日別アーカイブ: 2023年1月13日

「Amazonで買えますか?」へのお返事

ヒマールが出版している本(取引を代行している「こぶな書店」の本も含む)について、「Amazonで買えますか?」とよく聞かれます。
短くお返事するなら「Amazonでも買うことはできます。でも、Amazonからは買えません」。
……ん?それってどういうこと?……と思った人もおられるでしょうから、もうちょっとだけ詳しく、とは言え、かなり長くなってしまうお返事も書いてみます。

まずはじめに、基本情報として知っていただきたいことをふたつほど。

ひとつめ。
本はざっくり言うと以下の2つのいずれかで流通しています。

1.出版社→取次(卸問屋のようなもの)→書店
この流れは「取次」「取次経由」と呼ばれています。

2.出版社→書店
この流れは「直接取引」「直取引」と呼ばれています。

ふたつめ。
書店には、本を「取次経由のみで仕入れている店」「直接取引のみで仕入れている店」「取次と直接取引の両方で仕入れている店」があります。
同様に出版社も、本を「取次経由のみで卸している社」「直接取引のみで卸している社」「取次でも直接取引でも卸している社」があります。

さて、Amazonは、本を「取次と直接取引の両方で仕入れている店」です。
そして、ヒマールは、出版した本を「直接取引のみで卸している社」です。
ということは、直接取引を行なえば、Amazonでヒマールの本が販売されることはある、ということになりますね。
でも、ヒマールはAmazonと直接取引をしていません。
なぜか、その理由を書きます。

Amazonとの直接取引は「e託」と呼ばれ、ほかの書店との直接取引とはちょっと違っています。
一般的に、書店と出版社との直接取引においては、卸掛け率、買取なのか委託なのか、送料はどちらが負担するか、などの取引条件を出版社側から書店に提示したあと、お互いがその条件を了承することで取引が始まります。
Amazonのe託の場合は、Amazon側が決めた条件で、交渉の余地はありません。出版社はまず年会費を支払い、Amazonが決めた卸掛け率で取引することになります。買取はなく委託のみ。年会費を支払っていても常に在庫として預かってもらえるわけではなく、Amazonから連絡があってはじめて納本することができ、Amazon指定の方法で発送。当然返本もあり返送時の送料も出版社負担、といった感じになっています。

Amazonの卸掛け率は、ヒマールがほかの書店に提示している卸掛け率に比べ、Amazon側に多く利益が出る掛け率に設定されています。そして、年会費を支払っていてもどれだけ納本の連絡が来るかわからず、送料も、ほかの書店へ納本するときよりも多くかかってしまう取引条件です。

Amazonという膨大な顧客を抱える超有名店で販売され売上が増えるであろうことを思えば、卸掛け率の違いも「アリ」と考えることはできるでしょう。年会費や送料でコストが多くかかることについても、ヒマールがもっと出版点数の多い出版社であれば「アリ」と判断したかもしれません。

コストのことで言うと、ヒマールがAmazonと直接取引をしない理由と、取次を使っていない理由は同じです。
ヒマールは出版点数と出版部数が少ないので、1冊あたりにかかるコストが大きくなりがちです。
そのコストを抑えて、読者がなるべく買いやすい本体価格にしつつ、書店の利益と出版社である自分たちの利益がきちんと出るようにしたいと考えたとき、コストの中で比重が大きいと思えたのが、本の保管にかかる費用と移動に伴う送料でした。
取次を使うことで多くの書店に扱ってもらいやすくなったり、Amazonで手軽に買ってもらえたりするのは魅力的ですが、そのメリットとコストを比べて考えて、現状では取次を使わないこと、Amazonと直接取引をしないことを選んでいる、というわけです。

ところで、Amazonには「マーケットプレイス」というものがあるのをご存知でしょうか?
会員登録することで(無料と有料があります)Amazonのサイト上に新品や中古品を出品することができ、それが売れたら購入者に直接発送して、規定の手数料を差し引かれた代金がAmazonから支払われる、というものです。

ヒマールは新刊を出すとすぐに、このマーケットプレイスに出品するようにしています。もちろん新品です。
これが、冒頭に書いた「「Amazonでも買うことはできます。でも、Amazonからは買えません」という短いお返事の意味です。

実は、本を出版することになったら出版情報登録センター(JPRO)というところに登録するのですが(書店や図書館が出版情報を得ることができるようになります)、Amazonや楽天ブックスなどはJPROに新刊の情報が登録されると、自社のサイト内にその本の商品ページ(発売前であれば予約ページ)を自動で作成するプログラムを組んでいるようです。なので、Amazonや楽天ブックスで取り扱っておらず在庫がなくても、自動的にヒマールの本のページができてしまうのです。
するとどういうことが起きるかと言うと、「Amazonに在庫がないということは、手に入りにくい希少な本に違いない」と思い込んでしまう人を狙って、高額出品する業者が出てきます。
ヒマールがマーケットプレイスに出品するのは、Amazonのサイトで販売したいからというよりも、出版元には新品の在庫があることを知らせ、高額出品を防ぎたいからです。
ちなみに、ヒマールのマーケットプレイスへの出品を購入なさる際にはAmazon規定の送料がかかり、割高になるのでおすすめいたしません。

そういう事情で、ヒマールの本は、どこの書店でも買えるわけではない(Amazonも含む)ということになっているのです。
本を購入しようとされた方の中には、わざわざ書店まで出かけて行ったのに取り寄せてもらえなかった(取次経由のみで仕入れている店だった)ということも多くて、本当に申し訳なく思っています。
書店さんにも、直接取引のみでご不便をおかけしています。
少しずつにはなりますが、お取り扱い店が増えて購入しやすくなるように、書店さんにもできるだけ手間や負担は少なく仕入れてもらえるように、努力と工夫を重ねていきたいと思っていますので、ご理解いただき、おつきあい願えましたら幸いです。

長い返事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

ヒマール 辻川文俊/辻川純子

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