Yumiko's

松井ゆみ子がアイルランドからお届けする「食」と「音楽」のこと

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サバイバル・クッキング復活:猛暑中の台所仕事応援 “火を使わない料理”

先日、ワカモーレのレシピをお送りしたときに、ヒマールじゅんこ編集長から「火を使わないレシピ、ありがたい〜〜」とリアクションがあり、もう少し追記することにしました。お役に立てたら嬉しいです。

*ライスヌードル
アイルランドではなかなか春雨を買うことができないので、ライスヌードルで代用することが増え、すっかりファンになっています。
茹でずにすむので、日本の猛暑日にご活用いただければ。
常備しているのは細いヴァーミチェリタイプの方。
1人分100g、ボウルなどに入れて熱湯を加え、お皿などでフタして5分。
ビーフンなど炒めるときは少し硬めでもOKですけれど、サラダ仕立てにするときは、やわらかめに。ざるなどに入れて水にさらします。
水気をよく切ってからボウルに入れて味付けを。
うちでは、ゴマ油、バルサミコ酢、醤油、レモンのしぼり汁、塩がベース。
春雨サラダの要領です。少し甘めにしたいときはハチミツを。
コチュジャンをまぜたり、ゴマ油をオリーブオイルに変えたり。

*トッピング用野菜
キャベツの千切りを軽く塩もみして冷蔵庫に入れておくと、さっと使えて便利です。キューリも同様に。塩はもみこまず、からませるくらいにすると水っぽくなりすぎず。
にんじんも千切りにしてゴマ油かオリーブオイルをからませておきます。
小ネギは小口切りにしてガラス瓶にいれるか、冷凍しています。
すこーし香りが抜けますけれど、毎回みじん切りするよりは手軽でしょう?

*若干、火を使って。
豚肉や牛肉の薄切りは、少なめの熱湯でさっと茹で、氷水でしめます。
ゴマ油かオリーブオイルとバルサミコでマリネにしておくと重宝。
サラダにするときはレタスよりもキャベツで。暑いときこそ栄養を!

*夏の調味料
日本にいたときは黒酢のいいものを常備していましたが、ここではバルサミコ酢を多用しています。醤油との相性がいいので、お肉や魚のソースにしたり。
バルサミコ酢、お値段ピンキリですが、安いので大失敗したことがあるので、そこそこ奮発。うちではアイルランド産のアップルサイダーヴィネガーから作られたバルサミコ酢を愛用(どういう工程で作られているのかよく知らないので学習しなきゃ)。こっくりしていて、おいしいです。
イタリア産の熟成バルサミコ酢に近く、アイスクリームにかけて食べられる感じ。これさえあれば、サラダドレッシングに困りません。
そうめんにも、蕎麦サラダにも使えます。
日本では上質のめんつゆを買えますもんねーー
こういう言わば”非常時”では、できあいの調味料をいくつかそろえておくといいと思います。
めんつゆ、ごまダレは必須ですよね。これにコチュジャンか豆板醤があればバリエーションがぐんと増えます。
うちでは自家製コチュジャンもどき。お味噌(これは入手しやすくなりました)にニンニク、ショーガ、ハチミツ、チリパウダーを加えて、それらしい味にしています・笑
トマトペーストをまぜると色よく仕上がる!
ニンニク醤油やショーガ醤油、ショーガの味噌漬けも、ちょこっと作り置きしておくと重宝です。

*茹で時間が短いパスタ(エンジェルヘアなど)もいいと思います。
日本にいたときは、サラスパでしたっけ?細くて短いやつをときどき使っていました。滞在期間が短いときに使いきりやすかったのね。
茹で時間5分足らずだと思います。茹でたら水でさらし、ボウルに入れて。
オリーブオイルとレモン、ハチミツ少々、マヨネーズ少々で和えます。
混ぜ合わすのは、たまねぎの薄切りとキューリ、ざく切りトマト(タネとって)。
一気に作って、ちまちま食べていました。
りんごの千切りとセロリなどを入れてもいいですね。カサも増えるし・笑

*小さめのサーディンの缶詰
5センチほどの小さなサーディンのオイル漬け、ありますよね?
アイルランドでも同様のもが買えるようになり、おつまみに活用しています。
底が平らでやや深めのお皿に、まずたまねぎの薄切りをしきつめます。
そこにサーディーンを並べ、缶のオイルも注ぎ、バルサミコ酢と醤油少々を加え15分ほど置きます。途中で一度、底にあったたまねぎスライスをサーディーンにのせ、マリネ液がいきわたるように。
ワインのアテにぴったり!
レモンの絞り汁だけでもいいかもしれません。

塩漬けアンチョビもサラダに活躍しますので、あると便利。
まずはこんなとこかしら。

いやもう気温40度近いって、非常時ですよね!
ニンゲンそのものだって体温40度は重篤ですもの。
地球が病んでいて高熱を出している、という気がしてなりません。

ご自愛くださいね!!

ゆみこ



夏の定番スナック、ワカモーレ

日本の”猛暑、酷暑”のニュースを見るたびに、申しわけない気持ちになります。ヨーロッパ諸国も気温が40度ちかくになるところもあり、夏のバカンスを控える声も聞かれますが、アイルランドには熱波到達せず。
ダブリンは30度近くになる日もあったようですが、ここ北西部はせいぜい20度ちょいで、夜は15度以下。冷房入れている部屋より涼しいというか肌寒いほど。
夏の初めに少し日差しの強い日々があり、ここに引っ越してきて初めて「暑い」という言葉を使いましたけれど、日本に比べたらかわいいもので、庭でアイスクリームを食べる楽しみができたと喜ぶ程度。
冷製パスタや蕎麦サラダなど、久しぶりにあつあつでない食事を作りました。アイルランドで夏をすごすようになってから、冷やし中華の存在を忘れ去っています。大好きだったのに!

うちで作る夏の定番スナックはワカモーレ。アボカドのディップをトルティーヤチップスにつけて、ビールのお供に。これは夏でないと気分が出ない一品です。
日本ではまだ知名度低いと何かで読んだのですが、ほんとうですか??
レシピをよくご存知の方には勘弁していただくとして。
暑い日の台所で、ささっと作れる一品ですのでお試しください。

まずは一人分の材料で。

アボカド 1個
トマト  1個 *種はとったりとらなかったり。
玉ねぎ 半分
レモンかライムの絞り汁 適量
にんにく 1カケみじんぎり *お好みで。うちは入れます!
塩 適量
チリパウダー適量 *グリーンタバスコも合います!
コリアンダー みじん切りたっぷり *これははずせません!嫌いな方は、ミントとかかな……

作り方はあってないようなものですが・笑
まずはたまねぎとトマトを細かく刻んで、にんにくもみじん切り、あるいはペーストを加え、最後にアボカドを入れてマッシュ。アボカドは変色しやすいので、レモン汁はここで加えて”色止め”します。塩、チリパウダーを加えてできあがり。
トルティーヤチップスは塩気が強いので、ワカモーレはあっさり味で。
ソフトタイプのトルティーヤに包むときの具材にする場合は、このワカモーレだけだと少し物足りないかもしれないので、トマトピューレと塩、ハチミツ、さらにチリを加えてベースにすると味がしまります。レタスやキューリなど入れて具だくさんにすれば、りっぱな食事に。

今夜はうちもこれにしよう!



ポーチド・サーモン

生鮭を茹でて召し上がったことは、おありですか?
日本ではあまり馴染みのない食べ方だと思いますが、これがねー、カンタンだしおいしいし、ぜひおすすめしたいのです。
拙著「家庭で作れるアイルランド料理」でも紹介していますが、最近あらためて「旨ッ!」と顔がほころぶ機会が増え、我が家の定番料理になっています。
前出の拙著では、ポーチド・サーモンを初夏の風物詩として紹介しています。
実際、夏の競馬などのイベント会場などで丸ごと1尾を切り分けてサーブするような場面もしばしば見かけます。なので冷製のディッシュと思い込んでいたのですが、待てよ、熱々もイケるのではないか?と、ふと気づき。

毎週金曜日、うちのすぐ近くにドニゴールのキリべグスという漁港から新鮮な魚を売る屋台が設置されます。日本に比べると種類は少ないですが、近海で獲れる丸ごとの小エビやムール貝をはじめ、ヒラメやカレイ、アンコウやタラ、スズキetc。毎週3〜4種類をまとめ買いして即調理。煮魚にしたりそぼろにしたりして数日間、食卓をにぎわしてくれます。
サーモンはまず欠かさず大きめの切り身を購入。茹でておけば日持ちするので、炒めごはんにしたり、マッシュポテトにまぜて焼きコロッケにしたり、ちまちま利用しています。
でもね、ポーチした後すぐに食べてみたら、これが病みつきに。
保存食にするだけでは、もったいないわ。
皮をはがした後の、脂ののったところにお醤油をちょっとたらして、わさびなんかをのせて食べたら、もうたまりません!
豪勢な感じになるのでオーブン焼きなどしていましたけれど、ポーチした後の身のほろほろ感の方が日本人の好みだと思います。

ポーチするとき、皮付きのサーモンがひたひたにつかるくらいの水に塩を小さじ1/4ほど入れて沸騰させます。サーモンを入れて、あまりぐらぐらさせず、ゆらゆらくらいで10分強。これだけ。
茹でた後の水は、いいスープストックになるので捨てないでくださいね!
後の使い道を考えて、スターアニスを2〜3個入れたり、ハーブを入れたり、昆布にしたり。炊き込みご飯やリゾットに重宝します。

ポーチしたサーモンは、あたたかいうちに召し上がれ!
ベシャメルソースはもちろん合いますが、バルサミコヴィネガーと醤油をちょっとたらすとか、マヨネーズにケイパーとマスタードをまぜたものを添えるとか、ゆず味噌なんかもばっちり。
ごはんでも、洋風にじゃがいもでも、パンでも。万能おかず、というかメインディッシュになります。

ヒラメやカレイは煮魚にして、翌日に煮凝りを楽しむのーーー
幸いマークは、このぷるぷるした食感が今いち理解できないので、これはわたしだけの贅沢。ワインのアテにしております🎵

 


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ロバの会にエール!

いつもヒマールのサイトでロバの会の様子を読んで、素晴らしい!と感心しています。きっと上達してきてるなって実感しているでしょう?
たくさん演奏したら確実に腕前は上がります!
楽器を扱うのは敷居が高いと思われがちですが、「やってみたい!」が原動力。次は「この曲を演奏してみたい」が新たな原動力。そこに仲間が加われば大きな強みです。今、わたしもそれを実感中。
フィドルのパートナーViviのプッシュが強くなってきており、ふたり練習会は月2回。そこにホイッスル1名が加わって、日程を決めるメールの最後に必ずふたりから「今、何練習してる?わたしはこれ」とさりげなくチューンのタイトルが並び、知らないチューンはおおあわてで自習です。
そのあたりの詳細は、ケルトの笛やさんのサイト( https://celtnofue.com/ )に原稿書いてますのでお時間ありましたらお読みくださいませ。
去年から月1で隣県リートリムのスローセッションに参加し始めたのですが、ここがけっこう楽しくなってきており。
コミュニティセンターの一室は学校の教室のような感じで、いたってシンプル。初めて行ったとき、部屋がいやに暗くて、どうしたのかと思ったら、「理由はこれなのよ」と仕切り役のジョーが電気のスイッチを入れた瞬間、白壁の部屋は目が眩みそうなくらいの明るさに。ひーー
ドラキュラに日差しが当たった状態。すぐにスイッチをオフにしてくれましたけど、なぜあんなに明るい??
窓から差し込む外灯の明るさで、まあ充分なことがわかり、薄暗い中で練習しています。翌月、電池式のキャンドルをいくつか持っていったのですけど、仲間の一人が入室するなり「なんだ、誰か死んだのか?」って!
Anyway。そんな部屋に今月はフィドル3名、アコーディオン3名、ホイッスル2名、フルート1名、バンジョー1名。決してスローではないセッションが繰り広げられました。
パブと違って飲み物もなしの2時間。チューンの合間は放っておくと世間話で先に進まなくなるので、Viviと結託して演奏を始めます。でもねー、なかなかチューンの出だしが出てこないのよ!セッションでいちばん苦労するとこです。弾けるのに思い出せない。
アコーディオンたちはリールばっかり弾きたがるし、フィドルの地味なチューンは喜ばれないし、いろいろ考えるとさらに混乱するばかり。
でも、そういう葛藤含めてセッションが楽しくなっています。
以前はセッションに行っても知らないチューンばかりで、混ざれない間フィドルを抱えてじっと聴くだけ。が苦痛だったものですが、少しは混ざれる機会が増えてきた感じ。
弾きたいなと思ったチューンは必ずタイトルを聞いて、おうちで自習。
しかしアイリッシュのチューンは、わたしにとって天文学的といいたいくらいの数に思えて、もう人生後半なのにとっても覚えきれないので、好きなチューン、仲間と演奏したいチューンに絞って練習に励んでいます。

地元のカントリーマーケットでもセッションがあり、最近は仲間に入れてもらっています。これがなんとステージ上で(笑)。
マーケットのメンバーが増えたこともあって、わたしは音楽担当班に入れてもらった感じ。「行ってらっしゃいよ」と送り出してもらってステージへ!
顔馴染みのお客さんから「うまくなってきたじゃん」などとおだててもらったりして、アイルランド人の懐の深さをあらためて実感中。
面白いのは、演奏が上手くいっているときはカフェあたりからの話し声がさざなみのように聞こえてきて心地いいの。 
少しあたふた演奏をしているときは、会場がしーんとする(した気がする)

ロバの会のみなさま、発表会を楽しんでくださいね!
まだ参加されていない方々は、まず一度ちょっと見学にいらして(楽器をお持ちだったら必ず持参!そこがスタートです)少しずつ、熱いお湯につかるような感じで、いずれどっぷりと!
自分で楽器を演奏するようになると、音楽を聴く楽しみも倍増します。
これも実感中。

次こそは食の話題で!
わがヴィレッジ近くにフランス人シェフがビストロを始め、ほぼ週1回ペースで通っています。向かいは漁港で食材も新鮮。
わたしの勝手な思い込みですが、フレンチシェフには敵わない。
勝ち負けじゃないのですけど、食に対する情熱が半端じゃないのよ。
アイルランドでそういうフランス人に何人か出会って(アイルランド人の血を引くシェフ含む)無条件に彼らのファン。だって、料理が超おいしい。
絶品シーフードチャウダーのことなど書きますね。
悪いけど、この国でいちばんよ。どうやって作るのか目撃したし。

Chat soon !!

Yumiko xxx



2025. 開幕

去年は念願のミュージシャンたち、Ye Vagabonds、Lankum、John Francis Flynn、Daoiri Farrell、Eoghan O’Ceannabhainのコンサートを観られて幸せでした。さらにはDervishのCathy Jordan に続き、Altanのコンサートで締めくくり。贅沢なことです。

ヒマールでスタートした”つまびくロバの会”の趣旨も素晴らしいけれど、”アイリッシュなロバの会”の好調ぶりも素晴らしい!
アイルランドの音楽は、いつも強調するのですけれど”演奏してみてなんぼの音楽”。聴くだけでも充分に楽しめますが、自分で演奏してみて初めてその奥深さに気づく仕組みになっているのです。
その深みにはまりつつあるわたくしも、去年はかなり前向きにレッスンと自習に取り組み(がんばる感じではなく、弾くこと&学ぶこと自体が楽しくなった)、仲間も増えてスローなセッションを見つけては参加するようになりました。
速い演奏のセッションに参加できる日が来るとは思い難いけれど、一緒に演奏できる仲間が増えていくのはすてきな体験です。

わたしにとってはまだ夢のようなアイルランドのパブセッションでフィドルを弾いていたのが、サイファー斗亜さん。
この数年間、日本に行く機会がぐっと少なくなっているわたくしなので、斗亜さんの活躍ぶりは、お会いしたあとにネットをググって初めて知った次第。共通の友人もたくさんいて、いつかゆっくりお喋りするのが楽しみ。
ヒマールで2月11日にライブ演奏されます!歌も素晴らしいので、ぜひいらしてくださいね!!!
共演のハープ奏者・木村林太郎さんもおともだちなのですーーー
日本にいたら絶対に行ってたっっ!!!

去年の年末は異様に暖かかったのですが、ようやくいつも通りの寒さが戻り、年明けからはときおり雪化粧。珍しく南部、中部域の方が積雪している様子。

アイルランドでリリースした拙著料理本「O’Bento」が見事に完売し、増刷を検討しているところです。
販売を一手に引き受けているスライゴーのLiber bookshopは、アイルランドのベストブックショップ・アワードの上位に入賞。誰もが賞賛する書店に拙著を置いてもらえるのは光栄なことです。
さらに場所柄、イエイツ関連書籍が豊富で、すぐとなりに並ぶ拙著を見て感無量。

今年は、友人が作る本にレシピを提供したり、なかよしのフレンチシェフと新作料理をつくるなどなど、楽しみな予定があってわくわくしています。
去年は音楽が主軸でしたけど、今年は少し料理にシフトかな?

今年もどうぞ、お忘れになりませんようご贔屓のほどを!!

ゆみこ



フィドル合宿

地元スライゴーで開催されるサマースクールに参加してみたいと長年思っていたのですが、ようやく実現できました。
カウンティ・クレア、ミルタウンマルベイのウィリー・クランシーサマースクールを皮切りに、8月の大会フラー・キョールまでの数週間、アイルランド各地でサマースクールが開催されていきます。
スライゴーは南部タバカリーという小さな町で、ミルタウンマルベイからバトンタッチする形でスタートします。
地元といってもクリフォニーの我が家からタバカリーまでは車で小一時間。通えない距離ではないですけれど、1週間を存分に楽しみたかったので町中に宿をとり、万全の態勢で臨みました。
レッスンは月曜日から金曜日まで毎日3時間、土曜日はお昼までの2時間。お昼休みのあとにはレクチャーがあったり、練習セッションがあったり、名手たちのコンサートなどもりだくさん。町にあるパブすべて(今は4カ所)でレッスン後すぐにセッションが始まり、これは夜中まで続きます! いつもコンサートで見ているスライゴーミュージシャンたちが、ふつーに演奏していて目が離せません。
朝10時のレッスンから始まって、宿のベッドに入るのは夜中2時すぎ。タフな1週間でした・笑。

ここの伝統音楽のレッスンには基本、譜面を使いません。
五線紙の楽譜を用意してくれる場合もありますけれど、そこには微妙なリズムが刻みこめないので、使わない方が賢明なのです。
アイルランド式で、ドレミをギターのコードと同じABCに置き換えた譜面というか覚書のようなものを使うことが多いのですが、わたしはこれがまだ使いこなせず、聴いて覚える、を実践しています。それがね、めちゃくちゃ面白いのよ。集中して頭の中でメロディをなぞらえる。
脳内なのか、反射神経みたいなもので手の方が先なのか、やがてチューン(楽曲のことをこうよびます)が体内に染み込んできて弾けるようになる、そのプロセスが大好き。
今回の先生は隣県メーヨーのフィドラーDavid Doocey / デヴィッド・ドゥーシー。地味だけど(ごめんなさい!)素晴らしい演奏家です。アコースティック(音響)のいい教室で、彼の最初の演奏を間近で聞いた瞬間、このクラスでよかった!と心底思いました。もうね、ずーっと聴いていたい。
と言っても伝わりにくいでしょうから、ここで映像を。

アメリカ生まれですが、その痕跡ほぼなし。
アメリカでよく使われる「Awesome」とか言ったら別のクラスに移るつもりでしたけれど(最近はアイルランドでも耳にするけれど、”超かっこいい〜〜”みたいな軽い響きで嫌いなの・笑)、幸いDooceyは朴訥としたメーヨーらしい話し方をする人で好感度が増しました。
こんなゆったりとした包容力のある、温かいフィドル演奏、珍しいと思います。
タバカリーのサマースクールは、上級者にスライゴースタイルを習得してもらうのが大きな目標になっている印象で、ビギナークラスがありません。Improverとよばれるわがクラスがボトムで、ビギナーを少し抜け出して上を目指す人のくくりです。上のクラスはだいたいレベルが揃いますけど、ボトムクラスは見事にばらばら。それをまとめあげた先生の力量も素晴らしかった。もうね、Dooceyの大ファンです。
ここで映像もうひとつ。意外なミュージシャンとコンビを組んでいるので。

タバカリー滞在中、いちばん嬉しかったこと。
毎晩聴きに行ったセッションで、ある地元ミュージシャンから、わたしのおべんとう本(2021年にアイルランドで出版した『Yumiko’s kitchen “O’Bento”』)を買いたいと言われたとき。本を作ったことなんて話したことないのに、なぜ知ってる??と、まずびっくり。
彼のライブには何度も足を運んでいるので、そこそこ顔馴染みだったけれど、世間話をするのはいつもマークだったし。
なかよしのパブ・オーナーに進呈した拙著を自慢&宣伝してくれていたらしく、彼から聞いたのだそう。
すぐに「買わないでね!あげるから!」とミュージシャン氏に贈呈。だって彼の音楽にはたくさんのエネルギーをもらっているから。
お返しに近々のライブチケットをいただいちゃった。翻意じゃないのだけど。
後日、なかよしのパブ・オーナーに「拙著を宣伝してくれてありがとう」と言ったらば「みんな欲しがってるぜ!新刊作って日本で出版記念やろうぜ!」だって(爆笑)。
おかげさまで、おべんとう本の初版はほぼ完売です。

タバカリーの翌週は隣県リートリムのドラムシャンボー開催。同時にベルファストでもサマースクール&フェスティバル開催。
スクールメイトたちが「次はどっちに行くの?」と聞いてくるなか、わたしは自慢げに「ドニゴール」と答えたのでした。
翌々週。メーヨーのアキル島と同じ時期に開催されるドニゴールのフィドル・ウィーク。これはかなりの決断。大げさでなく。
きっついドニゴール訛り(言葉もフィドルの弾き方も!)を理解できるのか? ユニークなドニゴールチューンを万年ビギナーのわたしが学べるのか??
湧き上がる疑問に加えて、会場などの基本情報がまったく得られない謎のサマースクール。
行きましたとも。
そして。半月以上も経つ今もまだ、衝撃(いい意味の)が抜けません。
いつ消化できるのかわかりませんけれど、この体験は、あらためてゆっくり記述したいと思っています。

新たな扉を開けちゃった。

予告編として、わたしの大好きなドニゴールフィドラーのセッションシーンを。右側のフィドラー、マーティン・マッギンレー。スライゴーの誇るダーヴィッシュの創設者です。



アイルランドからの秋風と音楽の話

日本の猛暑ニュースを見るたびに、ここの涼しさを申しわけなく感じています。
今年はアイルランドも天候不順でことさらに雨が多く、うちの大家さんはまだ干し草づくりができずにいます。去年は夏前と晩夏の2回も収穫できたのに!
毎年楽しみにしている地元のトマトも、陽射しが足りないのか熟れる前に季節最後みたいな水分の少ないものになっていて残念。
グースベリーに至っては、いつも摘みに行かせてもらっている知人から、実が育たない〜と言われて今年は断念。庭のりんごはそこそこ育っているので、良しとしなきゃ。

今年は音楽満載の年にしようと思っていたのですが、期待以上に充実した日々をすごしていて、ここで少し”おすそわけ”ができたらいいなと思い、ひさしぶりにブログの更新をしました。お楽しみいただけたら嬉しいです。

キックオフは4月。オーエン・オキャノボーンから。

コンサートでの編成は、この映像で登場しているヴァイオリニスト以外の3人。オーエンをサポートするギターとチェロのコンビは、Ian Kinsella と Kaitlin Cullen -Verhanz。アメリカ出身ですが、苗字にはアイルランドの血筋らしき形跡。このコンビは現在、レジェンドグループ、デ・ダナンのメンバーとしても活動しています。
オーエンの歌、素晴らしいです。生で聴くのは初めてで、最初の一声でのけぞりました。
会場は隣県リートリムの町カリック・オン・シャノンにあるThe Dock。19世紀に建てられた元・裁判所を文化施設として活用しています。歴史を感じながら、現代で活躍する若いアーティストのステージを観るのはすてきな体験です。

オーエンのコンサートの興奮もまだ冷めやらぬ1週間後。1月のCD発売後から楽しみにしていた地元のイルンパイパー、レナード・バリーのコンサートへ。

彼の演奏はしばしばスライゴーのパブのセッションで聴いていましたけれど、コンサート会場で聴くのは初めて。あらためて素晴らしいパイパーだと実感しました。メンバーも地元でおなじみの顔ぶれですが、スライゴーのミュージシャンの質の高さに圧倒されました。
11月、レナードはギターのシェイミー・オダウド、フィドルのアンディ・モロウのトリオでリサ・オニールの出演するコンサート・イベントに参加します。絶対に観に行くんだ🎵

このあと5月、ロリー・ギャラハー・フェスティバルでギター弾きまくるシェイミー・オダウドを堪能。
そして6月。念願悲願だったYe Vagabondsのコンサートへ!(Ye Vagabonds、イー・ヴァガボンズですが、カタカナで書くとがっくりなので、英語で書きますっ)

2年前にスライゴーのライブを見逃して大後悔。今回のミニツアーではスライゴーが入っておらず、いちばん近い(車で約1時間)隣県メイヨーのキャッスルバーとロングフォードへ。この”ミニ旅”をくっつけるのは新鮮な楽しみになりました。ロングフォード。用事がなかったら、まず行きません・苦笑。
面白かったのは、出演者たちも「初めて来た」とコメントしてたこと。なのでステージのMCに少し苦労してましたけど、そこがまた微笑ましい。

今日日はCDを買うのはオンラインがメインになっていて厄介。
わたしはアマゾンを使ったことがありません。これは自慢。本は本屋さんで、CDはレコード屋さんで買う主義。
幸いスライゴーにはレコード専門店と本&アナログ盤を売るお店があるので主義を貫くことが可能ですが、それでも最近は流通が滞っていて買えないCDが増えています。残念。
次の手段はコンサート会場で買うこと。
Vagabonds のファーストアルバムは、オンライン上では売り切れになっていましたけれど、会場では買えたもん。そして、これがまたすごくいいアルバムだった。大いに得した気分。

余談。最初にキャッスルバー公演を観て、CD買う気まんまんでいたら、なんと終演後にメンバーが売りに現れた! その日は勇気がなくて購入断念。
1週間後のロングフォードはツアーほぼ最終日だったので、ここを逃したらもう買えないと意を決して本人から買いました。ヒマールに送る分も購入しているので、いずれみなさんも聴ける機会があると思います。

9月はいよいよLankumを観に!
大好きなJohn Francis Flynnのツアーも始まるし。
ずっと気になっていたDaoiri Farrell / デリー・ファレルや新星Niall McCabe / ナイアル・マッケイブも近場で観られそう。年末まで、コンサートの予定が続々。
突然発表になるミニツアーもあり、スケジュールを追いかけるのに忙しく、若いとき、『ぴあ』をくまなく見ながらコンサートに通っていた頃を思い出しました。今もおんなじじゃんね。

続編はまた後日!

猛暑、乗り切ってくださいね。
スライゴーの果ては、すでに「寒い」の範疇になっていますーー



アナログレコードと蔵書

もっと早くにお知らせするつもりだったのですけれど、ヒマールご店主ご夫妻もご多忙でしたし(大きな言い訳!)わたしもイベントごとが多くて出かけまくっていました。
面白い話がたくさんあるので、それはまたあらためて。

去年の東京滞在中、西荻の実家にあったアナログ・レコードと本を引き取ってもらいました。すてきなお店ばかりなので、ぜひいらしてみてください。

・RANA-MUSICA   RECORD STORE
世田谷区代沢5-28-12 フジタビル2A
03-6450-9931

わたしの父親はレコード会社に勤めていました。定年退職後の再就職先もレコード会社で通算50年以上。なので家には、父が仕事で関わった作品に加えて趣味で集めたレコードなどなどが約3,000枚!
実家を手放すにあたって、このレコードたちをどうするかが最大の懸案事項でした。幸い、実家のように親しくさせていただいている隣家のお嬢さん、かなちゃんが、下北沢でレコード屋さんを営んでいるおともだちの、りょうちゃんを紹介してくれて、めでたく全て引き取ってもらいました。
売るのがむずかしいであろう作品もあったのに「破棄するのは忍びないですから」と、太っ腹かつ音楽に対しての温情あっての措置で、すごく感謝しています。
昨今のアナログ盤の再ブームがなかったら、無理だったかもしれません。
聴く方が増えたことにも感謝しつつ、家から旅立ち、再び愛聴してもらえることを願っています。

・Robbin’s nest

弘前にあるアイリッシュパブで、オーナーの翔一くんが収集しているアナログ盤を聴くことができますが、そこに我が家のコレクションも入れてもらいました。

・音羽館

西荻にある老舗の古書店です。ほとんど押しかける感じで本を持って行ったのですが、すでに書棚にアイルランド本があるのを発見(笑)。
ご店主さん、ティンホイッスルを習っていらしたそうで!
ふだんはあまり扱われない洋書まで引き受けていただきました。
品揃えがすごいので、ぜひいらしてみてくださいね。

・STORY’s 落合慎二さん

大崎シャノンズでイベントをさせていただいたときに、オーナーの福井ゆうこさんにご紹介いただき、書籍をたくさん引き取っていただきました。
売り物にはなりそうもないけれど、ご趣味と言ってくださったレコードもお持ちいただいて。
お会いしたのは、拙宅に下見に来てくださったときだけで「次回の東京滞在中にはぜひお店にうかがいますね」と約束していたのに、今年1月に急逝され、再会は叶わなくなってしまいました。
わたしの持っていた「ライ麦畑でつかまえて」(白水社刊)を「ぜひ」とリクエストいただいたとき、すでに誰もが持っている本なのに売れるのかな?と不思議だったのですが、愛読書なのだそうで、ご自分のためだったのかも。今頃、読んでいらっしゃるのだといいな。

千葉ライブハウスANGAのオーナー、なおみちゃんには家具と食器をたくさん引き取ってもらいました。もうオープンしたのかな?なおちゃんのおばんざいをふるまう居酒屋さんで、うちの食器に遭遇できるはずです。

 ”家仕舞い”の作業の大半は家財道具の処分。捨てる作業が主で、それってかなりエネルギーを要します。愛着のあるものたちをどなたかが引き取ってくださると、作業はぐっとポジティブなものに変化。
多くの友人知人たちに助けられました。この場を借りてお礼申しあげます。

ヒマールにも多くのCDや書籍を救ってもらいました。
「次に日本に行くときまでとっといて!」とお願いしているCDたちは、いずれなんらかの機会に、みなさんにお聴かせしたいと思っています。
もう手に入らないものも多いのです!

上記のお店、住所などはググれるので手抜きでほぼ割愛いたしました。陳謝。


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遅ればせのお礼 from Ireland

2ヶ月の東京滞在から真冬のアイルランドに無事帰還いたしました。
4年半ぶりのニッポンは、なかなかに新鮮で観光客気分を味わいました。
不思議な感覚です。
11月に開催した大崎シャノンズと新橋Man in the Moonでのイベントは、おかげさまで満員御礼。ご来場くださった方々と、すてきな会場のパブふたつ、コラボしてくださったフィドルの小松大さん、ギターの長尾晃司さん、ほんとうにありがとうございました。
ヒマールのご店主、辻川ご夫妻は岩国からお手伝いに駆けつけてくださって、5年ぶり?に再会できました。イベント後にたっぷりおしゃべり♬
今回の滞在は、ごく個人的なミッションがあって自由時間はあまりとれないと覚悟していたのですが、思いがけずたくさんの友人たちと会う機会に恵まれて楽しい時間を過ごすことができました。
幸い“ミッション限りなくインポッシブル”も達成し、クリスマス直前のアイルランドに滑り込み。
夫マークもなんとか生き延びてくれていましたが、冷蔵庫は見事に空っぽ。食料の大買い出しからここでの日常が再開しました。
待ち構えていた新たなミッションのクリスマスディナーは下ごしらえの少ないローストビーフをチョイス。小さめの肉を注文したのですけど、いちばん小さいブロックが2キロ!二人暮らしなんですけどーー
おまけに大きな骨つきで焼き付けるのに四苦八苦。いちばん大きな厚手鍋にも収まらず、押し込みながら焼く始末。重いのでひっくり返すのも一苦労でした。オーブンでの焼き時間も、ほとんどのレシピは1キロの肉用なので結局当てずっぽう(苦笑)。それでもなんとかなるのがオーブン料理のいいところ。かなり野蛮な見た目のローストビーフでしたけれど、味は絶品。
元旦まで食べられそうと思う量でしたが、案外すぐに食べきっちゃえそう。それもオソロシイことですが!

今回の帰り道には初めて、アイルランド北西部にある小さなノック・エアポートを利用しました。スライゴーからは1時間の距離なので、ダブリンを利用するよりもずっと便利なのです。今年春にロンドン・ヒースロー行きが就航するようになり東京までのフライトがつながるように。ただ、1日1便しかないので万が一フライトがキャンセルになると、行きのチケットはすべておじゃん。誰もが「長距離便につなげるのはリスクが高すぎ」と言うので、ならば往路に。これがねー、サイコーでした。
ノックエアポートは地元メーヨーの神父さんの悲願で開設されたもの。
聖地ノック山とヨーロッパ各国の聖地をつなげたいという思いと、アイルランドのなかでも特に多くの移民を送り出したメーヨーにまた彼らが帰って来られるように玄関口を作りたいという、ふたつの理由があったのだそうです。実際、わたしが搭乗したフライトはクリスマスを控えて満席。隣の席はカナダ移民のメーヨー男性でした。
いいなと思ったのは、隣り合わせになった人たちがすぐにお喋りをはじめて機内ががやがや(笑)。以前はダブリン行きのフライトもこんな感じだったなーと思い出しました。今は外国人やビジネスで利用する人たちが増えたせいか機内は静かになった印象。
ノック行きは帰省列車のような高揚感にあふれ、そうだ、わたしもアイルランドに帰る移民だったと思い出しました(笑)。
隣の席と、さらにその隣の席のおばさんと3人で、機内で買ったドリンクで乾杯「Happy Xmas !!」
ダブリンを通過し、西へ向かう飛行機からずっと、眼下に広がるアイルランドの景色を眺められたのも初めての体験でした。

帰国の翌日から天気は大荒れ。海は白波がたって怖いくらいですし、強風は家を揺るがすかのよう。海鳴りと風の吠える音に「ああ、帰ってきた」と妙な安堵感を覚えたりして(笑)。
そんな中でもノックに着くフライトはキャンセルにならなかったようですが、遅れはあった様子。わたしはかなりラッキーでした。
クリスマスは若干おだやかさが戻りましたけれど、寒さも戻ってきました。とはいえ例年よりは暖かいですが、東京よりは寒いですっ。

ここのクリスマスは日本の元旦に似て、静かでおだやかな1日を家で家族と過ごします。東京の喧騒から離れたばかりなのでことさら、クリスマス休暇をしみじみと味わっております。
日本が元旦を迎える頃、アイルランドには普段の喧騒が戻ります。
来年はどんな風に生きようかな。
静かなときに、あれこれ夢想するのが大好き。

みなさまも、どうぞよいお年をお迎えくださいませ!!

大崎シャノンズにて。イベントをアレンジしてくださったフィドル奏者の小松大さんと。


続・イベント「アイリッシュネスへの扉」

前回に続き、11月に東京で開催のイベント、2日目(11/19)へのお誘いです。

2日目は、新橋Man in the Moonにて。
この日は写真をご覧いただきながら、今わたしが住んでいるクリフォニーヴィレッジの田舎暮らしを中心に、食文化寄りの話題をとりあげたいと思っています。

ご店主の山田さんはまだお会いしていないのですけれど、かつてコークの老舗パブで修業していらしたという強者。短いですけど対談させていただきます。超楽しみ!
行ったことあるんだもーん、その老舗パブ。盛り上がり必須。

今わたしが住んでいる小さなヴィレッジは、個性の強い人たちの集まりで、ひそかに「やかまし村の“大人たち”」とよんでいます(笑)。
「北の国から」にも十分に似てるし「プロヴァンスの12ヶ月」にも負けない。ここでは誰でも1冊、本が書けると思います。

拙著「アイリッシュネスの扉」を書いた家はイギリスの上流階級者の家でしたけれど、今住んでいる家は元農家(今も半ば現役ファーム)。正しい場所に行き着いた気がしています。そんな話も19日に。

2日間のこのイベントをいちばん楽しみにしているのは、実はわたしだったりして!?
おすそわけできれば幸いです!!

イベント2日目の詳細・ご予約はこちらで!
https://odeinc.jp/6869/




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