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本づくり 2021年2月その1

立春大吉。

ヒートウェイヴ・山口洋さんの本、今年になって初めて、チーム全員でオンライン・ミーティングをしました。
メンバーは、著者の山口さん、編集チームの村崎さんと圓城寺さん、デザイン担当&版元のヒマールふたりの、計5人です。

現在、webに連載されていた部分の原稿は、「初校」という段階まで作業が進みました。
初校というのは、実際に印刷するように文字を組んだり写真をレイアウトしたりして校正するための校正紙=ゲラの、初回のことです。
本づくりと関わりのない方はほとんど目にする機会もないと思いますので、写真でチラッとご覧いただきましょう。

お気づきでしょうか?
本文を、2段で組もうと思っています。
2段組み、馴染みがない人も多いと思うのですが、そうしようと思ったのには理由があります。ページ数を抑えたい、元がweb用に書かれた原稿ということで改行や1行空きが多めなので1行の文字数を短くしたい、つまりは1ページになるべく多く文字を入れたいけれど読みやすくもしたい、ということです。
(お気づきでしょうか? そう考えて2段組みにしても、すでに連載部分だけで300ページ超、です。)

きょうのミーティングでは、事前にこの初校ゲラをデザイン担当のヒマールからみなさんに郵送して、それぞれがざっと目を通したうえで気づいた意見を出し合いました。
結果、2段組みで、いきますよ!

もう完成なのでは!?と思われたかもしれませんが、いやいや、ま〜だまだ!
このあと、著者は著者の目で、編集チームは編集の目で、あらためてゲラをじっくり読んでチェックして、修正・追加・校正をゲラに書き込んでいき、それをふたたびデザイン担当へ戻してもらって、こんどは「再校」をつくります。
初校戻しの内容次第では、文字が増えたり減ったりしてページまで変わってくる可能性もあります。今回の本は写真ページもたくさんあって、その写真が左ページにくるのか右ページにくるのかでデザインの仕方が変わってくるので、そのあたりのデザインの詰めは再校で、ということになるわけです。
ちなみに、ゲラとは別に、本の全体を見渡しながら考えるために「台割」というものもつくってあります。本の設計図、みたいなものかな。こんな感じです。

そうだ!大事なことをお伝えし忘れるところでした!!
本のタイトルが決まりました!
……と言っておきながら、まだ発表しないんですけど……ごめんなさい〜。
いろいろ整ったら、そのタイトルが決まるまでの流れも含めて、またお話させてもらいますので、予想しながら、たのしみに待っていていただけたら幸いです。

タイトルは、メールでやりとりして決まりました。
それぞれに離れたところにいるチームのメンバー、ふだんはメールや電話や郵便でやりとりをしています。そのほうが捗る作業というのももちろんあるのですが、お互いの顔を見て話しているうちにひらめくことや見えてくるものって、やっぱりあるなあ、と。あらためて、本ってチームでつくるものだなあ、と。たとえオンラインでも実感したきょうのミーティングでした。

本づくりの経過、たのしんでいただけたら嬉しいです。
また書きます!

本づくり 2021年1月その2

一昨日、ヒートウェイヴ・山口洋さんの本づくりの現在のようすをお伝えしましたが、きょうは並行してつくっている、もう1冊の本、アイルランド在住の写真家で料理家でエッセイストでもある、松井ゆみ子さんの本づくりについて、まずはこれまでのいきさつと、現在のようすを書いてみます。

ゆみ子さんとはふだんから頻繁にメールのやりとりなどをして、おともだちづきあいをしていただいてます。
一昨年(2019年)の夏頃でしたか、ヒマールの初出版となったアンディさんの本づくりを進めていた時期に、どちらからともなく「ゆみ子さんの本をヒマールから出しましょう!」という話になりました。その時点ではまだ原稿はひとつもなし! ざっくりと、料理のレシピとエッセイが半々くらいの本、というイメージをお互いにもってつくりはじめることにしました。

すぐに、ゆみ子さんから「こんなの書いてみた!」とタイトルをつけた短めのエッセイが続々とメールで送られてくるようになり、それがどれも毎回おもしろくって! 笑える話、じーんとする話、ゾクッとする話、軽い感じのもの、読み応えのある力作などなど。
このとき、わたしは完全にひとりの読者としてたのしんでいて、編集者として「こうしたら」「ああしたら」みたいな意識はほぼありません。読んで素直な感想や質問を送ると、それに反応してゆみ子さんが「こんなのも書いてみました!」「ちょっと書き直してみたから読んでみて〜」とまたエッセイを送ってくださる。わたしのためだけに書いてもらっているみたいで、超贅沢な気分でした!

そんなふうにたのしいやりとりを続けながら、全体の構成(章立てや収録順など)も相談しあいながら、そろそろ一冊にまとめられそう!というところで始まったのが、コロナ禍。去年の春に最初のロックダウン(アイルランドでは「コクーニング(巣ごもり)」と呼ばれていました)が始まって、この状況も書くべきなんじゃないか、と話し合った結果、本づくりは一旦ストップすることにして、ヒマールのサイト内でゆみ子さんのブログを始めました。そのことは年末にも書きましたので、ぜひお読みください!

じつは、この時期、ゆみ子さんにはコロナ禍による生活の変化と同時に、長く暮らした市街地から田舎の村のさらにはずれへのお引越しという環境の変化がありました。
2つの大きな大きな変化があったゆみ子さん、新たに書きたいことが出てくるのは当然です。実際、夏に本づくりを再開させてからもらう原稿がめちゃくちゃおもしろい! そこで「レシピとエッセイ半々ではなくて、今回はエッセイがメインの本にしませんか?」とご提案。
そうして、その後も名作や力作をたくさん受け取り、今度こそ、ついにまとめる段階に!

現在は、収録順を相談しあってほぼ決めたので、お互いにその順番で通して読み、原稿を整理しているところです。なにしろ一昨年の夏から長い期間をかけて書いていただいたものですから、あらためて通して読むと、お互いが見逃していた重複しているところや書き足したほうがよいところなど、見えてくることも多いのです。
これもまた、たのしい作業。ゆみ子さんとの作業は、いつだってなんだってたのしいのですけど!

わたしが「本づくりのブログを書き始めた」とお知らせしたら、なんと、ゆみ子さんが「本を書く側から」の文章を寄せてくださいました。

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本を書く側から。

 幸いなことに今までいくつか書籍を出版する機会を得て、さらに幸いなことに、何人もの優秀な編集の方たちと作業しました。
 1冊目は共著で、わたしは写真とイラストの担当でしたから、原稿を形にしていく過程を傍らで見学できたのはラッキーでした。
 2冊目はわたし個人の著書で、編集担当者は1冊目と同じ、コミュニケーションはばっちりとれていましたし、経験豊富なベテラン編集者なので、たくさん勉強させてもらいました。
 本作りをしてみるまで、本は書き手が作るものと思っていましたけれど、大きなまちがい。編集者なくして本はできないのです。当たり前のことなのですけど。原稿があっても、すぐに本ができるわけではないことは、すでに前回じゅんこさん(ヒマールの編集長。おともだちでもあるので、こうよばせていただいています)が詳しく書いているので割愛。

 編集者はいちばん最初の「読者」です。
 原稿をお渡しした後の反応はかなり気になるところ。書き手も様々ですから、何も気にせず書き続けていく方もいるのでしょうけど。自信ありの原稿ほど、反応が気になるものです。
 ここからは、ヒマールじゅんこさんへの賛美。
 原稿には即座に目を通し、すぐさま感想を送ってくれるのが、ものすごくありがたい。(って、無理しないでくださいね!)
 疑問点は率直に言ってくれるので、説明の足りなかった部分に気付けて、校正などの調整時期よりも前に手直しすることができます。

 大きな出版社には、校閲といって、文字の直しだけでなく、言葉の意味や文法的なことまでチェックする担当者がいて、粗忽なわたしはずいぶんと助けてもらいました。編集者が校正と校閲の二役を務めるときもあり、じゅんこさんはまさしくそんなオールラウンドプレーヤー。頼りにしています。
 ヒマールから出すわたしの新刊は、今までのエッセイ本よりも多く、アイルランドの歴史や文化に言及しているので、じゅんこさんの“Eagle eye”(アイルランドでは“鷹の目”とよばず、“ワシの目”)が重要な役割を務めます。

 本を作るのは至福の喜びで、こういう機会を得るのは、ほんとうにラッキーですし、光栄なことです。同時に責任も強く感じているので、充実した本をみなさんにお届けしたいと思っています。

 じゅんこ編集長、ひき続きよろしく!!

 松井ゆみ子

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ゆみ子さん、こちらこそ、引き続きよろしくお願いします!

松井ゆみ子さんの本づくり、山口洋さんの本づくり、ともに引き続きお伝えしていきますので、それぞれのつくり方の違いを、たのしんでいただけましたら幸いです!!

本づくり 2021年1月その1

しばらく店の模様替えに奮闘していましたが、12日からの初営業に間に合う目処がついたので、ここ数日はヒマールの出版業のほう、本づくりにも励んでいます。

去年初めての本を出版して以降、「本ってどうやってつくるの?」「編集ってどんなことをするの?」とよく聞かれるようになりました。わたしは以前も編集の仕事をしていたことがあるのですが、これがなかなか説明するのが難しい。一言で説明しづらいし、詳しく言おうとすると本ごとに違うのでまた難しい、と思ってしまうのです。
でも、そうして説明しないでいると、いつまでたっても「本をつくる」という仕事を知ってもらうことはできません。本づくりという仕事を知ってもらわないと、本をつくりたいと思う人もいなくなってしまうかもしれない。それは困る。
ので、まわりの人からのすすめもあって、これからヒマールの本づくりの過程をお伝えしていってみようと思います。あくまでも、本づくりの一例、ということになりますが。もし質問があったら、じゃんじゃんしてください!できるだけお答えしていきたいと思います。

さて、ヒマールではいま、2冊の本をつくっています。

1冊は、ヒートウェイヴの山口洋さんの本。
ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営するWebメディア「エンタメステーション(現ワッツイントーキョー)」に昨年7月まで、3年7ヶ月に渡って書き続けられた連載を一冊にまとめようという企画です。
つまり、この本の場合、書き下ろし部分(ある予定です!)を除き、連載時の原稿がすでにあります。が、もちろん、そのまま印刷して本にすればいいというわけにはいきません。

webに限らず新聞や雑誌なんかでもそうですけど、連載というのは、アップされるそのときに、リアルタイムで読んでもらうことを前提に書かれています。なので、山口さんの連載にも、そのときそのときの社会の動きだったり開催されたばかりのイベントだったり、当時の空気感が含まれています。その空気感は、本にするときにも残したほうがいいものもあるし、本になったときにはピンとこないかもしれないものもあります。
それらをまず検討するのは編集の仕事のひとつ。
今回、この点でとてもありがたく幸いだなと思うのは、webでの連載の担当者だった村崎文香さんと圓城寺裕子さん、連載当時の空気感をもっともよく知るおふたりに、本でも編集チームとして携わっていただいていることです。
本に収録する順番を、連載順にするか並べ替えるか、全体の構成も検討していただいたり、登場するミュージシャンのプロフィールなど、webの場合は文字数制限がないので長かったり短かったりするまちまちなデータを書き直していただいたり、細かいことまで言うと、web上では改行や一行あきが多いほうが読みやすいのですけど本では逆にパラパラしすぎると読みにくくなってしまうので、一行あきのままにするところと、つめるところ、そんな判断もしていただいています。

こうした編集作業を進めてもらうために、まずはweb連載では横書きだった原稿を、本にするときの文字の組み方をおおよそ決めて縦書きにしました。これはブックデザインを担当するヒマール(夫のほう)が作業。横書きの文章を縦書きにする、これだけで、西暦や年齢など数字の表記、バンドやミュージシャン名、楽曲や単位などの英語表記をどうするか、という課題が生まれます。それらをどう表記するかのルール「組版ルール」を、あらかじめ編集チームと版元&デザイン担当のヒマールとで相談して決めました。これから刊行するまで、同じ原稿を何度も繰り返し読むので、先にルールを決めておいて読むたびに全員がチェックするほうが見落としも少なくなる、というわけです。

年明けの現在は、デザイン担当が縦書きに組み直した連載原稿の本文に、編集チームが手を入れて戻してくれたので、ふたたびデザイン担当がそれを反映させているところです。
デザイン担当は続いて収録する写真を選び、「ゲラ」と呼ばれる、本として印刷するかたちの原稿作成に入ります。

そして、もう1冊つくっているのは、松井ゆみ子さんの本。
つくり方は、山口さんの本とはまた全然違います。
続けて書こうかと思いましたが、すごく長くなってしまったので、また後日!