こちらは「読むロバの会(オンライン読書会)」の会場です。
日々のブログの更新は、ひとつ下の投稿から始まります。
2月の「読むロバの会(オンライン読書会)」
課題図書は……
広場
崔仁勲(チェ・イヌン)著/吉川凪訳
CUON(クオン)刊
1月に初めて韓国文学を課題図書にして、「いま」の韓国文学からSF作品を読みましたので、続いて「20世紀の名作」といわれるロングセラー小説を読んでみましょう。
2月末までの1ヶ月間、上記の課題図書を読んだ感想を、このブログのコメント欄に書いていってください。
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読了しました!
”哲学者の卵” 李明俊の「生きるとは」「愛とは」という苦悩、それは多かれ少なかれ誰もが向き合ったことのある普遍で不変の問いだろうと思いますが、その若者の苦悩に、朝鮮戦争という時代が被さってきます。
著者が序文のひとつ(1960年に発表されたこの小説は、何度も版を改めているため複数の序文が存在するそうで、それらの訳を出版社・CUONさんのサイトで読めるようになっています。ヒマールで本をお求めの方にはプリントして差し上げています)で書いていますが、
「主人公が悩んだ人生の問題には、時代に深く関わる部分と、そうでない部分があるのは事実だ。しかしそうは言っても、その二つをはっきり分けられないのが人生というものだ。」
これはそのとおりだと思うと同時に、だからといって、いま日本でこの小説を読むわたしたちが李明俊の人生を理解するのが難しいかというと、まったくそんなことはない、と思いました。
わたし自身はバブル期に青春時代を過ごしましたが、バブルでたのしかったことなどなく、むしろ悶々として、ミョンジュンのように理想を描いたり絶望したり、いきがったり自信をなくしたりしていましたから。
読んでいるあいだ、昨年読んだジャック・ロンドンの「マーティン・イーデン」を思い出して重ねていました。
この小説の終わり方、読了した方が増えたら、語り合ってみたいです。
また書きます。
「広場」と「部屋」、という考えかたがいいな、と思った。
それがわかって、この本のタイトルの意味もわかる。
ああでもないこうでもないと考えながら、あっちこっちしてみたものの、
結局どっちも思うようにならない、窮屈で息苦しい場所にしかならない、
だけどそれは当人の責任だけではない、ということは別にこの主人公の
場合に限ったことではなくて、ヒマール(じ)さんの記述にもあるように、
誰にとっても人生ってそういうものだ、とまあ言ってしまえばそういう
ことなんだけど。
本文pp.170-171より引用
『明俊は、反論しようと思って顔を上げ、息を呑んだ。彼に向かっている四つの顔。そ
れは四つの憎悪だった。間違っているかはともかく、上司の言うことには膝を屈して頭
を下げることを強いる人たちの、いら立ちのあまり怒りに満ち、憎しみにゆがむサディ
ストの顔だった。明俊は自分がどんな態度を取るべきなのかを、瞬時に理解した。謝ろ
う。ともかく間違っていたと言おう。その判断は正しかった。会議はそれから十分後に
終わった。明俊は神妙な顔で偉大な先人の言葉を長々と引用しながら、間違いを改め、
党と政府が望む働き手になることを誓った。明俊は、四人の先輩党員の面持ちが、くた
びれた末の安堵と勝利の表情に変わってゆくのを見ながら、自分が貴重な要領を会得し
たことに気づいた。悲しい悟り。身につけたくなかった知恵。彼は胸の中で何かが崩れ
ていく音を聞いた。』
わきまえることを覚えると会議は短くなる、と書いてある。
この場面、わたしもよく覚えています。
どの国でもどの時代でも、同じなのだな、と。
さておき、明俊は生きるため(文字通りの意味で)に「身につけたくなかった知恵」を身につけるしかなかったわけだけど、結局はそうしてしまったことで「部屋」も「広場」も崩れて、結局は生きられなくなってしまう。
恩恵を愛することは、「部屋」と「広場」のかわりになる場所なのかな、とも思ったのだけど、どうだろう?
読みながら、明俊は自分のことしか愛せない人のように感じていたんけど、許しを請う恩恵に「愛しているというのは、許すという言葉を十回繰り返すのと同じじゃないか?」と言うのを聞いたときに(読んだときに)、恩恵をほんとうに愛しているのだな、と感じました。
三人称ではあるけれども、ほぼ明俊の視点から語られている
から、ほんとはどうなのかは読み手次第かな。
どうにも居場所がなくて、受け入れてくれる相手が恩恵だけ
だからとりあえずそこに逃げ込んでいる、というようにしか
見えないけど、だからといってそれが愛ではないとも言えない
わけで、とはいえ、明俊の女性観はいまとなってはあまり
大きな声で発表できるものではないかもしれない。
そこ以外にも古さを感じさせるところはあるけど、全体を
通しては、「若いな、若いな」と読みながらずっと思って
いました。生き生きとして鮮やか。
いつその本を読むか、何歳で読むか、どんな時期に読むか、
によって受ける印象は大きく違ってくるから、この本はぜひ
若いときに読んでほしいな。
そしてまた年を取ってから読んでみてほしいな。
そういう本でした。
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