本づくり 2021年1月その2

一昨日、ヒートウェイヴ・山口洋さんの本づくりの現在のようすをお伝えしましたが、きょうは並行してつくっている、もう1冊の本、アイルランド在住の写真家で料理家でエッセイストでもある、松井ゆみ子さんの本づくりについて、まずはこれまでのいきさつと、現在のようすを書いてみます。

ゆみ子さんとはふだんから頻繁にメールのやりとりなどをして、おともだちづきあいをしていただいてます。
一昨年(2019年)の夏頃でしたか、ヒマールの初出版となったアンディさんの本づくりを進めていた時期に、どちらからともなく「ゆみ子さんの本をヒマールから出しましょう!」という話になりました。その時点ではまだ原稿はひとつもなし! ざっくりと、料理のレシピとエッセイが半々くらいの本、というイメージをお互いにもってつくりはじめることにしました。

すぐに、ゆみ子さんから「こんなの書いてみた!」とタイトルをつけた短めのエッセイが続々とメールで送られてくるようになり、それがどれも毎回おもしろくって! 笑える話、じーんとする話、ゾクッとする話、軽い感じのもの、読み応えのある力作などなど。
このとき、わたしは完全にひとりの読者としてたのしんでいて、編集者として「こうしたら」「ああしたら」みたいな意識はほぼありません。読んで素直な感想や質問を送ると、それに反応してゆみ子さんが「こんなのも書いてみました!」「ちょっと書き直してみたから読んでみて〜」とまたエッセイを送ってくださる。わたしのためだけに書いてもらっているみたいで、超贅沢な気分でした!

そんなふうにたのしいやりとりを続けながら、全体の構成(章立てや収録順など)も相談しあいながら、そろそろ一冊にまとめられそう!というところで始まったのが、コロナ禍。去年の春に最初のロックダウン(アイルランドでは「コクーニング(巣ごもり)」と呼ばれていました)が始まって、この状況も書くべきなんじゃないか、と話し合った結果、本づくりは一旦ストップすることにして、ヒマールのサイト内でゆみ子さんのブログを始めました。そのことは年末にも書きましたので、ぜひお読みください!

じつは、この時期、ゆみ子さんにはコロナ禍による生活の変化と同時に、長く暮らした市街地から田舎の村のさらにはずれへのお引越しという環境の変化がありました。
2つの大きな大きな変化があったゆみ子さん、新たに書きたいことが出てくるのは当然です。実際、夏に本づくりを再開させてからもらう原稿がめちゃくちゃおもしろい! そこで「レシピとエッセイ半々ではなくて、今回はエッセイがメインの本にしませんか?」とご提案。
そうして、その後も名作や力作をたくさん受け取り、今度こそ、ついにまとめる段階に!

現在は、収録順を相談しあってほぼ決めたので、お互いにその順番で通して読み、原稿を整理しているところです。なにしろ一昨年の夏から長い期間をかけて書いていただいたものですから、あらためて通して読むと、お互いが見逃していた重複しているところや書き足したほうがよいところなど、見えてくることも多いのです。
これもまた、たのしい作業。ゆみ子さんとの作業は、いつだってなんだってたのしいのですけど!

わたしが「本づくりのブログを書き始めた」とお知らせしたら、なんと、ゆみ子さんが「本を書く側から」の文章を寄せてくださいました。

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本を書く側から。

 幸いなことに今までいくつか書籍を出版する機会を得て、さらに幸いなことに、何人もの優秀な編集の方たちと作業しました。
 1冊目は共著で、わたしは写真とイラストの担当でしたから、原稿を形にしていく過程を傍らで見学できたのはラッキーでした。
 2冊目はわたし個人の著書で、編集担当者は1冊目と同じ、コミュニケーションはばっちりとれていましたし、経験豊富なベテラン編集者なので、たくさん勉強させてもらいました。
 本作りをしてみるまで、本は書き手が作るものと思っていましたけれど、大きなまちがい。編集者なくして本はできないのです。当たり前のことなのですけど。原稿があっても、すぐに本ができるわけではないことは、すでに前回じゅんこさん(ヒマールの編集長。おともだちでもあるので、こうよばせていただいています)が詳しく書いているので割愛。

 編集者はいちばん最初の「読者」です。
 原稿をお渡しした後の反応はかなり気になるところ。書き手も様々ですから、何も気にせず書き続けていく方もいるのでしょうけど。自信ありの原稿ほど、反応が気になるものです。
 ここからは、ヒマールじゅんこさんへの賛美。
 原稿には即座に目を通し、すぐさま感想を送ってくれるのが、ものすごくありがたい。(って、無理しないでくださいね!)
 疑問点は率直に言ってくれるので、説明の足りなかった部分に気付けて、校正などの調整時期よりも前に手直しすることができます。

 大きな出版社には、校閲といって、文字の直しだけでなく、言葉の意味や文法的なことまでチェックする担当者がいて、粗忽なわたしはずいぶんと助けてもらいました。編集者が校正と校閲の二役を務めるときもあり、じゅんこさんはまさしくそんなオールラウンドプレーヤー。頼りにしています。
 ヒマールから出すわたしの新刊は、今までのエッセイ本よりも多く、アイルランドの歴史や文化に言及しているので、じゅんこさんの“Eagle eye”(アイルランドでは“鷹の目”とよばず、“ワシの目”)が重要な役割を務めます。

 本を作るのは至福の喜びで、こういう機会を得るのは、ほんとうにラッキーですし、光栄なことです。同時に責任も強く感じているので、充実した本をみなさんにお届けしたいと思っています。

 じゅんこ編集長、ひき続きよろしく!!

 松井ゆみ子

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ゆみ子さん、こちらこそ、引き続きよろしくお願いします!

松井ゆみ子さんの本づくり、山口洋さんの本づくり、ともに引き続きお伝えしていきますので、それぞれのつくり方の違いを、たのしんでいただけましたら幸いです!!

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