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本づくり 2021年1月その1

しばらく店の模様替えに奮闘していましたが、12日からの初営業に間に合う目処がついたので、ここ数日はヒマールの出版業のほう、本づくりにも励んでいます。

去年初めての本を出版して以降、「本ってどうやってつくるの?」「編集ってどんなことをするの?」とよく聞かれるようになりました。わたしは以前も編集の仕事をしていたことがあるのですが、これがなかなか説明するのが難しい。一言で説明しづらいし、詳しく言おうとすると本ごとに違うのでまた難しい、と思ってしまうのです。
でも、そうして説明しないでいると、いつまでたっても「本をつくる」という仕事を知ってもらうことはできません。本づくりという仕事を知ってもらわないと、本をつくりたいと思う人もいなくなってしまうかもしれない。それは困る。
ので、まわりの人からのすすめもあって、これからヒマールの本づくりの過程をお伝えしていってみようと思います。あくまでも、本づくりの一例、ということになりますが。もし質問があったら、じゃんじゃんしてください!できるだけお答えしていきたいと思います。

さて、ヒマールではいま、2冊の本をつくっています。

1冊は、ヒートウェイヴの山口洋さんの本。
ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営するWebメディア「エンタメステーション(現ワッツイントーキョー)」に昨年7月まで、3年7ヶ月に渡って書き続けられた連載を一冊にまとめようという企画です。
つまり、この本の場合、書き下ろし部分(ある予定です!)を除き、連載時の原稿がすでにあります。が、もちろん、そのまま印刷して本にすればいいというわけにはいきません。

webに限らず新聞や雑誌なんかでもそうですけど、連載というのは、アップされるそのときに、リアルタイムで読んでもらうことを前提に書かれています。なので、山口さんの連載にも、そのときそのときの社会の動きだったり開催されたばかりのイベントだったり、当時の空気感が含まれています。その空気感は、本にするときにも残したほうがいいものもあるし、本になったときにはピンとこないかもしれないものもあります。
それらをまず検討するのは編集の仕事のひとつ。
今回、この点でとてもありがたく幸いだなと思うのは、webでの連載の担当者だった村崎文香さんと圓城寺裕子さん、連載当時の空気感をもっともよく知るおふたりに、本でも編集チームとして携わっていただいていることです。
本に収録する順番を、連載順にするか並べ替えるか、全体の構成も検討していただいたり、登場するミュージシャンのプロフィールなど、webの場合は文字数制限がないので長かったり短かったりするまちまちなデータを書き直していただいたり、細かいことまで言うと、web上では改行や一行あきが多いほうが読みやすいのですけど本では逆にパラパラしすぎると読みにくくなってしまうので、一行あきのままにするところと、つめるところ、そんな判断もしていただいています。

こうした編集作業を進めてもらうために、まずはweb連載では横書きだった原稿を、本にするときの文字の組み方をおおよそ決めて縦書きにしました。これはブックデザインを担当するヒマール(夫のほう)が作業。横書きの文章を縦書きにする、これだけで、西暦や年齢など数字の表記、バンドやミュージシャン名、楽曲や単位などの英語表記をどうするか、という課題が生まれます。それらをどう表記するかのルール「組版ルール」を、あらかじめ編集チームと版元&デザイン担当のヒマールとで相談して決めました。これから刊行するまで、同じ原稿を何度も繰り返し読むので、先にルールを決めておいて読むたびに全員がチェックするほうが見落としも少なくなる、というわけです。

年明けの現在は、デザイン担当が縦書きに組み直した連載原稿の本文に、編集チームが手を入れて戻してくれたので、ふたたびデザイン担当がそれを反映させているところです。
デザイン担当は続いて収録する写真を選び、「ゲラ」と呼ばれる、本として印刷するかたちの原稿作成に入ります。

そして、もう1冊つくっているのは、松井ゆみ子さんの本。
つくり方は、山口さんの本とはまた全然違います。
続けて書こうかと思いましたが、すごく長くなってしまったので、また後日!