こちらは「読むロバの会(オンライン読書会)」の会場です。
日々のブログの更新は、ひとつ下の投稿から始まります。
読んで書く、文章に親しみたのしむ読書会です。
本を読んで感じたこと、考えたこと、それを言葉に、ましてや文章にするのはなかなか難しいかもしれませんが、どうぞ気軽に書いてみてください。
7月の「読むロバの会(オンライン読書会)」
テーマは……
「自転車」
7月末までの1ヶ月間、上記のテーマで選んだ本について、このブログのコメント欄に書いていってください。
過去に読んだ本から選び、オススメ紹介文を書いてもよし。
テーマをもとに自分自身の今月の一冊を選んで、読んだ感想などを綴ってもよし。
匿名でもOK。
何度書いてもOK。
誰かのコメントに返信してもOK。
書き方は自由です。
ヒマール店頭でも、今月のテーマで本をセレクトして並べますので、よかったらチェックしにいらしてください。
ご参加をお待ちしています!
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フラン・オブライエン『第三の警官』大澤正佳訳(白水Uブックス)。
こちらのサイトを開き、「アイルランドと北欧音楽の夕べ」のお知らせを見るたびに、聴きに行ける人は羨ましいなあ、と思うのです。
そこでふと、アイルランドの奇妙な作家の奇妙な自転車小説を連想しました。
名前のない語り手「ぼく」は、あるできごとがきっかけで、謎の世界に迷い込みます。訳者解説によれば、「三人の警官……の管轄下にあるこの異様な領域の住民はすべて自転車人間である。警官たちの主要な任務は自転車と自転車乗りとの間の原子交換から生ずる自転車人間(あるいは人間自転車)の状態を確認することであり、ブラック巡査部長は盗難車の捜査発見にいそしんでいるが、原子交換率の低下を狙って自転車を盗み隠匿するのはほかならぬ彼自身なのである」。――なんのことやら、という感じなのですが、本当にこの通りの小説なので仕方ありません。
自転車人間だらけの異世界で、やがて語り手も素敵な一台にめぐりあいます。「この自転車そのものには何か独特の調子というか個性といったものがあるようで、並みの自転車とは段違いの卓越した貫禄が備わっています。隅々まで手入れが行き届いていて、暗緑色のハンドルと潤滑油入れは気持ちのいい光沢を帯び、車輪の輻と枠は錆ひとつなく爽やかにきらめいています。……これまで知っていたどの自転車よりもぼくの好みに適っていましたし、二本足の人間に対して抱いたよりもさらに切実な好意すら感じられました」。実際に乗ってみると快適そのもの、「この自転車の申し分のない乗り心地、彼女との完璧な連帯感を言い表すべき言葉を知りません。それに、彼女の車体の一つ一つの部品から伝わってくる優しい反応はどう表現すればいいのでしょうか? 気のせいか、彼女とは長年の付き合いで、お互いにすっかり気心が知れている仲のように思えてきました」。
一体、何なんですか!?この小説は!?
こんな小説があったとは・・・読んでみなくては!
アイルランドと北欧音楽の夕べに反応してくださり、ありがとうございます。
来ていただける距離だったらいいのになあ、と思います!
自転車小説と言われて私が真っ先に思い浮かべるのは、近藤史恵の『サクリファイス』『エデン』『サヴァイヴ』『キアズマ』の4冊。
いずれも自転車ロードレースの話です。
自転車ロードレースは、個人で成績がつくのにチーム競技であるという、知らない人にはちょっとややこしい(?)スポーツなのですが、そんなルールや“あるある”を細かくしっかり盛り込んで自転車ロードレースファンを興奮させつつ、いっぽうでその世界を全然知らなかった人にもおもしろいと思わせてしまう、近藤史恵さん、さすが!なのです。
特に『サクリファイス』と『エデン』の2作は続きものなのですが、サスペンスであり青春小説であり人間ドラマたっぷり。ぐいぐい引き込んで読ませます!
ちょうど今、ツール・ド・フランスが開催中ですので、ちょっと観てみて本を読んだり、本を読んでからレースを観たりしたら、よりおもしろいと思います。
まずは『サクリファイス』からがおすすめかな。
アルフレッド・ジャリ『超男性』澁澤龍彦訳(白水Uブックス)
Uブックスからもう1冊、自転車と言えば思い出すのが、この小説の第5章「一万マイル競走」です。
時は1920年(小説が書かれたのは1902年なので、未来のこと)。「永久運動食」の製造に成功した実業家が、デモンストレーションのため、5人の自転車乗りに「永久運動食」を食べさせて、急行列車と1万マイル競走させる(!)という企画を立てます。永久運動食の効能はすさまじく、5人乗りの自転車は列車を置き去りに、すばらしいスピードでゴールを目指します。しかし――その5人の前を、さらに速いスピードで走っていく一台の自転車がいる! その正体こそ、タイトルにもなっている主人公の「超男性」アンドレ・マルクイユなのでした。
この章以外も本当にバカバカしくて、こんな小説を面白がっていたら趣味と品性を疑われること確実なので、おすすめするつもりはまったくありません……(面白いです)。
これも気になりますー!
夏目漱石「自転車日記」(『漱石紀行文集』岩波文庫)。
さて、『超男性』刊行と同じ1902年、ロンドン留学中の夏目金之助は、下宿の女将から気分転換のために「自転車にお乗んなさい」と「命令的に」申し渡されます。
「嗚呼悲いかなこの自転車事件たるや、余は遂に婆さんの命に従って自転車に乗るべく否自転車より落るべく「ラベンダー、ヒル」へと参らざるべからざる不運に際会せり」。
同宿の日本人が自転車を教えてくれることなるのですが、「悄然たる余を従えて自転車屋へと飛び込みたる彼はまず女乗りの手頃なるやつを撰んで是がよかろうと云う、その理由如何と尋ねるに初学入門の捷径は是に限るよと降参人と見て取っていやに軽蔑した文句を並べる、不肖なりと雖も軽少ながら鼻下に髯を蓄えたる男子に女の自転車で稽古をしろとは情ない、まあ落ちても善いから当り前の奴で遣って見様と抗議を申し込む」。
こんな名調子の戯文でつづられる異国での自転車体験ですが、清水一嘉『自転車に乗る漱石 百年前のロンドン』(朝日選書)によれば、19世紀末のイギリスで一大ブームになった自転車が普及・定着するのがちょうどこのころ。20世紀初めのヨーロッパでは最先端の乗り物だったのです。
『ロッタちゃんとじてんしゃ』
リンドグレーン作/ヴィークランド絵/山室静訳
5歳の誕生日に欲しかった自転車をもらえなかったロッタちゃん。おばさんの納屋にある自転車を盗む、というおそろしい計画を立てて実行します。
とにかくおてんばというか、ロッタの行動力がすごすぎる!読んでいて、口があんぐり開いてしまうほど。
この本のもうひとつのたのしみは、50年近く前に訳された山室静さんの訳文。
「あたい、どこでかっぱらったらいいか、ちゃんとしってるんだ」といった5歳のロッタのセリフといい、「セコハンもの」といった言葉遣いといい、ロッタの物語の軽妙さをアップしているように思います。
「いえにかえってきたとき、げんかんのすみにあった三りんしゃがめにつきました。ロッタはつかつかとよっていって、三りんしゃをけとばして、いいました。
『おまえなんかにゃ、もうぜったいのってやらないから。のるなんておもってるのは、パパだけね。』」
壺井栄『二十四の瞳』
昭和三年、岬の分教場に新米の女先生が赴任してきます。
新しい先生はどんなだろう、どんないたずらをしかけてやろう、
と待ちかまえる子どもたち。
「道みちささやきながら歩いてゆく彼らは、いきなりどぎもを
ぬかれたのである。場所もわるかった。見通しのきかぬ曲がり
角の近くで、この道にめずらしい自転車が見えたのだ。自転車
はすうっと鳥のように近づいてきたと思うと、洋服をきた女が、
みんなのほうへにこっと笑いかけて、
「おはよう!」
と、風のように行きすぎた。」
木下恵介監督作の映画でも、先生役の高峰秀子がすいーっと
自転車をこぎながら、明るく「おはよう!」と声をかける姿が
印象的です。
『二十四の瞳』ことは、僕も考えていました。自転車は「新しい女」の象徴ですよね。
それで思い出すのが、映画『ミス・ブロディの青春』(1969)。舞台は1932年のエディンバラ、女子校の個性的な教師ミス・ブロディ(マギー・スミス)が、自転車で颯爽と通勤する場面から始まります。
面白いことに、ミュリエル・スパークの原作小説ではミス・ブロディは一度も自転車に乗っていません。つまり、これは映画独自の演出。ロナルド・ニーム監督は、どこかで木下恵介の映画を観て、高峰秀子の大石先生に影響されたのではないか……と疑っています。
『ミス・ブロディの青春』といえば、さべあのまのマンガなのですが、
こちらは映画とも原作小説とも関係がありません。自転車も出てきま
せん。働く女性のお話ではありますが。
マンガで自転車といえばまず思い出すのは、明智抄の『純愛可憐始末人』
(花とゆめコミックス、1986年)。
始末人シリーズの第一巻『明朗健全始末人』に収められています。
「自転車のハンドルだけはとられちゃいけない」と父親に遺言された男が、
自転車のハンドルを盗まれて……という話。
このシリーズ、なんといっても始末人なので、血なまぐさい話ばかりです。
これが少女マンガとして掲載されていた『花とゆめ』、すごい攻めっぷりだ
と思います。
「その頃の東京はまだ都会だった」。1930年代の東京を舞台にした傑作小説。語り手が本郷信楽町に引っ越してきて、最初にできた友達が「自転車屋の勘さん」という青年でした。
「この自転車屋という商売も今日では説明が必要かも知れない。少なくとも東京では自転車屋というものを余り見なくなっていてもしあってもそれが自動自転車とか自動三輪車とかの商売の片手間に自転車を扱っているに過ぎなくてよく見なければ自転車がどこかに置いてあるとも思えない。併しこれは曾ては東京で電車に次ぐ重要な交通機関だった」。
やがておでん屋で独酌する勘さんとばったり出会い、そのあと二人ではしご酒して過ごす一晩が、この幸福な小説の最初のクライマックス(?)といえるでしょう。明け方近く、打ち解けてだいぶぞんざいに口をききあうようになったころ、
「『いつか東海道を自転車で京都まで行ったことがあるんだ、』と勘さんが言った。『あれは面白かったけれどトラックには敵わないね、埃がひどくて。』
『まだ自転車で行ける道が日本に残っているだろう、』とこっちはその同じ東海道を歩いて旅行した時のことを思いながら言った。それでまだ鉄道の鉄橋しか掛っていない大井川を渡しで渡って対岸の丘が午後の日光で温かそうなのを見てその辺に家を建てて住むことを考えた」。
タイトルを書き忘れました、吉田健一『東京の昔』(中公文庫)です。
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