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須原健夫・近藤康弘二人展「健康思考」に向けて

2016年は、この展示からお届けします!

須原健夫(yuta)・近藤康弘(四百窯)二人展「健康思考」
2016年2月20日(土)〜3月6日(日)

大阪・箕面で金工に携わるyutaの須原健夫さんと、栃木・益子で作陶する四百窯の近藤康弘さん。
名前の一文字ずつから付いた二人の呼び名、それは「健康」。

大阪で生まれ育った幼なじみの「健康」二人。
偶然、どちらもものづくりが生業になりました。
つくるものは違えど、同志にしてライバルです。

そんな二人が、今回の「健康思考」展に向けて、まずとりかかったこと。
それは「お互いの歯がゆく思っている部分を、一冊の本をメッセージとして送り合うことで、指摘し合う」ことでした。

「???」と思われた方も多いでしょう、ええ、私も思いました。
二人展に向けて、その内容をどうするか、打ち合わせるのではなくて?
二人展のための制作にかかるのでもなくて??
なぜ、いま、そんなことを???

本番まであと2ヶ月となった、ちょうど昨年のクリスマスの頃、二人は互いにその「一冊の本」を送り合いました。
「二人展までの過程をみてもらいたいから」とのことで、その本と手紙の内容を、みなさんにもご紹介します。

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須原「健」夫から、近藤「康」弘へ。
送った本は「黄色い牙/志茂田景樹」。
近代化の波に洗われて崩壊していくマタギの社会を、そのリーダーである主人公の人生を通して描いた小説。
本に添えた「健」から「康」への手紙に曰く
「柳宗悦や濱田庄司や川瀬敏郎や花やお茶や本や美術館や博物館や、そんな中に本当に答えはあるのだろうか。(中略)外から百の知識や例え話を見つけてくるよりも、一つの知恵を見つけるために、毎日手を動かす努力をするべきではないだろうか。」
「確かに追い込まれてからの集中力でなんとかなってしまうことは多い。追い込まれたときに何日も寝ないで仕事をすることは、なんだかストイックで格好良い気すらする。アーティストならそれでも良い。偉人になりたいなら、そんな破天荒も話の種になるかもしれない。けれど僕達はそうではなかったはずだ。日々、土を耕し生きる百姓のように、日々を作ることとする工人にこそ憧れたはずだ。」
「日々が作ることであること。当たり前のようで、それはとても難しいことだけれど(中略)それができないことを肯定しないで欲しい。」

近藤「康」弘から、須原「健」夫へ。
送った本は「ただの人となれ/光永澄道」。
7年間かけて行われる「千日回峰」そして「十二年籠山」という厳しい行を満行した大阿闍梨による著書(余談ですが、光永澄道さんは山口県出身の方だそうです)。
本に添えた「康」から「健」への手紙に曰く
「人づきあいが二年間皆無とのこと。(中略)読んだ本に『植栽するときは1平方メートルに何十本も苗を植える』とあって、植物は葉と葉がふれあうと“こいつよりのびないとやがて陽をさえぎられて殺されてしまう”と、より強くのびるらしい。人間界でも、人との接触というストレスはマイナスだけではなく、気づけば自分をのばしてくれると思う。」
「健夫は高校時代、ふつうに人と接していた。それに自転車のタイムを競ったりしたときのシブトさ。(中略)競争しているときに輝くタイプなのかもね、ふりかえると。そして甘えることが好きなほうである。(中略)昔から勘違いしたような馬鹿な行動をとるときは手に負えなかったけど、何年かに一度、世間的にNGな甘え事を言うときはたいしたことなかったです。」
「身近な人達に応援してくれる人を持たないと、続かないというか、持つことを勧めます。」

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二人の手紙、実際には、私のほうで公開を控えた、もっと手厳しい指摘もあり……。
この時期にこんなやりとりをしていること自体もだけど、そのやりとりの内容というのが大げんかに発展してもおかしくないようなものなので、二人展、大丈夫か!?とたいへん心配になっております。

幼なじみの仲とはいえ、二人とも、そこんとこ、どうなん!?
気になる互いの反応は、また後日知らせてくれるそうなので、じりじりしながら待ちたいと思います。

まったくもう、たのむよ、ホント。

健康に向けて