読むロバの会の日

でした。
参加者は1名。
読んでおられたのは、ジョージ・オーウェル(高橋和久訳)『1984年』。
「どういうストーリーかは大体知っているけれど読むのは初めて。友達とオンラインで定期的にやっている読書会があって、その会の次の課題図書なので」読み始めたのだそう。その読書会で「この本の次は村上春樹の『1Q84』を読む予定。まったく関連がないというわけでもないらしい」とのことです。

わたしは、カン・ファギル(小山内園子訳)『大仏ホテルの幽霊』。怖いのは苦手なのに、ついタイトルと装丁にひかれて読み始めてしまった長編小説。怖くてもう読むのをやめようと思いながらちびりちびり読んでしまっていて、気づけば中盤に。決定的に怖いシーンがあるというわけではないのですが、「これ絶対におそろしいことになるよね……」という空気がずーっと流れていて、なかなか先に進みたくないのです(でも気になる、という〜・苦笑)。今日『1984年』を読んでいた人は、カン・ファギルの『大丈夫な人』という短編集を読んだことがあるそうで、それも怖すぎて少しずつしか読めなかったらしく「『大丈夫な人』なのに全然大丈夫じゃなかった」とのことでした(笑)。

次の読むロバの会は4月19日(金)17時から18時ごろまでやります。
週末の夕方からやってみる日です。ご都合つく方、途中からでもぜひ。
読むロバの会は読書時間と読書空間を共有する読書会です。
各自で読みたい本を黙って読んで、帰り際に読んでいた本を見せ合っています。
なんの準備も予約も要りませんので、読みたい本を持って(または店頭で買って!)どうぞお気軽にご参加ください。

読むロバの会の日

でした。
晴れて暖かくなった土曜の午後、1名がご参加くださいました。

読んでおられたのは、マルコ・バルツァーノ(関口英子訳)『この村にとどまる』。“北イタリアチロル地方、ドイツ語圏の一帯はムッソリーニの台頭によりイタリア語を強制され、ヒトラーの移住政策によって村は分断された……”と本のカバーに書いてあり、「ああ、またこういう話の本を手に取ってしまった、と思いながら読み始めたけど、娘に聞かせるひとり語りで書かれた文章がとてもよくて、どんどん読めてしまう」そうで、読書会の1時間で3分の1くらいまで読み進んでおられました。

わたしは、キム・グミ(すんみ訳)『敬愛(キョンエ)の心』を。敬愛は主人公のひとりの名前です。この本の帯には、“心はどうやって廃棄すればいいですかーー1999年に韓国・仁川で実際に起きた火災事件を題材に、残された者たちの転機と再生を描く”とあり、わたしも「ああ、またこういう本を手に取ってしまった」と、重たい内容を想像して読み始めたのですが、ちょっとコミカル?シニカル?な感じもあっておもしろく、どんどん読めており、昨夜と今日の読書時間で3分の1くらいまで読み進みました。

「カバーや帯の紹介文などから想像していたのと、実際に読んでみたらなんか違うじゃんってこと、よくあるよね」と帰り際におしゃべりしました。『この村にとどまる』は「カバーに書いてある紹介文だけを読んで選ぶなら手に取っていないかも。新潮クレスト・ブックスの新刊だったから図書館で借りてみただけで。読んでみてよかった」とのことでした。わたしは編集者としてそういう紹介文を書く立場でもありいつも苦しんでいるので、いやほんと難しいんだよねえ、と思いながら話していました。

さて、次の読むロバの会は、4月10日(水)15時から16時ごろまでやります。
読むロバの会は読書時間と読書空間を共有する読書会です。帰り際に読んでいた本を見せ合っています。
ご予約不要ですので、読みたい本を持って(または店頭で買って!)お気軽にご参加ください。

読むロバの会の日

でした。
参加者は1名。
読んでおられたのは…
エリック・マコーマック(増田まもる訳)『隠し部屋を査察して』
おそらくマコーマック作品で唯一(少なくとも日本語訳作品の中では間違いなく唯一!)の短編集。マコーマック作品、『雲』を以前に課題図書を読む読書会で読んだので参加された方は同じように思われるでしょうけど、「マコーマックの短編って、一体どんなの?と思って読み始めた」とのこと。案の定「壮大なイントロダクション、で、いきなり終わり」みたいな短編が続くそう。どれも「この世界、ここからどうなるの!?」という、続きを長編にして読ませてほしい作品ばかりだそうです。

わたしは、昨日パレスチナのポスター展を見に行って購入した『ZINE for GAZA』を。パレスチナ・ガザ地区での即時停戦、虐殺を止めること、そしてパレスチナの解放と自由を訴えるスタンディングデモを毎日午後5時30分から午後7時まで、原爆ドーム前で続けているVigilの活動を伝えるZINEです。広島在住の作家・小山田浩子さん(課題図書を読む読書会で『穴』を読みましたね)もスタンディングに参加しZINEに寄稿されています。ほかの寄稿者も同様のことを書かれていましたが「広島の通りすがりの人、全然こっちを見ない」、反応してくれるのは「大部分が旅行者、特に海外から来たと思しき人に見える」、これ、わたしも経験したことがあるので(2008年の暮れから連日数百人の一般市民が殺されていると報じられたガザ紛争のとき、年明けに東京であった即時停戦を訴えるデモに、生まれて初めて参加しました)、その状況とそうやって無視される気持ちがすごくよくわかるのと同時に、広島でもそうなのか、あのときよりもさらに酷い状況になった今でもそうなのか、と、わかってはいたけれど(だからこうなっているわけなので)心底がっかりしました。でも、あのときデモに参加したことで現在のわたしがあり、張り紙をしたり缶バッジを作って配布したりするヒマールになり、誰か(お客さん)とそういう話もできるようになってきている実感もあるので、これからも発言していくし、Vigilの人たちも活動を続けていかれるはずだし、ちょっとずつ動いてきたことをもっと加速させていきたいと思いました。……話がそれました! 読書時間がまだあったので、柴崎友香『百年と一日』も少し読みました。文庫化されたばかりですが読めていなかった単行本で。ガザのことを考えた続きで読んだせいか、小説なのですが、オスタップ・スリヴィンスキー(ロバート・キャンベル訳)『戦争語彙集』を読んだときと同じような感じがして、みんな生きてるんだよなあ、同じなんだよなあ、と思いました。

さて、次の読むロバの会は3月30日(土)15時から16時ごろまでやります。
読むロバの会は、読書時間と読書空間を共有する読書会です。帰り際にお互いに読んでいた本を見せ合っています。
ご予約不要ですのでお気軽に、読みたい本を持って(または店頭で買って!)ご参加ください。
お待ちしています。

読むロバの会の日

でした。
月に一度は試してみている、夕方から開催の日。
参加者は1名。
読んでおられたのは、アデライダ・ガルシア=モラレス(野谷文昭/熊倉靖子訳)『エル・スール』。ビクトル・エリセ監督の名作映画「エル・スール」の基となった小説です。「『エル・スール』はとても好きな映画。スペインが舞台なのにとても寒々しい感じがして……。『瞳をとじて』(ビクトル・エリセ監督31年ぶりの長編新作だそう)公開記念で『エル・スール』も特別上映されるので、もういちど観に行く前に読んでおこうと思って。友だちに借りた」とのこと。

わたしは、チョ・ヘジン(浅田絵美訳)『ロ・ギワンに会った』を。Netflixで配信されたばかりの映画「ロ・ギワン」を先に観てから読み始めました。今日の読書時間で読み終わりたい気持ちで、すでに途中まで読んでいたけど読み終わりませんでした〜!なので、結末がまだわからないけれど、小説と映画、どちらを先にしようかと迷っている方へ、これは別のものだと思って、どちらからでも、両方をあまり比較せずに読んだり観たりするほうが楽しめるんじゃないかと思います。小説からロ・ギワンのプロフィールを借りてつくられたのが映画、という感じかなー。ほかの登場人物も変換(?)されてこの人になったんだろうなと思う人物もいなくはないけど、別のストーリーと言ってよいかと。

そういうわけで、今日はたまたま、どちらも「映画の基になった小説」を読んでいたわけですが、「やっぱり映画より原作小説のほうがおもしろいよね」とわたしが言うと、「エル・スールは映画のほうがいいかも」とのことでした!

次回の読むロバの会は、3月20日(祝・水)15時から16時ごろまでやります。
読むロバの会は、読書時間と読書空間を共有する読書会で、帰り際にお互いに読んでいた本を見せ合っています。
ご予約不要ですので、読みたいを本を持って(または店頭で買って!)お気軽にご参加くださいね。

多謝!ギターパンダLIVE

久しぶりにお迎えすることができたギターパンダ。
なんと、4年半ぶりでした!
ご来場くださったみなさん、お待たせしました!&ありがとうございました!

この4年半、身近なところでも世界でも酷いことが起こりすぎていて、正直なところ、のんきなヒマールでも、楽しいことを企画しながら「こんなことやってる場合かな……」と思ってしまったり、店という場所の存在意義に向き合いながら「もっともっと自分たちにできることがあるはず」と試行錯誤したり、そういう時間が以前よりも増えました。

ギターパンダの正体、山川のりをさんは昔からずっと変わらずに、多くの人が見たくないから見ないようにしていることや、考えるのがめんどくさいから考えないようにしていることを、歌にして気づかせてくれている人ですが、今回「ちょっと歌の補足説明をします」というのりをさんのMC(!)を生まれて初めて聞いてびっくりして、歌詞に込めた意味を気づく人だけが気づけばいいというんじゃもう間に合わない、世界の深刻さをあらためて思いました。
沖縄で自衛隊のミサイル配備が始まってしまったこと、ガザでパレスチナの人々がイスラエル軍に殺され続けていること、差別が社会を壊していっていること。
それでも! 深刻な状況に立ち向かうエネルギーを奮い起こしてくれるもの、それがロックだと思っています。
1曲目からアンコールまで、ぜんぶ素晴らしかったです!!
まさに「今」のライブでした!!!
のりをさん、ありがとうございました!

写真はナガツカアキラさん。いつもありがとう!
手伝ってくれた妹も、いつもありがとう。

ギターパンダは、ヒマールのライブの原点なので、これからもお届けできるように、歌をうたいながら店を続けていきます。

先走る気持ちをいなして 一歩ずつ/落ち着いて 基本に忠実に
基本に忠実に 理想を忠実に/少しずつ良くなるように/途中で投げ出さないように
基本的人権を忠実に
(by ギターパンダ「陰謀論2」)

「韓国の本を巡る旅」で考えたこと/考えていること

この数年、韓国に行きたいなあ、いつ行こうかなあ……と考え続けていたら、思いがけず実現しました。
書店として毎年参加しているK-BOOKフェアで、昨年はBOOK MEETS NEXTキャンペーン(出版文化産業振興財団)の一環として参加書店の「飾り付けコンクール」があり、SNSに投稿したヒマールのK-BOOKフェア・コーナーの写真が優秀賞に選ばれて、「韓国の本を巡る旅」にご招待いただいたのです。

3月1日からのソウル2泊3日「韓国の本を巡る旅」ツアー。
ソウルの書店と図書館巡りを、CUON(クオン:韓国の翻訳本を中心とする東京の出版社)の金承福(キム・スンボク)社長がコーディネート、案内そして通訳までしてくださるという、とても贅沢な内容です。
ツアー参加者は、ヒマールと同じく優秀賞に選ばれた岩手県の東山堂さん、そして全国各地で開催されたBOOK MEETS NEXTのスタンプラリーに参加・応募して当選された方々、総勢9名。

まずは、江南(カンナム)にある「チェ・イナ本屋」へ。
長く広告代理店で活躍され、韓国では誰もが知る名コピーをいくつも書かれたチェ・イナさんが共同代表のおひとり。大通りに面した落ち着いた雰囲気の建物4階にある空間は、高い天井の上のほうまで壁全体が書棚になっていて可動式のはしごがかけられ、ロフト部分にはカフェスペースがあってコーヒーの香りが漂い、スタイリッシュだけれど居心地のよい温かみも感じられます。その奥にある小部屋で、チェ・イナさん自ら資料を用意して1時間ほどお話をしてくださいました。
なぜ江南のこの場所で本屋を始めたのか、なぜ「書店」ではなく「本屋」なのか、店で毎日のように開催しているさまざまなプログラムのこと、チェ・イナ本屋が大切に考えていること、本屋をやりながら自分に問い続けてきたことなどについて。
「思考」を重要とされていることに強く共感し、足を運んでもらうための空間づくりやイベント企画の具体例には刺激を受けました。洗練された店やオフィスが多い大人の街である江南で、クリエイターをはじめとする「働く人」を主なターゲットとされているチェ・イナ本屋とヒマールとでは環境も客層も異なるので、そのまま真似をしてもうまくはいかないだろうけど、自分の店に合わせてアレンジして試してみたいアイデアが、お話を伺いながらいくつも浮かんできました。

チェ・イナ本屋では金社長に本選びを手伝っていただいて、ペク・スリンさんの日本でまだ翻訳されていない作品を一冊購入しました。
棚に並ぶ韓国の本は、ハングルの文字がグラフィカルなこともありますがどれも素敵なデザインで、凝った装丁のものが多いように感じました。
金社長に尋ねてみると、手に取ってもらえるように、持っていたくなるように、装丁に凝る傾向が年々強くなっているとのこと。そのぶん値段は上がっている、とのことでした。

次に向かったのは、巨大ショッピングモールの中にある「ピョルマダン図書館」。
2フロア分を吹き抜けにした空間には天井から自然光が差し込み、巨大な書架がそびえ、人々がエスカレーターで行き交っています。韓国ドラマのロケなどにもよく使われているようで見覚えのある風景でした。
図書館と言ってもここで本を借りることはできません(もちろん買うこともできません)。ショッピングモールのテナントが並ぶ通路から無料で自由に出入りできて、好きなだけ蔵書を読むことはできます。が、訪れた日、休日(三・一独立運動記念日:1919年、日本の植民地支配下で民族独立運動が起きた日を記念している)だったこともあり歩き回るのがたいへんなほどの混雑ぶりだったにも関わらず、本を手にしている人の姿はあまり見ませんでした。ほとんどは写真を撮るなど観光で訪れている人たち(自分もそのひとりだったわけですが……)。平日は違うのかもしれませんが、少なくとも訪れた日はとても本を読む気にはなれない場所で、ここは図書館ではなく観光スポットだな、と感じました。
出入り口の隅で床に座り込んだ子どもが3人ほど、傍らに本を積み上げて読書に没頭していました。買い物中の大人を待っているのかなと想像しながら、人混みにうんざりした気持ちがちょっとだけ救われました。

最後の訪問先「本屋オヌル」へ向かうバスの中で金社長が「よかったら、本屋オヌルへ行った後、ハン・ガンさんとお話できます。参加したい方は?」と何気ない感じでおっしゃいました。……え、ハン・ガンさんって……あのハン・ガンさん!? そんな、まさか……!?
贅沢なツアーだと思っていたけれど、さらにこんなサプライズまで用意されているなんて! にわかに緊張してきました。

「本屋オヌル」は景福宮の西側、伝統的な韓屋(ハノク)も多く残る西村(ソチョン)の小さな通りにある小さなお店です。西村は、こぢんまりとしたカフェや雑貨屋など個人店が多いエリアのようでした。
本屋オヌルに入るとすぐアップライトピアノにぶつかります。10坪ほどのこの空間で音楽ライブをやったり、日本で翻訳出版もされている著名作家のブックトークなどもよく開かれているそうです。また、店の奥には公衆電話のボックスがあって(文字通りボックスごと!)、そこで写真を撮る人が多いのだとか。訪れた日には実際に電話をかけている人もいました。
店に並べる本はオーナーと店長、週末だけ働いている店員のそれぞれが選んでいるそうで、佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』やカナダの作家の本など韓国語に翻訳された海外文学の本も目につきました。棚には手書きのコメントが貼られていて、コメントが手書きされた紙に包まれた「買ってみるまでわからない本」のコーナーもあります。店のオリジナルデザインで作られたポストカードやマスキングテープ、トートバッグなども売られていて、店の感じとしては、チェ・イナ本屋よりもヒマールに近いように思いました。

本屋オヌルでは、この後にお会いするハン・ガンさんの最新作(日本でもまもなく3月29日に斎藤真理子さん訳で白水社より出版される『別れを告げない』)が平積みされていました。どちらにしようかちょっと考えて、ヒマールでよくお客さんに紹介している『少年が来る』と、オリジナルグッズをいろいろ購入しました。

カフェでハン・ガンさんの隣りに座って甘いバニラ・ラテを飲みながらお話できたひとときは、わたしにとって夢のような時間で、もう今夜日本へ帰ることになってもいい(初日なのに!)とさえ思えた、旅のクライマックスでした(どんなお話をしたかは書きませんので、よかったらヒマールまで話を聞きにいらしてくださいね。遠方からもぜひ)。
金社長が通訳してくださったおかげでお話できたわけですが、金社長と東山堂さんが席を立たれてハン・ガンさんとふたりきりになった時間があり、話そうとすればするほど頭が真っ白になって韓国語はもちろん英単語さえなかなか出てこないわたしの言葉を、ハン・ガンさんはおだやかな笑顔でじっとこちらの目を見ながら待ってくださり、なんてやさしい人なんだろうと感激するのと同時に、こんなわたしにつきあっていただいていることが申し訳なくなりました。次は(次があるならば!)ちゃんとお話できるように、韓国語学習を頑張ろうと決意した次第です。

「韓国の本を巡る旅」を経験して、韓国も日本も、本と本屋が置かれている状況はとてもよく似ていると感じました。現地のガイドさんが「地下鉄でもみんなスマホを見ています。本を開いている人がいたら、わー、偉いねえ、と感心してしまうくらいめずらしいです」と話されていましたが、日本もまったく同じですよね。そんな状況の中で、本屋がそれぞれに悩み、創意工夫と試行錯誤で本屋を続けていく道を模索しているのも同じだと思います。
わたしは今回の旅で、試してみたいアイデアや今後の展開のヒントを得ることができたので、こんなふうに韓国と日本の本屋が交流する機会が(すでに交流されている本屋同士もあるかと思いますが)もっと頻繁にあったらいいんじゃないかと思いました。
このような貴重な機会をいただいて、BOOK MEETS NEXTキャンペーン事務局とK-BOOKフェア関係者の方々、とりわけCUONの金社長にとても感謝しています。

奇しくもこのタイミングで「経産省が街の書店振興のプロジェクトチームを設置」のニュースが伝わり、SNS上でもさまざまな意見が出ています。
わたしは、各書店の努力ではどうにもできないこと(例えば、薄利多売時代の流通システムがいまだに主流のままであることとか)もあるので、業界全体、自治体、国、そういった大きな単位でしかできないことをやってもらえるのであれば、ぜひお願いしたいと思います。くれぐれも、本屋(出版社も)が本にかけるべきエネルギーを削がれることになったり、本のインテリア化が進むことになったり、権力者のオトモダチ企業を潤すことが目的になったりすることだけはないように、注視して声をあげていきたいです。



読むロバの会の日

でした。
参加者は1名。
読んでおられたのは、梨木香歩『物語のものがたり』。前回、わたしが梨木香歩さんの『歌わないキビタキ』を読んでいたのを見て「梨木香歩作品が読みたくなって」と。
『物語のものがたり』も『歌わないキビタキ』と同じくエッセイ集。タイトルから想像できるとおり、児童文学をめぐるエッセイがおさめられています。
今日の読書時間ではフランシス・ホジソン・バーネットの『秘密の花園』について書かれた部分を読んだそう。『秘密の花園』、以前に課題図書を読む読書会で畔柳和代さん訳のものを一緒に読みましたね。「こんな読み方もあるのか!とおもしろくて。再読したくなった」とのことです。

わたしは、ハン・ガン(古川綾子訳)『そっと 静かに』を。ハン・ガン作品、日本で翻訳出版されている小説は全部読んでいますが、エッセイは初めて。実は先日、「韓国の本を巡る旅」に参加しまして(このことは明日にでもアップします)、思いがけずハン・ガンさんにお会いしてゆっくりお話をさせていただく機会があったのです! お会いできると知っていたら、この本も先に読んでおいたのに……と思ったのですが、今日読み始めてみると、実際にお会いしたからこそ、ハン・ガンさんにはこんなことがあったんだな、こんなことを考えておられたのだな、というのがとても近くに感じられて、お会いしてから読めてよかったなと思いました。小説だったらそうは思わないかも、エッセイならではかも、とも。

次の読むロバの会は3月15日(金)17時から18時ごろまでやります。
昼間でなく夕方です。時間にお気をつけください。

読むロバの会は、読書時間と読書空間を共有する読書会です。
各自で読みたい本を黙って読んで、帰り際に読んでいた本を見せ合っています。
ご予約不要です。お気軽にご参加くださいね。

読むロバの会の日

でした(昨日になりましたが)。
参加者は2名。

それぞれに読んでおられたのは…
『日本幻想文学集成 内田百閒』
ジョイス・キャロル・オーツ(栩木玲子訳)『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』

新編が出ている『日本幻想文学集成』シリーズですが、旧版から『内田百閒』の巻を持って来られました。前回の読書会の日に、ちょうど楢喜八のヨゲンジュウ原画展を開催中でクダン(件)の話になり、「百閒先生の『件』を読みたくなって」再読とのこと。「やっぱりいつ読んでも百閒先生はいい。おもしろい」と。

『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』は、「タイトルにひかれて買ってみた」とのこと。『とうもろこしの乙女』というタイトルの中編のあとに6つの短編が続くようですが、それらが関連があるのか、全体で『七つの悪夢』になるのかは「まだわからないけど、たぶん関連はないんじゃないかな」とのこと。

わたしは、梨木香歩『歌わないキビタキ』を。毎日新聞での連載エッセイをまとめた一冊。百閒先生と同じく、やっぱりいつ読んでも梨木香歩はいいです。おもしろい。鳥や植物の話、政治の話、親戚の人や自分の病気の話……ばらばらに見えて決してばらばらでない、人生だなあ、と思いました。百閒先生を読んでいた人と、海外文学を素晴らしい翻訳で読めるのはもちろんありがたいことだけれど、こうして日本語で書かれた素晴らしい文章をそのまま味わえることを体験すると、ほんとうに得をした気持ちになるね、というようなことを話しました。ありがたい。

次の読むロバの会は、3月7日(木)15時から16時ごろまでやります。
読むロバの会は、読書時間と読書空間を共有する読書会です。
各自で読みたい本を黙って読み、最後に読んでいた本を見せあったりしています。
なんの準備も(予約も)いりませんので、どうぞお気軽にご参加くださいね。

読むロバの会の日

でした。
参加者は2名。

それぞれに読んでおられたのは…
松井ゆみ子『アイリッシュネスへの扉』
ジャン・エシュノーズ(関口涼子訳)『ラヴェル』

『アイリッシュネスへの扉』は、前回に続いて。アイルランドが舞台の新作映画「コット」を観てこられたばかりだそうで、その映画とこの本に重なる部分も見つけながら(たとえば、水の事故で亡くなったこども、ゴム長など)いっそうおもしろく読み進めている、と話してくださいました。

『ラヴェル』は、「ボレロ」などで知られるフランスの作曲家・ラヴェルの晩年を描いた小説。「まるで音楽のような文章!」とのこと。ラヴェルはとてもユニークな人だったようで、アメリカへの演奏旅行の船旅では一日に何度も服を着替え、パジャマだけでなんと27着も持って行っていて「今日はエメラルドグリーンのパジャマにしよう、と着替えたり、読んでいて笑えておもしろい」そうです。

わたしは、岡真理『ガザとは何か』を。昨年10月の早稲田大学と京都大学での講義内容をまとめて緊急出版された一冊。ちょうどその頃に、わたしは広島の大型書店へ行く機会があって、書店員さんに「パレスチナ問題について書かれた本が読みたいのですが、どのへんにありますか?」と尋ねたところ、「そういう本はまだないですね。ウクライナとロシアの本ならあるんですけど」と言われ、いろんな意味ですごくショックを受けたことがありました。その後、あまり詳しくない人でもわかりやすく読める本はないだろうかと自分なりに調べてみて、選択肢はあまり多くないなと感じ(絶版で仕入れられなかった名著も多いです)、この現状こそがまさに、日本(世界も)のほとんどが70年以上パレスチナを見ないようにしてきたということなのだなと感じました。遅いことはわかっているけれど。「まずここから」の一冊として、この本はとてもわかりやすかったのでおすすめしたいです。

次の読むロバの会は2月27日(火)15時から16時ごろまでやります。
火曜は定休日ですが、この週は「北岡幸士・渡辺キエ 二人展」会期中につき営業します。
読むロバの会は、読書時間と読書空間を共有する読書会です。
ご都合のつく方はぜひ。いっしょに本を読みましょう。

読むロバの会の日

でした。
木曜の夕方17時。
3人がご参加くださいました。ありがとうございました!

それぞれに読んでおられたのは……
鎌田東二『超訳 古事記』
松井ゆみ子『アイリッシュネスへの扉』
『冬の本』

『超訳 古事記』、古事記は原文・読み下し文で読むのはとても難しく、たくさんの「訳本」が出されていますが、これは超訳というだけあって「とても読みやすくて、一気読みできそう」と。「ちょっと前に町田康さんの『口訳 古事記』も読んだのですが、おもしろかったです!」とのこと。そういえば、以前に課題図書を読むロバの会でも古事記を読んだことがあったね……という話になり、どの訳本を読んだんだったっけ?と思い出せずにいたら、読書会を一緒にやっている人から帰宅後に連絡もらい、福永武彦『現代語訳 古事記』でした!

『アイリッシュネスへの扉』は、「最近、続けてアイルランド関連のニュースを目にすることがあったので、今日来て店頭で見て、気になって手にしてみました」とのこと。読みながらたくさん書き込みをされているようでしたが、「歴史とともにある生活なんだなあ、と。松井さんの文章がとてもいい。じっくり読みます」とおっしゃっていました。ヒマールで出版した本なので、読んでいただけて感想も伺えて、とても嬉しいです!

『冬の本』は、冬を描いた本、冬を連想させる本など、「冬」と「本」をテーマに、84人が書いたごく短い(見開きページくらいの)エッセイをまとめた一冊だそう。短いエッセイは、どんどん読めそうないっぽうで、「続けて読むと、文体などがばらばらなのが気になって、入り込めない感じもある」とのこと。「青山南さんが取り上げている本(昔のニューヨークへ行きたいと強く願っているうちに、写真を見ていたらタイムスリップできるようになった……というSF小説?←追記:ジャック・フィニー『ふりだしに戻る』でした!)がおもしろそう」と話されているのを聞いていたら、わたしもそれが読みたくなってきました。

わたしは、オスタップ・スリヴィンスキー(ロバート・キャンベル訳)『戦争語彙集』を。著者はウクライナの詩人で、ウクライナの西の端・リヴィウ在住。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻以降、爆撃が多い地域からの避難者が急増したリヴィウでボランティアをしながら、避難者たちの話を聴き、そこから77の言葉とその証言を記録した文芸ドキュメントを発表しました。訳者のキャンベルさんは、そのドキュメントを英訳から日本語に訳し、言葉の背景に近づくために著者とオンラインで対話を重ね、さらにはリヴィウを訪れて著者の聴き取りにも同行、そのときの手記もあわせて収録されています。戦争に巻き込まれ犠牲になっているのは、当たり前だけど一人ひとり名前のある人間で、それはたまたまわたしじゃないだけで、わたしであってもおかしくはないんだってこと、考えずに忘れていたいと思ってしまうこともあるのですが、覚えていなくちゃいけないです。

さて、次の読むロバの会は、2月18日(日)15時から16時ごろまでやります。
各自で黙って好きな本を読む、読書時間と読書空間を共有する読書会です。ご予約不要。お気軽にご参加ください。
以前やっていた課題図書を読むロバの会も、そろそろ再開してみたいなと思っています(各自で読むロバの会は続けつつ)。ご意見やリクエストなどありましたら、どうぞお聞かせください。