18時から、読むロバの会(読書会)の日でした。
参加者は1名。
読んでおられたのは、アグラヤ・ヴァテラニー(松永美穂訳)『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』。
チャウシェスク独裁政権下のルーマニアを逃れ、放浪しながらサーカスで働く母娘を中心とした物語のようです。「短い話が連なっていて、どこまでが現実でどこからが空想なのかわからないようなふしぎな文章だけれど、ちゃんと物語としてつながっていて……こんな小説もあるんだなあ、とすごくおもしろく読んでいる」とのこと。
タイトル『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』がとても印象的ですが、これは、サーカスで長い髪の毛でぶら下がって 演技をしているお母さんのことを、下の娘が「お母さんは落ちてしまうんじゃないか」といつも怖がっていて、それに対して姉が「もっと怖いことを考えていたらお母さんのことを考えて怖がらずに済むから、こういうことを考えてごらん」という感じで話をする、そのひとつがタイトルのそれなのだそう。そういうことだったとは!
わたしは、キム・スム(中野宣子訳)『Lの運動靴』を読み始めました。
“L”とは、民主化への闘いが激しさを増していた1987年の韓国で、警察からの催涙弾を頭に受けて重傷を負い25日後に亡くなった、当時大学生だった李韓烈さんのこと。彼がそのときに履いていた運動靴を、28年経って修復する、という実話があっての小説なのですが、小説の語り手は、その運動靴の修復を持ち込まれた美術修復家で、今日の読書時間で読んだところまででは、修復家はその依頼を受けるかどうか、受けるとしたらどう修復するのか、どこまで修復するのか、この運動靴を修復するというのはどういうことなのか、など悩んでいるところで、そこに世界的にも有名な美術品の修復の話や、これまでに受けた修復の話などが重なって綴られています。
こういう角度から描くこともできるのか、という気持ちで読んでいます。果たして修復家はどういう決断をするのか、最後まで読みたいと思います。
ところで、『その子どもはなぜ〜』は、日本よりも先に韓国で翻訳出版されていて、その翻訳者は『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』などの著者でもあるペ・スアさんなのだそう。『遠きにありて〜』の日本語訳者である斎藤真理子さんが、ペ・スアさんの翻訳者としての作品として『その子どもはなぜ〜』を知り、ドイツ語訳者の松永美穂さんに紹介されたのが、今回、ヴァテラニー作品が初邦訳されたきっかけなのだそうです。
今日の読書会に参加してくれた人とよく話していることですが、おもしろい作品を見つけて翻訳して届けてくれる翻訳者のおかげで、こんなにいろいろな海外文学を読むことができる、ほんとうにありがたいことだよね、と今日も言い合いました。
さて、次回は12月12日(木)15時からやります。
読むロバの会は、各自で読みたい本を黙ってただ読む、読書時間と読書空間を共有する読書会です。帰り際に読んでいた本をお互いに紹介し合っています。
週に一度のペースで曜日は決めずに開いていて、15時からの日と18時からの日があります。
ご予約は不要、参加費のかわりに1ドリンクのご注文か500円以上のお買い物をお願いしています。
本を読む時間をつくりたい方、ぜひいらしてください。