こちらは「読むロバの会(オンライン読書会)」の会場です。
日々のブログの更新は、ひとつ下の投稿から始まります。
読んで書く、文章に親しみ愉しむ読書会です。
本を読んで感じたこと、考えたこと、それを言葉に、ましてや文章にするのはなかなか難しいかもしれませんが、どうぞ気軽に書いてみてください。
12月の「読むロバの会(オンライン読書会)」
テーマは……
「今年の一冊」
毎年恒例の12月のテーマ。
この一年にそれぞれが読んだ本の中から、一冊を紹介しあいましょう。
今年読んだ本であればOK。今年出た本でなくて構いません。
一冊といわず、何冊紹介してもらっても構いません。
本として出版されているものであれば、ジャンルは問いません。
12月末までの1ヶ月間、上記のテーマで選んだ本について、このブログのコメント欄に書いていってください。
匿名でもOK。
何度書いてもOK。
誰かのコメントに返信してもOK。
書き方は自由です。
ご参加をお待ちしています!
2021年11月の読むロバの会「テーマ:K-BOOK」はこちら!
2021年10月の読むロバの会「テーマ:酒」はこちら!
2021年9月の読むロバの会「テーマ:老い」はこちら!
2021年8月の読むロバの会「テーマ:戦争と平和」はこちら!
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2021年1月の読むロバの会 「わたしたちが光の速さで進めないなら」はこちら!
2020年12月の読むロバの会 「今年おすすめの一冊!」はこちら!
2020年11月の読むロバの会 課題図書「地下鉄道」はこちら!
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「オーバーストーリー」
リチャード・パワーズ著/木原善彦訳(新潮社)
600ページ超の長編。昨年から読み始め、今年の春に読了しました。
まず「根」と題した章の中、「ニコラス・ホーエル」「ミミ・マー」「アダム・アピチ」……と人物名をタイトルにした項でそれぞれの人生が綴られていきます。タイトルとしては9人の人生。予備知識なく読むと、あれ?これ短編集だったっけ?と思うくらい、別々の、それぞれ完結しているといってもいい物語です(それぞれ「その後」が気にはなりますが)。共通しているのは、どの物語にも「木」が象徴的に登場すること。ニコラス・ホーエルなら栗の木、ミミ・マーなら桑の木、アダム・アピチならニレの木……。
続く「幹」「樹冠」「種子」の章で、9人のその後の人生がひろがり、接触し、つながっていきます。高さ100メートルのレッドウッド(セコイア)、アメリカ大陸最後の原始林を守る戦いを巡って。
おかしな言い方ですが、書かれている物語以上の物語の壮大さ。
陳腐な言い方ですが、自然の偉大さと、人間の愚かさと愛おしさ。
すごい本に出会ってしまった、と打ちのめされました。
なにより、木の描写がすごくて(すごくて、としか表現できない自分が恥ずかしい!)、この本を読んでから木を見る目が変わりました。ほんとうに。
たくさんの人が読んだらいいと思うので、文庫化されることを願っています(ハードカバーの本体価格は4,300円なのです。でも、それ以上の価値はあります!)
私も読んでみたいと思っているんですが、600ページ4300円はハードル高いですね。
文庫化されて欲しいです。
『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』
(斉藤倫著、2019年、福音館書店)
小学校の男の子が、学校と家の途中にある謎のおじさんのうちに遊びに来ると、カップラーメンができるのを待っている時だったり、庭の草取りの続きをどうしようかと考えている時だったり。男の子は学校で先生に怒られたことや宿題のことを話し、おじさんは、そのことを受けて家の中に山と積まれた本の中から、いろんな詩を紹介してくれるという十の短いお話。
タイトルの通り、子どもがおとなになっていく刹那を切り取っているとともに、いろんな詩の読み方、詩をつくっていることばのことなど、いろいろ考えさせてくれる。というか、文章全体が詩のような、いとおしくなるような作品。
子どもに読み聞かせしてもよさそうだし、普通に大人の知り合いにも紹介したくなる。
この本、わたしも大好きです。
本そのもののたたずまいからして、シンプルに
ひきつけられます。
『<責任>の生成―中動態と当事者研究』
(國分浩一郎・熊谷晋一郎著、2020年、新曜社)
ともに著作を読んだことがあって、関心を持っている2人が行った対談と講義(2017年から2018年にかけての4回分)をまとめた本ということで、謎なタイトルながら読んでみたのですが、これがなかなか面白い。
最初のほうで、主に統合失調症という精神障害を抱える当事者たちが共同で事業を行っている北海道の「浦河べてるの家」(以下、「べてるの家」)での取り組みが取り上げられていて、まず心を掴まれてしまいました。
「べてるの家」では、いろいろと問題が起きてしまって、普通はそういう場合、犯人捜しになってしまいがちなのですが、例えば、放火が起きた時、それを誰が起こしたというよりも自然現象としてとらえて、一度外に置いてみて、みんなでどうしてそんなことが起こってしまったかをじっくり話し合うのだそう。そうして、そういうある意味責任を棚上げにしてしまうと、逆にその現象のメカニズムが次第に解明されていって、結果として、自分がしたことの責任を引き受けることができるようになったりすることがあるのだそうです。
また、当事者研究の具体例としてあげられている、自閉スペクトラム症の人が、空腹感がわからないというとき、実は視覚や聴覚など外からやってくるいろんな刺激と、皮膚の外側や内側からもたらされる様々な刺激(昨日シャンプーしてないから頭がかゆいとか、指のささくれが痛いとか)が等価に意識に上ってきて、その中にまぎれている空腹感を絞り込んでまとめ上げることがなかなかできない場合があるらしいということも考えさせられる。逆に、いわゆる健常者は、いろんなしがらみを「うっかり」絞り込んでまとめ上げてしまっているのじゃないのか、とも。
そして、「意思」の概念を発見したのはキリスト教哲学ではといわれていることや、「意思」があったから責任が問われるのではなくて、責任を問うべきだと思われるケースにおいて、意思の概念によって主体に行為が帰属させられているのだという話になったり、社会的に注目される障がいも変遷していき、ある時代に注目される障がいには、その時代の規範のネガみたいなところがあるかもしれないなどと、どんどん、2人のやり取りの中で、個別具体的な障がい者の話と、哲学的な話が入り組んで深まり、面白くなっていくのです。
もう一度読み返してみたいと思えるような場所が何か所もある本です。
『映画広告図案士 檜垣紀六 洋画デザインの軌跡:題字・ポスター・チラシ・新聞広告集成』(スティングレイ、2020)。ちょうど1年前の12月に刊行された本ですが、読んだのは今年になってから。
檜垣紀六は1940年山口県生まれ。1960年代から現在に至るまで、無数の外国映画の日本版ポスターを手掛けてきたデザイナーです。本国のポスターを大胆にアレンジ、写真を撮り直し、絵を描き足して、さらには日本語タイトルのロゴを作成。結果として出来上がった日本版ポスターは、しばしばオリジナル版を大きく上回るインパクトを与えます。
その檜垣紀六のポスターやチラシ・新聞広告を集成し、製作の裏話満載のインタビューを収めたのが本書。見ごたえ・読みごたえたっぷりです。
個人的なことを言えば、1980年代前半に中学生になって映画館に行きはじめ、『キネマ旬報』ではなく『スクリーン』と『ロードショー』を愛読し、テレビでは吹き替えで(いま思えば主に1970年代の)洋画を浴びるように見ていた身にとって、檜垣が宣伝を手がけた映画はどれもこれも――観ていなくても――懐かしいものばかり。眺めていると時がたつのを忘れてしまいます。
オンライン読書会、楽しかったです。どうぞよいお年を。
出版社のページで内容見本を見てみました。
記憶に残っているビジュアル、ロゴがいっぱいでした!
山口県出身の方なのかあ、とも。
今年はご参加いただきほんとうにありがとうございました。
よろしければぜひ来年もおつきあいください。
どうぞよいお年を。
クレメンス・マイヤー『通路にて』(杵渕博樹訳、新潮社 2010年)
『夜と灯りと』という短編集におさめられたひとつの小説なので、
今年の一冊、ではないのですが。
『希望の灯り』という映画が好きで、その元になった短篇ということで
読んでみました。
それと知らなければ、すっと通り過ぎてしまうぐらい小さな作品です。
旧東ドイツ、巨大なスーパーマーケットで働く青年とその周囲のひとたちを
めぐる、ほんとにささやかな小説。素っ気ないぐらい装飾のない文章。
映画のほうもセリフや説明の少ない静かな作品だったけど、こちらはさらに
音もなく進み、最後にかすかに聞こえてくる音に耳が引きつけられます。
いい小説。みなさんにおすすめしたいところですが、調べてみたところ、
すでに絶版となり、古本でも手に入れにくそうです。
新潮社のクレストブックスでもこうなのか、と胸がしめつけられるようです。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
読むロバの会にご参加のみなさま、オンライン読書会の一年、ありがとうございました。
来年もご一緒にいろいろな本を読んでコメントをやりとりしていけたらと思っています。
新年1月の会場は年が明けてからぼちぼちオープンします。
どうぞよいお年を。
のんびりと本が読めるお正月休みを過ごされますように。
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