスでした。

では人気商品、デーツ&ウォールナッツ・ケーキのレシピをご紹介します。

「デーツ&ウォールナッツ・ケーキ」

【材料】1 パウンド型 
デーツ 100g
*マジョール(medjoul)デーツのセミ・ドライが理想的です。乾燥した小さいデーツしか入手できないときのヒントはレシピ内で。
重曹 小さじ1と1/2
濃いめにいれた紅茶 100ml
バター 40g
三温糖 70g
薄力粉 125g
ウォールナッツ 25g
卵 1個
*お好みでナツメグ、シナモンなど。

【作り方】
1.デーツの種をとって重曹とともにボウルに入れて紅茶を注ぎ、10分おく。
*乾燥したデーツは長めに20分ほどおく。
2.バターと三温糖をクリーム状にまぜる。
3.2に薄力粉、ウォールナッツ、スパイスなどを加え、1と溶き卵を加えてさっくりまぜあわせて型に入れる。
4.180℃に予熱したオーブンで35〜40分焼く。

しっとりした、ちょっと和風ともいえる自然な甘さのケーキです。
レモンの皮のすりおろしを入れるレシピもあります。
紅茶と重曹の力でふっくら、失敗なくできますのでぜひお試しくださいね〜〜

ゆみ子さんからのおまけ写真「出荷待ちの商品たち」。
どれもおいしそう〜!近所に売りに来てほしいです!!(編集部)



top